大部屋にいると、自分も含めて、意外と患者さんの入り代わりは激しい。

 

同部屋の人とは一切喋ったことがないし、何なら顔すら見たことが無い人もたくさんいる。

 

だが、話や言動は筒抜けで、見た目以外の情報は概ね兼ね備えている。

 

話を聞く限り、皆さん本当に良い人で、白血病にかかる人は良き人ばかりだと思った記憶がある。

 

そんな中でも、少々ユニークな人材も多いから面白い。

 

忘れられないのが、その名もイヤホンおじいさんである。

 

途中から同じ部屋に入ってきて、比較的高齢なおじいちゃんである。

 

どうやら、足を怪我しているようで、一人では動けず、看護師さんの介助が必要になっている。

 

大部屋はイヤホンが必須なので、しっかりイヤホンをつけてパソコンを閲覧していた。

 

高齢なのにYouTubeでも見ているのだろうか。

 

しかし、どうしても途中でイヤホンが外れて大きな音を部屋中に流してしまう。

 

その度に看護師さんに「ん?音漏れてしますよ~」と言われてしまう。

 

看護師さんがいない時は誰も注意することなく、しばらく爆音が響く。

 

ある時はテレビ朝日のナスDの番組が流れ、結構楽しいの見ているねーと思った記憶がある。

 

このおじいさん、自分で動けないため、おしっこも歯磨きも全てベッドの上で行う。

 

それが隣の私にとっては結構きつい・・・

 

特に食事中ともなるとなかなか刺激が強い。

 

まーこれも試練だと思い、素敵なBGMと共に食事を楽しむのである。

 

その後、おじいさんは寝るのだが、寝ている間もやっぱりイヤホンが外れてしまう。

 

ある日の真夜中二時、突然、大音量で長渕剛の歌が流れ始めた。

 

熟睡していた私は一瞬で目が覚めた。

 

幸い、私は長渕剛の大ファンである。グーの拳を突き上げ、口パクで一緒に歌い始めたことは言うまでもない。