心配していた白血球の数値もこの日を境にぐんぐん下がり始め、プレドニンが効き始めてきたようだ。

 

ひとまずホッと胸を撫で下ろした。

 

不思議なもので、あれだけどの痛み止めも効かなかった頭痛神経痛も、いつも間にか痛みがなくなっていた。

 

ステロイドの効果である。

 

やはりドーピングってのは違反なんだなと感じる。

 

そんなこんなで、体の症状も落ち着き、私の精神状態も平静を取り戻してきた。

 

入院してからの日々、重大な出来事が起きていたことは認識していたが、とにかく体の辛さでまともに取り合うことができなかった。

 

体調も良くなってきたので、改めて今の現状について自分の頭を整理しようと思った。

 

元気になると、心と体が活発になる。

 

今までパソコンを触る気力も無かったが、改めて自分の病気について調べてみることにした。

 

良くも悪くもインターネットの世界には有象無象の情報が流布している。

 

大病なのだから当たり前なのだが、決してポジティブな情報などない。

 

病気の完治率、再発率、死亡リスク。

 

そんな情報を眺めていると、自分は生きて帰れるのだろうか、家族の元に戻れるのだろうかと、猛烈な不安に襲われ、初めて涙が出てきた。

 

悲しいのか。

 

寂しいのか。

 

悔しいのか。

 

いや、これが死への恐怖なのだろうか。

 

それと同時に、子供たちのことが一瞬にして頭の中を駆け巡った。

 

妻のほうから子供たちには、正確な病名は伝えていないものの、血にバイ菌が入ったこと、ある程度入院が長くなることは伝えていた。

 

妻のお陰で、子供たちは大きな不安を抱えることなく過ごしているようには見えた。

 

しかし、長女はなんとなく分かっているけど、口には出さず、いつも通りの感じで毎日を頑張っている。

 

長男は、幼稚園に入ったばかりで、やっと楽しく登園できるようになったから、そっちで頭がいっぱいだよね。

 

ママのこと大好きだからね。

 

一番心配なのは次女だった。

 

真ん中だからいつも何かとストレスを感じやすく、いつもママを困らせてしまう。

 

でも三人の中では一番パパっ子で、私がいつも疲れて帰ってくると、パパ一緒に寝ようと横で寝てくれるとても優しい子。

 

ある時、妻とテレビ電話をしている時、次女がいつものように不機嫌で周囲に当たり散らしていた。

 

私の一時退院の話が出た時、その話だけには食いついて「いつ帰ってくるの?いつ?」と怒りながら何度も聞いてきた。

 

気になっているんだよな。

 

心配してくれているんだよな。

 

帰ったら一緒に寝ような、みんなで一緒に遊ぼうな。

 

その途端、溜まった涙が、圧力に耐え兼ね、猛烈な勢いで乾燥した頬を流れ始めた。

 

何度も何度も流れた。

 

惜しげもなく大声を出して泣いた。

 

そして、止まらなかった。

 

いつ振りだろう、こんな泣いたのは。

 

自分でもビックリだった。

 

まだこんなに涙って出るんだな。

 

この10日間を一度クリアにするのには十分な涙だったかもしれない。

 

泣くことだって決して悪いことじゃない。

 

98%のポジティブと、2%の涙があればそれでいい。

 

この日は入院以来、一番良く眠れた。