四月十七日、第一フェーズの治療がスタートした。
メインの薬はプレドニンと呼ばれるステロイド剤の飲み薬だ。
このほか、抗菌薬やら何やらで、朝から三十錠近くの薬を飲まされる。
これには驚きを隠せないかのように見えたが、ピュアな私は、何の違和感もなくせっせと薬を口にほおばった。
これが後々私を苦しめることになるとはつゆ知らず・・・。
この時、血液の白血球(白血病細胞が増殖するため)の数値は上がっており、あまり良くない状態であった。
まずは、プレドニンでどこまで下がるかがキーだった。
この頃は毎日採血され、毎日血糖値を図り、一日中針をブスブス刺されていた。
あれだけの薬とこれだけの注射と、俺は薬中か。って言いたい。
もうどうにでもして、って感じにさえなってくる。
毎日採血結果が報告されるのだが、予想通り、翌日には白血球の数値が前日の倍にまで爆上がりしていた。
これには少々焦った。
今まで言葉でしか白血病を理解していなかったが、この血液検査の数値がリアルな白血病の恐怖を示してくる。
まだプレドニンが始まったばかりなので、しばらく様子を見て、数値によっては次の薬への移行も早めるとのことだった。
四月十九日。
一日経って、血液の数値は何とか横ばいだった。
ひとまずこのままの治療で様子を見ていくことになった。
この時プレドニンの錠数は二十二錠となり、合計三十五錠の薬を毎朝飲むことになった。
三十五錠・・・今までの人生の中で薬を飲むのは、せいぜい二錠がマックスだった。
私の中では、人間が摂取して良い薬の量をはるかに上回っていた。
もはや人造人間になろうとしている。
また、このプレドニンという薬はステロイドのため、血糖値が上がりやすい薬でもある。
血糖値が上がり過ぎると今度はインスリン注射をブスッと刺される。
まさに針のむしろである。
そんなこんなで、驚きの連続の中、何とか治療のスタートを切った。
病院内ではWi-Fiが使えるので、持ち込みのパソコンでYoutubeやらAmazon Primeやらを楽しめる。
この日は、以前行われた野球の世界大会WBCを鑑賞した。
大谷選手を中心に優勝を勝ち取った、漫画の世界を現実に持ってきたような素晴らしい大会であった。
既に何回も見ていたが、何度見ても興奮し、感動し、病床にいる私を大いに勇気づけてくれた。心が少し安らいだ束の間の時間だった。