入院してから怒涛の数日が過ぎ、おおよその病名も分かり、コロナの治療も進めていた。
しかし、熱と痛みの症状は一向に良くならなかった。
熱は38℃を超え、あらゆる部位の痛みが続いていた。
食事はほぼ取れず、便秘も始まり、寝ても激痛で目が覚める。
正直、ここまで痛みが続くと人間はおかしくなってくる。
現に幻覚的なものさえも見えてくる。
眠気で目を閉じると、その瞬間に謎の音が耳元で囁き、幻だか夢が分からない意味不明な映像で起こされる。
個室だから良かったものの、毎日私の叫び声が病室に響いていたのではないかと思う。
その度に、負けず嫌いな私は、「クソ野郎、絶対に許さんからな!勝手に人の脳内ストーリーに入ってくんな!」と謎の威嚇をしていた。
一つ、どうしても解せないことは、ここは立派な大病院。
飲み薬や点滴などであらゆる痛み止めを処方してくれた。
しかし、得意の頭痛神経痛だけは全くと言っていいほど効かなかった。
ロキソニンを希望したが、どうやら肝臓に悪いのでダメだそうだ。
こうなると、ひたすらに耐えるしかないのである。
普通に耐えられない私は、痛みがくる度に「クソ野郎、絶対に許さんからな!勝手に人の神経かき乱して、気が向いたら去っていきやがって!」と謎の威嚇を繰り返すのである。
それでも、人間の治癒力とは凄い。
時間とともに少しずつ痛みも和らぎ、食事も少しずつ取れるようになると、便も出始めた。
唯一、完食したのは、結局最後までこの日しか出なかったカレーである。
顎の激痛に耐えて全て完食した。
完全に好き嫌いやん。
と思わないでほしい。
こういっては大変失礼だが、病院食は栄養価満点だが本当にマズイ(おいしくないが正しい)。
体調が良ければ完食できるが、体調が悪い時は本当に食事に手が付けられないのである。
そんな中で食べたあの一回のカレーは、かつて食べた農業体験時のスイカと同じくらいの思い出深い食事だった。