退院当日、
看護師が髪を洗ってくれた。
1週間ぶり。
こんなに髪を洗わなかったのは生まれて初めてかも。
生き返った。
友人Kが迎えにきてくれた。
病院から出るとちょうどその時
天皇陛下ご夫妻が岡山へこられていた。
しかも会場は病院のすぐちかくのジップアリーナで
道路はガラガラ
沿道は多くの人で埋め尽くされていた。
そこへスーツケースを持った男二人が
出て行ったので、
すぐに警官に質問された。
「さっき退院したところです」と言ったら
OKだった。
天皇陛下をこの目で拝見する機会は滅多にないので
見ようと友人Kに言うと同意してくれたが
30分以上かかりそうだったので
帰った。
車中でKに、「入院して健康のありがたみがわかった」
というとKは、
自分は、それがそうでもなかったのだと言う。
なんと彼は、去年肺ガンの手術をしたのだと平然と言った。
それで、その時天国にいるようだったのだと。
彼は地元の大会社の部長。
その仕事から解放された喜びの方が大きかったのだという。
「入院生活を楽しんだ」と。
仕事をしていればほとんどの人がそう思うかもしれない。
しかし、
つまりは日常がそれだけ苦しいということの裏返しだ。
そんな彼が私に
「なぜあんないい仕事を辞めたのか」と聞かれた。
私は正直に答えることができなかった。
つづく→