ツバキの蕾が目立ってきた頃、次に読む本を探して本棚をゴソゴソ。
そのとき、やけに主張してきたのが「ツバキ」の文字。
ああ、今はあなたの季節ですね、と素直に手に取ったのが『ツバキ文具店』だった。
(お馬さんが入ってる栞♡)
主人公は、代書屋を営んでいる。
“書く”ことを仕事にしている人の物語。
ページをめくるうちに、どこか懐かしい感覚がよみがえってきた。
昔の自分を重ねながら読んでいると、私もまた、“手紙”というかたちで誰かに言葉を届けたくなっていた。
ここ数年、さまざまなことが重なり、すっかり筆不精になっていた。
時節のご挨拶も、ふとしたときに描いていた絵手紙も、いつの間にか遠ざかっていた。
それでも本を読み進めるうちに、胸の奥で、何かが静かに動き出すのを感じた。
作中に登場する“手紙”が、実際の文字として、そこにあるからだ。
依頼主の人柄や背景に合わせて、使う筆記具も、便箋も、言葉も変わっていく。
同じ「手紙」なのに、まるでひとつひとつが、違う呼吸をしているようだった。
その感じが、かつて自分が書いていた手紙と重なった。
うまく言えないけれど、ただ書くのではなく、誰かを思いながら書いていたあの感覚。
封を開けたとき、少しだけ、空気がやわらぐような。
そんな手紙を書けたらいいなと、この本を読みながら、思っていた。
今はすでに読み終え、続編の『キワキワ共和国』も、あと少しで読み終わる。
さらにシリーズ第三作『椿ノ恋文』もあり、ページを開くのを、少しだけためらっている。
読み終えてしまうのが、少し惜しいから。






