『京都の旅ー2』-松本清張・樋口清之
●南禅寺


✪石川五右衛門と言えば、誰でも知っている大どろぼう。どろぼうの代名詞である。この男が、南禅寺楼門(山門、三門)の上から京の街を眺めて、「絶景かな、絶景かな。」と、毎日澄まして暮らしていたというのが、歌舞伎狂言「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」の話である。

しかし、五右衛門の時代には残念ながら、この門はできていなかった。寛永5年(1628年)三重県''  津  '' の藩主、藤堂高虎によって作られたものだから。五右衛門のほうは、その34年前の文禄3年(1594年)に、鴨川の三条河原で釜で煎り殺されている。このころ南禅寺は、まだ応仁の乱(1467年)で焼けたままであった。

「石川や浜の真砂(まさご)は尽るとも世に盗人の種子は尽くまじ」

などと、妙な歌を作るような男もいなかったかもしれない。

 

 

 

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