『逆日本史・4』-樋口清之

●仏教を最初に採り入れた神々の土地・出雲

 

✪『出雲国風土記』には、「新造院」の文字が10ヶ所も出ているが、いずれも私寺(氏寺)のことである。

出雲は「国つ神」の発祥の地で、『風土記』に出ているだけでも399社を数えるという神さまの本家である。もし、異教を拒否する思想があれば、先頭を切って宗教戦争を開始してもおかしくない土地柄でありながら、逆に、いち早く「唐の神」を受容し、私寺を建てて祀(まつ)ったのが、この地方の豪族であった。

 

もともと出雲は早い時期から、日本海を渡る独自のルートで、大陸の文化を摂取したようだ。だから、早い時期に、そのルートで仏教が入っていたのだろう。

だが、出雲土着の豪族たちは、小さなトラブルさえ惹(ま)き起こさずに、固有の神さまと異国の神さまを、すんなり受容してしまった。

 

彼らにとっては、八百万(やおよろず)の神さまの数が、もうひとつ増えた程度のものであったのだろう。

まことに豊かで、鷹揚な心である。

 

西欧におけるキリスト教の流布(るふ)は、為政者の政策も手伝って、また熾烈(しれつ)な、旧来の宗教との戦いであったことを考えると、宗教に対する日本人の寛容性は特筆すべきものがある。

この特性は後世、「神仏習合」となって一層顕著になるが、その素地をここに見出だすことができる。