『ことばのご機嫌』ー秋庭 道博
●貧乏は恥ではない。しかし、名誉だと思うな (ユダヤのことわざ)

✪貧乏であることは、決して恥ずかしいことではない。だから、金銭的に貧しいことで、肩身をせまくして暮らすことはない。有名レストランで食事をしたり、ブランド物ばかりを身に付ける必要など、どこにもない。

しかし、「自分が貧乏なのは不正を働かないからだ」などと、変な威張りかたをするのもどうかと思う。貧しいということは、必ずしも他人をごまかさなかったからではない。

この世の富める者すべて悪で、貧しき者はすべて善だというような単純な図式は、もはや通用しない。

冒頭のことばは、「お金や富によって卑屈になったり、おごったりすることはないが、やはり、あればあった方がいいのがお金や富である」という微妙な関係が述べられている。

それにしても、お金や富への距離をニュートラルに保ち続けるのは、まことに難しい。凡人は、お金がなければ卑屈になる。まことに難しい。"貧乏人の正義" を振りかざして、この世をすねたくなったりする。