『ピーターの法則』-L.J.ピーター
●普遍的現象
職業的な無能はいたるところに存在する。おそらく、ぜんぜんそれに気づいていない人間はいないだろう。
ほんとうは優柔不断なのに、いかにも断固たる人物であるかのように装う政治家。

誤った情報を伝えておきながら、それを「計量不能な状況的要素」のせいにする「消息筋」。
怠惰で横柄な公務員。口先では豪傑ぶりながら、小心な戦場の指揮官。
根が奴隷根性のために、統治という職責を全うできない総督。
多少とも人ずれがしてくると、不品行な聖職者だとか、堕落した裁判官だとか、言うことに筋が通らない弁護士だとか、「書かざる作家」だとか、誤字だらけの文章を書く国語の教師だとか・・・・そうした欠陥は世の中にありふれたことで、いちいち気にしていたのではこちらの身が持たないことがわかってくる。

大学では、りっぱな告示をする学長や学部長が、学問や学部内のことをぜんぜん掌握していない。教室では意味も不明瞭なら声も聞き取れない講義に学生たちは居眠りしている。

政治、法律、教育、産業など・・・・あらゆるヒエラルキー(階層社会)のあらゆる階層に偏在する無能を観察するうちに、私はひとつの仮説に思い及んだ。ひとくちにいうなら、そうした無能の原因は、階層社会の構成員の配置を支配する法則と不可分の特質なのではあるまいか、という考えである。階層社会の中では、人びとがどのようにして昇進し、そして昇進の後にどんなことが起こるか、真剣に研究するようになったのは、こうした次第からであった。

 
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