『世界の名言名文句事典』-プライス・バスカル  フランス・数学者・物理学者・哲学者

人間は一本の葦にすぎない。自然のうちで最も弱いものである。だがそれは考える葦である。--パスカル『パンセ』

”人間は考える葦である”として有名な、パスカルの言葉。葦とは湿地にはえるか弱い稲科の草である。その弱さについて彼はこういうのである。

「一本の足、・・・・・・・・一つの蒸気、一つの水滴も、これを殺すのに十分である」と。

しかし、”人間は考えることによって、自分の死ぬことや自分の無力であることを知っている。それゆえ宇宙の人間を殺すもの、より強いものよりも崇高である”とかれは続けているのである。たしかに人間の力は自然界の力に比べれば非力である。人間のよりどころは考えることにしかないのである。そしてイギリスの政治家ウイリアム・テンプルは「好むと好まざるとによらず、人間はものを思う存在である、『著作集』」という。

 

 

人は社会的動物である---セネカ『愚非』

  ルキウス・セネカ(紀元前4~紀元65)

 

人間は一人では生きられない。社会を形成し、社会の中でしか生きられないのである。たとえば人は他人の上に自分の姿を投影してはじめて自分を知るといわれる。

「われわれ各個人は、他人のうちに自己を写す鏡を持っている。---ショウペンハウエル『幸福のためのアフオリスメン』」。

 

また自分の幸福についてさえも、他人の評判によって認識するともいわれる。「われわれはわれわれの幸福を、われわれの外部に、他人の評判のうちに求める。他人はみなへつらい、軽率かつ不公平で、ねたみや気まぐれや偏見に満ちていることを百も承知なのに、---ラ・ブリュイエール『ひとさまざまに』」。

 

アリストテレスはポリス的という言葉でこれを説明している。「人間の本性においてポリス的動物なり『政治学』」。

ポリス的とは政治的、社会的というものであって、家庭的、あるいは配偶的と対比されるもの。その違いを、彼は次のように述べている。「家が国家に優先し、かつ必要であるとするならば、それだけ人間は、ポリス的動物であるよりも配偶的動物なり。『ニコマコス倫理学』」。