『論語の活学』-⑨ 安岡正篤
●勇気はあれど、手立てなし


✪子曰く、道行(おこな)われず、桴(いかだ)に乗って、海に浮かばん。我に従わん者は、其れ由(ゆう)か。子路之を聞いて喜ぶ。子曰く、由や、勇を好むこと我に過ぎたり。材を取る所無し。

 

[孔子が言われた。「道が行われない。いっそのこと、いかだ---舟にでも乗って海外に出たい。そういう時にわたしについて来る者はまず由であろうな」。子路はこれを聞いて喜んだ。]

 

先生はそこまで私を信じてくれておるか、というわけで子路はよほど嬉しかったとみえる。ところが孔子も人が悪い。[「由はそういう勇ましいことを好むことはわたしより上である。が、それではそのいかだをどうして仕立てるかとなると、子路にはそのてだてが無い」]

 

実に面白い。おりますね、こういう人間が・・・・・・。勇ましいことはいくらでも言うが、それではどうするかというと、全く頼りにならない。「このままでは日本は駄目だ、何とかして大いなる革新をやらなければいかん」と言うから「それではその革新をどうやるのか」と訊くと、「うーん」とつまってしまって、「後は誰かやるんだろう」と言う。これでは駄目であります。建設のない破壊はいけません。今日の日本にもこういう子路のような人間が実に多い。もっとも子路ほどの大物はめったにおりません。小型の子路が多いのであります。

 

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