『おもしろ雑学日本史』ー樋口 清之
●紫式部は極貧の中で「源氏物語」を書いた


紫式部の父は越前守・藤原為時、母は摂津守・藤原為信の娘である。ともに受領(ずりょう)という地方長官だが、中央では最下位級の位だ。だから、紫式部は藤原為時の娘ということになるが、実名は残っていない。

彼女は身分的にはほぼ同じだった藤原宣孝の妻となり、賢子という娘をもうけたが、宣孝は早々と死んでしまった。
そのため、女手ひとつで娘を育てなくてはならなかった。
そうした寂しく、不安で、貧しい生活の中から、あの『源氏物語』は生まれた。

恐らく、子供が寝ついた深夜、暗い明かりのもとで、燃える油のすすにまみれながら、執筆を続けたのであろう。小さな体にムチ打って、華麗な空想世界を文字ですくっていったのである。

後には、生活の厳しさから上東門院に出仕するが、未亡人の求職運動がうまくいったのである。

これで少しは楽になったかもしれない。