『人間というもの』ー司馬遼太郎
●才能と仕事ー③


「仕事というものは、全部やってはいけない。八分まででいい。八分までが困難の道である。あとの二分はたれでも出来る。その二分は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ大事業というものはできない」

 


小人という西郷の用語は己を愛する者という意味である。

「・・・・・・であるから相手がたとえ小人でもその長所をとってこれを小職に用いればよく、その才芸を尽くさしめればよい。水戸の藤田東湖先生もそのようなことをいわれた。小人ほど才芸のあるもので、むしろこれを用いねばならぬものである。さりとてこれを長官に据えたり、これに重職をさずけたりするとかならず国家を覆(くつがえ)すことになる、決して上に取り立ててはならぬものである」

 

人間は、人なみでない部分をもつということは、素晴らしいことなのである。そのことがものを考えるバネになる。