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『司馬遼太郎が語る日本』ー司馬遼太郎
●近代を買い続けた日本ー⑥


✪イギリスの詩と漢詩との対比が中心だったと思いますが、日本のさまざまな文学遺産、あるいは江戸期の人文科学などは一切入っていません。イギリスの詩はこうだけど、漢詩がこうだというだけであります。

これは漱石が悪いのではありませんよ。明治の知識人には漢学の素養があるうえにヨーロッパが乗っかった。ここまではいいのですが、江戸期の二百七十年の知的財産というものとは無関係になってしまいました。

戦後に江戸時代の研究をする学者が増えて、そして刊行物も出ました。ですから私はこのようにしゃべっているのですが、私がもし明治四十年の人間だとしたら、おそらくこういうことには気づきもしなかったろうと思います。これは戦後のおかげであります。
真珠湾攻撃がありました。太平洋戦争が始まります。敵が居眠りをしている間にアッパーカットを食らわせたのですから、華やかに計画どおり、つまり相撲でいうと注文相撲のように勝ちました。

さらには、イギリスの自慢のプリンス・オブ・ウェールズという戦艦が、日本の海軍の飛行隊によってマレー沖で撃沈されました。
明治以後あれほど西欧にあこがれながらも、西欧にかなわない、西欧にはどうしても追いつけない、しかし追いつかなければいけないという緊張感が日本の知識人にはありました。
ここに明治政府が残した、開国したとはいえ残っていた、朱子学的尊王攘夷が見え隠れしますね。



#西欧 #漢詩 #明治