『司馬遼太郎が語る日本』ー司馬遼太郎
●近代を買い続けた日本ー④


三浦梅園はいまの大分県の国東半島の田舎医者です。

ひとつの自然科学、あるいは宇宙論を打ち立てた人でして、湯川秀樹さんがノーベル賞をもらわれた後ぐらいですが、しきりにおっしゃっていました。

「三浦梅園は素晴らしいですね」

なぜか、と湯川さんは説明されていました。

「梅園の学問は完全な独創であり、独創であるから、その学問は少しずつざらざらしている。ざらざらしているのが素晴らしい。次に続く連中はつるつるしているけれども、梅園は素晴らしいですね」

 

まだまだいろいろな人がいます。

本居宣長もそうです。そしていろいろな人を生んだ江戸時代と今の日本は、実はしっかりと結びついているのではないか。

昭和元年から20年の話をずっとしていますが、話していると、だんだん覇気がなくなってきますね。私もその時代の末端に属していながら、いまだに思うことはひとつです。

あれは日本だったんだろうか。

 

むしろ、本当の日本は江戸時代の文明にあったのではないか。

江戸中期以後のリアリズムを中心とする、技術とものを見続けて思想をつくりあげた代表者たちとわれわれは結びつく。先に話しましたように、職人が好きで、技術が好きな民族なんだと。

それが昭和元年から20年までは、落ち込んだように違う雰囲気の国になっている。これはなんだろうというようなことで、前回は答えも出さずにぼんやりしてしまい、いまでもぼんやりしています。