『悪と不純の楽しさ』ー曽野綾子
●死ぬほど嬉しかったことー②
✪私たちの組織は、いささか例外ではあったが、この未亡人の家の屋根を20万円で葺き替えてあげた。一個の段ボールの存在が与える重みは、国や社会や階層によってこれほどに違う。私たちの心の中にも、箱は大切なものだという認識はあるが、狭い家に住んでいれば、
「この箱どうする?捨てなきゃ置き場ないわよ」などと、邪魔者あつかいをする。日本人は一個の段ボールの中に、輝くような幸福を見いだせないのである。
マダガスカルでは、私たちの救援組織は、お金の使用目的に納得がいけば他のことにも送金することがある。
その中の一つに、刑務所の囚人にクリスマスのごちそうを差し入れるというのもあった。もともと食糧も十分でない国のことだから、刑務所の食事は、本当にやっと餓えをしのぐだけのものだという。もちろんマダガスカルでも刑務所の差し入れの規則は厳しいのだが、修道院のシスターたちは信用があって、クリスマスにだけは特別に人道的な配慮の下に、ごちそうの差し入れも許されているらしかった。
特別のごちそうと言っても、それこそご飯と肉と野菜とバナナぐらいなのだが、それでも囚人たちにとっては夢に見るほどの贅沢だという。
差し入れの弁当の結果がシスターから送られて来て、私たちはまた腰を抜かしそうになった。
「今年も喜びのあまり、一人死にました」
こう書く他はなかったのだろう。それが嘘も隠しもない真実だったのだ。断食をしている人や、遭難して何日も食糧がなかった人が、食べるものがあって食べてもいい状態になった時、急にがつがつ食べて体を壊すことがあると聞いてはいたが、それと同じなのだろうか。
私は毎月、お金を出してくださった方たちに、その月にあった出来ごとを短いニュース・レターにして送っているのですが・・・。
こういう意味の一行も書き加えた。
「私たちは人が、死ぬほど嬉しかったことに手を貸せたということになります」
#刑務所 #私たち #ごちそう
●死ぬほど嬉しかったことー②
✪私たちの組織は、いささか例外ではあったが、この未亡人の家の屋根を20万円で葺き替えてあげた。一個の段ボールの存在が与える重みは、国や社会や階層によってこれほどに違う。私たちの心の中にも、箱は大切なものだという認識はあるが、狭い家に住んでいれば、
「この箱どうする?捨てなきゃ置き場ないわよ」などと、邪魔者あつかいをする。日本人は一個の段ボールの中に、輝くような幸福を見いだせないのである。
マダガスカルでは、私たちの救援組織は、お金の使用目的に納得がいけば他のことにも送金することがある。
その中の一つに、刑務所の囚人にクリスマスのごちそうを差し入れるというのもあった。もともと食糧も十分でない国のことだから、刑務所の食事は、本当にやっと餓えをしのぐだけのものだという。もちろんマダガスカルでも刑務所の差し入れの規則は厳しいのだが、修道院のシスターたちは信用があって、クリスマスにだけは特別に人道的な配慮の下に、ごちそうの差し入れも許されているらしかった。
特別のごちそうと言っても、それこそご飯と肉と野菜とバナナぐらいなのだが、それでも囚人たちにとっては夢に見るほどの贅沢だという。
差し入れの弁当の結果がシスターから送られて来て、私たちはまた腰を抜かしそうになった。
「今年も喜びのあまり、一人死にました」
こう書く他はなかったのだろう。それが嘘も隠しもない真実だったのだ。断食をしている人や、遭難して何日も食糧がなかった人が、食べるものがあって食べてもいい状態になった時、急にがつがつ食べて体を壊すことがあると聞いてはいたが、それと同じなのだろうか。
私は毎月、お金を出してくださった方たちに、その月にあった出来ごとを短いニュース・レターにして送っているのですが・・・。
こういう意味の一行も書き加えた。
「私たちは人が、死ぬほど嬉しかったことに手を貸せたということになります」
#刑務所 #私たち #ごちそう
