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『司馬遼太郎が語る日本』ー司馬遼太郎
●長州人は友情が深かったー①

桂小五郎はたいへん身分の高い侍で、伊藤俊輔はとびきり身分の低い家の出でした。長州藩士とは言えないような身分なのですが、京都でよその藩士とつきあうためには、藩士の身分が必要です。そこで桂は藩に届けを出します。伊藤は自分の「養い」であると申し出た。「養子」とまではいかないが、自分の係累として扱い、ともかく侍身分にしたのです。

そのとき桂小五郎が言っています。
「これで、私と君では上下がなくなる。同格の友人である」
桂が伊藤に出した手紙は、実に丁寧ですね。自分よりはるかに身分の低い伊藤に、しかも恩義をきかせた関係なのに、実に丁寧です。

あいつとおれは同志だ、非常に友情が深いのだということでしょう。幕末の長州の人間関係を見てみると、確かに友情があります。

なんだ友情かと思われるかもしれませんが、当時は友情という言葉はありません。概念もなかったでしょう。
なぜなら、友情というのは横と横の関係でしょう。日本はずっと縦割りで出来ている国ですね。
君臣の関係も縦割りです。親父に孝行しろというのも縦割りです。要するに友達に親切にしろというモラルは、明治以前にはなかったと思います。これは長州の「風」というしか言いようがないですね。ひとつの藩全体に「優しい習慣」があったとしか、言いようがない。



#身分 #友情 #藩士