”『人間というもの』-について!!”

 

 ”夏草の賦より” 

 

 「大将というものは、ほうびをあたえる者をいうのだ」

 

と、元親は明快に定義した。それ以外に大将の機能はない、とさえいえる。

よき大将は価値のよき判断者である。将士の働きを計量し、それがどれほどの恩賞にあたいするものかを判断し、それをあたえる。名将のばあい、そこに智恵と公平さが作用するから、配下の者は安心してはげむのである。配下が将に期待するのはそれしかない。

 

”坂の上の雲-五” 

 

「田中、軍人は階級があがるほどにモウロクしてくる理由を知っているか」

 

田中は意外な話題に、存じません、と答えると、児玉はマッチをすることまで部下が介添えするからよ、おれは陸軍大将になっても自分の身のまわりのことは自分でやる、といった。なるほどそういえば、児玉は日常の起居のなかで、まるで一兵卒のようにちまちまと自分のことをやっているようであった。

 

「そのかわり、貫禄は出来んがね」

くすっと笑った。起居動作のことを配下に介添えさせていれば自然に王侯のような貫禄ができる、と児玉はいった。しかしそんな貫禄はでくのぼうの貫禄で、すくなくとも参謀には不必要だ、というのである。