”明日への遺言”


 

 原作は大岡昇平の『ながい旅』である。B級戦犯の”岡田資(たすく)中将”がアメリカ兵の捕虜を処刑したことが裁かれた裁判である。当時、岡田は名古屋の司令官として、来る”本土決戦”に備えていた。当時B29による無差別爆撃で名古屋市民に莫大な犠牲者が出ていた。日本軍の反撃で撃墜されたB29のパイロットが落下傘で降りてきた。ただちに逮捕されたパイロットを陸軍の軍律に基づいて処刑した。このことが、戦後捕虜虐待の罪で裁かれることになった。


岡田中将以下19人が起訴され、アメリカ軍が裁いた。岡田中将の主張は、B29の搭乗員は国際法が禁じている無差別爆撃により無辜の一般市民を殺戮した、というものであった。だからこれは捕虜ではなく戦争犯罪人である、というものであった。しかし、アメリカ側は、捕虜はジュネーブ条約により守られていると主張した。裁判の中で岡田中将は、自分ひとりの責任で処刑を命じたのであるから部下には一切責任がない、と言い切りひとり死刑判決を受けた。部下は有期刑で助かったのである。裁判員も刑を減じるような好意的な質問をしても頑として「自分ひとりの責任である。」と言い切った。ひとり死刑判決を受けたときも一言「本望である。」と傍聴席の妻を振り返り言った。


俳優の”藤田まこと”が渾身の演技で”岡田中将”を演じているそうだ。何回も涙がとまらないシーンがあるという。私たちの街にもようやく映画-『明日への遺言』がやって来たので是非見に行きたいと思っている。それと”大岡昇平”の『ながい旅』の文庫本も注文したのでまもなく届くであろう。これらを見て読んで『明日への遺言』を受け止めたいと思うこの頃である。