1207.2011年3/19 サンドウィッチマンは仙台の東北放送でレギュラー番組をもっていた。番組のロケを、ある港町の魚市場の前でやっていた。おわるや、大きな、いままでに経験したことのない揺れの地震に見舞われた。津波がくる。ロケ隊しめて十人を統率する立場の人が、ただちに全員をロケバスに乗せた。高台へと、標高二百メートルほどの安波山[あんばやま]の五合目へとむかわせた。かれらは海と町並みを一望のもとに見渡せる地点から、大津波の襲来を茫然と、なすすべもなく見ることになった。

 仙台への道路は通行不能であった。車は北の一関を迂回して仙台へと入った。仙台はサンドウィッチマンの伊達および富澤の地元である。さいわい、ふたりの実家に被害はなかった。

 富澤の母は息子に、開口一番こういった。

「うどん、食べる?」

 オレのことじゃない、あんただろう、と富澤は思った。

 翌日、東京から事務所の人が車をとばしてふたりを迎えにきた。伊達の母のところに、コンビニで買ったおにぎりをもっていった。すると、母は泣いた。おにぎりに泣いたことに伊達は目頭が熱くなった。

 伊達と富澤はともに奥さんを連れて四人で、目黒で落ちあった。食事でもしようということである。折から、カラオケいかがですかと、店の若い男性店員に誘われた。このたいへんなときにカラオケか。伊達は温度差を感じないではいられなかった。

 結局みんなでカラオケ店に入った。