月夜を眺めて思い出すのは今日のこと。
ほんの一時の夢のような時間を過ごした今日のこと。
だけれど。
散々他人の命を無惨に散らしてきた自分にシアワセな時間などあっていいものかと責め立てる心も存在していた。
彼女には他人が持たない力があった。
炎を意のままに操る力。
ほんの小さな火種さえあればそれだけで辺りを燃やし尽くせる炎に変えることさえ可能だった。
逆もまた然り。
善行に使うことも出来た筈なのに彼女の父は己の欲の為に力を振るわせた。
始めはただ、認めて欲しかった。
父に自分の存在を認めて褒めてもらいたいと思った。
母に怖がられても何時か認めてもらいたい、そう思って父の言う事を聞いた。
それが間違いだと気付いた頃にはもう遅かった。
ごめんなさい。
一晩中謝罪し続けたこともあった。
自分を傷つけたこともあった。
どれだけ自分を責めても結局は未だ生きている。
惨めったらしいと思いながらも。
真っ白な封筒をペーパーナイフで開ける。
中には封筒より一回り小さい白い紙が入っていた。
「・・・っ」
書かれていた名は彼のものだった。
『第三機動軍軍師長 泰央』
思考が纏まらなくなった。
読み違えだと思いたくて何度も読み直した。
けれどそれは紛うことなく彼の名だった。