このあいだの金曜ロードショーでもののけ姫が放送されていたので、今回はもののけ姫の分析でもしてみたいと思います。

 

もののけ姫は他の宮崎アニメ同様一回観ただけではなかなかストーリーが分かりづらい映画ですね。私も最初に観たときは正直全くストーリーが把握できませんでした。ただ何回か観ると段々描かれていることがわかってきます。大まかには大自然の力と人間の欲の戦いの話なのですが、単純に大自然の力はやっぱり偉大だといった結末でもありません。結末でいったい何が起きたのわかりづらいので困惑してしまうというのがこの映画を見終わった後の最初の感想ですね。

 

物語の背景

 
さて、もののけ姫の物語の背景ですが、基本的に登場する人物は全て縄文人の末裔です。大和朝廷(弥生人)によって山に追いやられた人たちですね。アシタカもそうですしタタラの人達もそう、そしてジコ坊も縄文人の末裔です。もちろんサンもそうです。ただサンの場合、狼たちの怒りを鎮めるためにいけにえとして捧げられたという特殊な立場です。
 
 
この物語のややこしい点はタタラの長エボシやジコ坊が縄文人の末裔であるにも関わらずなぜ大和朝廷(弥生人)に協力してシシ神の首を狙うのか?という点で、ここがわかってくると物語の全容が見えてきます。
 
 

エボシはなぜシシ神の首に執着するのか?

 
まずタタラの長エボシがなぜ大和朝廷に協力するのかについてですが、これはタタラ場が浅田という大名に戦を仕掛けられていることを考えると理解できます。
 
エボシは一見すると非情な人物に見えますが実のところ女性や病人の面倒をみている人情に厚い人物だとわかります。つまりタタラ場の長としてタタラ場を守りたいというのが大和朝廷に協力する動機で、シシ神の首を大和朝廷に差し出すことで浅田がタタラを攻めるのをやめるように大和朝廷に下知を出させたいというのが理由でしょう。
 
エボシにはそのためになんとしても大和朝廷に恩を売らなくてはならないという切実な動機があるというわけですね。
 
 
次にジコ坊はどういう理由で大和朝廷に協力しているのか?ですが、ジコ坊はとても面白い人物なのでこれはちょっと最後にまわしたいと思います。
 
 

もののけ姫が描くテーマとは何か?

 
物語の背景がわかったところで、次はもののけ姫が描いているテーマとはいったい何なのか?ですが、これはタタラ場で看病されている病人の長の「生きることは苦しくつらい、だが生きたい」という言葉に集約されていると思います。つまり人生そのものが呪いであり、つらいものであるにも関わらず生きていたいと願うのが人の業であるというのがこの映画のテーマになっているというわけですね。
 
 
 
一見すると呪いがかかっているのはアシタカだけに見えますが、ここに登場する人たちは皆なにがしかの呪いにかかっていて苦しんでいるとみることができるわけです。病人しかり女性しかりで、皆生きることに難儀していてそれでも生きたいと願っているというわけですね。
 
そしてこのテーマはエンディング曲の歌詞にも表現されています。
 
はりつめた弓の
ふるえる弦よ
月の光に
ざわめく おまえの心

とぎすまされた
刃の美しい
そのきっさきに よく似た
そなたの横顔

悲しみと怒りに ひそむ
まことの心を知るは
森の精
もののけ達だけ
もののけ達だけ
 
この「はりつめた弓の」から「おまえの心」までは「生きることは苦しくつらい」に対応していて、「悲しみと怒りに ひそむ まことの心」は「だが生きたい」に対応しています。つまり「はりつめた弓」は緊張状態を表していて「月」は人の感情をつかさどる天体ですから、「生きることは苦しくつらい」という悲しみと怒りで心がざわめいているわけです。
 
しかしそれでも人は生きたいと願っているというのが人の「まことの心」というわけですね。
 

シシ神は人の悲しみと怒りを食べる

 
次にシシ神とは何者なのか?について考えてみましょう。
 
シシ神は一見すると大自然の力や大自然の生命力(シシ神は昼間は鹿の姿していますが鹿の角は生薬としては精力剤として珍重されている。ジコ坊たちが欲しがっているのもシシ神の角だとおもわれる)を象徴する存在に見えます。もちろんこれ自体は間違っていませんが、ただそれだけでは説明がつかない要素も持っています。例えば夜に巨人となって徘徊するとか、命を吸い取ると言われていたりだとか、目的がよくわからない行動をとります。
 
中でも最もよくわからないのはアシタカの鉄砲傷だけ治して右腕の呪いは治さないという行動ですね。実際、ラストシーンではアシタカの右腕の呪いが治ったという描写があるのでシシ神に治せないものなどなくアシタカの右腕も治せたはずなのですが、シシ神はなぜかここではあえて右腕の呪いは治さないという行動をとります。
 
 
こうしたシシ神の行動には何か隠された意図があるように見えますね。
 
 
ではシシ神とはいったい何者なのか?
 
この答えも「生きることは苦しくつらい、だが生きたい」というテーマをもとに考えていくとわかってきます。
 
シシ神は人の命を吸い取るわけですが、誰の命でも吸い取るわけではありません。どんな命でもいいのならアシタカの傷を治すという行動とは矛盾するわけで、明らかに吸い取る命を選り好みしています。
 
ではいったいどんな命を選んで吸い取るのでしょうか?
 
それは「生きることは苦しくつらい、だが生きたい」と願う人の命です。つまり生きることの悲しみと怒りで、はりつめている人の命を吸い取るわけですね。「生きることは苦しくつらい、だが生きたい」と願う人の命とは生きることに執着している人の命であり、生きていたいという生命力で燃え上がっている命です。そうした命をシシ神は寄り好んで吸い取るわけですね。
 
そう考えるとシシ神がアシタカの傷だけ治して右腕の呪いを解かなかったわけも見えてきます。もしアシタカが鉄砲傷で死んでいれば安らかに死ぬことができたわけですが、シシ神はそれを許さず傷だけ治して右腕の呪いに苦しむ人生をアシタカに残すわけです。しかもそれは先々シシ神が呪いに苦しみながらそれでも生きたいと生に執着するアシタカの命を吸い取るためにです。
 
 
シシ神はけっして人を救ってくれる存在などではなく、むしろなかなかえげつない存在でその行動はまるで吸血鬼のようでさえあります。シシ神が毎夜にデイダラボッチとなってそこらじゅうを徘徊してまわるのも、生きることの悲しみと怒りで苦しむ人達の命を少しずつ吸い取ってまわっているからなのかもしれません。
 
 

ジコ坊の真の目的とはなにか?

 
では最後にこの物語の中で最も興味深い人物であるジコ坊の人物像について迫ってみましょう。
 
ジコ坊は一見すると大和朝廷からの褒美欲しさにシシ神の首に執着する強欲な人物に見えますね。確かに見た印象のままの人物である可能性もありますが、ジコ坊がシシ神の首を狙うのには何か別の理由があるのでは?と仮定してみるといろいろ面白い可能性が浮かび上がってきます。
 
冒頭に書いたようにジコ坊もまた縄文人の末裔であり弥生人ではありませんから、そこまで大和朝廷に忠誠を誓う理由はないはずなのですが、なぜか帝のためにシシ神の首を手に入れるべく駆けずりまわります。
 
奇妙なのはその過程でジコ坊の部下(地走り)が何人か死ぬことです。部下が何人も犠牲になっているにも関わらず、その目的が褒美だとしたらいくらなんでもシシ神の首に執着する動機としては弱すぎるのではないか?と思えてきます。彼らには何か命を懸けるに値する別の大義があるのではないでしょうか?
 
 
ではジコ坊達の命を懸けるに値する大義とはなんなのでしょうか?
 
 
その答えは帝と大和朝廷に対する反逆です。
 
もしジコ坊達が大和朝廷を転覆させる計画のために動いているのだとしたら?
 
これなら十分に命を張るに値する動機になりうるのではないでしょうか。
 
 
ではいったいどうやってジコ坊達は大和朝廷を転覆させようとしているのか?ジコ坊達が帝と大和朝廷にシシ神の首を献上しようとしているのは間違いありません。それは帝をはじめ貴族達がシシ神の首に不老長寿の力があると信じているからなのですが、本当にシシ神の首に不老長寿の力などあるのでしょうか?
 
問題は帝をはじめ貴族たちがシシ神の首から作った薬を実際に飲んだ場合いったい彼らの身に何が起こるのか?ということです。
 
これまで書いてきたようにシシ神は人の命を吸い取ってまわっているわけですが、その命は「生きることは苦しくつらい、だが生きたい」と願う人達の命です。そしてその命は人の悲しみと怒りが凝縮した苦しみに満ちた命なわけですね。シシ神はそのような命を好んで食べているので平気ですが、もし帝と貴族達がそのような命を薬にして飲んだとしたらどうなるのでしょうか?
 
もしかすると本当に不老長寿を得られるかもしれませんが、はたして無事でいられるでしょうか?
 
たとえ不老長寿を得られたとしても帝や貴族達の身に何か良からぬことが起こったとしても不思議ではありません。例えば病気になってしまうとか呪われてしまうとか頭がおかしくなってしまうとか、何か悪いことが起こるのではないでしょうか?
 
このように考えていくとジコ坊の狙いも見えてきます。ジコ坊からすると、もし帝や貴族たちの身に何か悪いことが起きればそれをきっかけに大和朝廷を転覆させることができるわけです。帝にシシ神の首を届けても何も損はありません。もし上手くいけば大和朝廷を労せずして自壊させることができるわけですからね。
 
もちろんこれはただの私の推測なのですが、ジコ坊が最後に「馬鹿には勝てん」と言ったことを考えると意外と当たっているのではないでしょうか?
 
ジコ坊からすると虐げられている人々のために企てた大和朝廷転覆計画だったわけですし、その計画が虐げられている人々によって阻止されてしまったわけですから、そりゃあ「馬鹿には勝てん」とも言いたくなるというわけですね。

 

 

 

前回の記事でお絵描きAI(DALL-E)に人物画を描かせてみる過程で、DALL-EはSF画が得意だという点に気づいたので今回はSFを題材にいろいろ描かせてみる実験をしてみました。

 

まずSFを題材に油絵を描かせてみたのですが、結果がなかなか秀逸でした。

 

 

 

 

 

驚いたことにこれらはたった一回の出力で出てきたものです。

 

普通は一回の出力で使い物になるレベルの絵は一枚あるかないかといったところなのですが、一回で四枚すべて使えるレベルのイラストが出てきました。四枚ともなかなかカッコイイイラストで、早川書房のSF小説の表紙に使えそうなレベルですね。

 

 

次は具体的なプロンプトは秘密ですが女性と背景に宇宙船を絵描かせたイラスト。

 

 

この画像が出てきた時は驚いておもわずのけぞったのですが、残念ながらよく見ると右肩の部分が欠損していてイラストとしては使えないものでした。しかし同じようなプロンプトでこんなイラストが出てきました。

 

 

 

なかなかきまっていますね。

 

次もプロンプトは秘密ですが、女性をSF風に描くように指示したものです。

 

 

これは細部を見てもミスがない絵でそのまま使えるレベルだと思います。人物画はやはりバストアップショットであればかなり使えるものが出てきます。

 

もうひとつこれも見てください。

 

 

これはイラストではなく写真で出てきた画像ですがヤバイですね。ちょっと関心するレベルです。

 

 

次は未来都市を描くように指示したものです。

 

 

 

 

 

 

ちょっと癖強めなイラストですがDALL-Eはこういうイラストが得意で安定した仕事をしてくれます。

 

 

次は空飛ぶ車です。

 

 

 

 

 

なかなかやりますね。

 

 

最後はロボットの画像をいろいろ見てください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロボットの画像も人物と同じで基本的に全身像を描くことができません。手の指を描かせると途端に画像が破綻します。なのでロボットもバストアップショットのみ使える画像が出せるというのが現状です。

 

あと細部をよく見てみると結構適当というかグニャグニャ描いている箇所が散見されます。ロボットは工業製品ですから細部がグニャグニャしているのはまずいですね。ぱっと見、凄い画像ですがまだ実際には使えない画像ですね。

 

結局のところ結論としてはまだまだDALL-Eは細部を正確に描くことができないですから、プロのイラストとしては使えないレベルかと思います。プロのイラストとして使うのであれば細部を描く必要がないようにオイルペイントなどで描くように指示してあげることが有効です。

 

 

こういった作風だと挿絵としてなんとか使えるんじゃないかと思いますね。

 

というわけで、お絵描きAI(DALL-E)にSF画をいろいろ描かせてみた実験結果でした。

 

最近、bingでお絵描きAIのDALL-Eが無料で使えるようになったので、早速いろいろ描かせて実験しています。いろいろわかってきたので、今回はDALL-Eに人物画を描かせてみた結果をレポートしてみたいと思います。

 

まず最初に使ってみた感想として率直に思うのはDALL-Eはまだ絵が下手だということですね。

 

噂通りDALL-Eは人物のフルショット(全体像)が描けないというのが実際のところで、具体的には手の指が描けないというのは本当のようです。またフルショット(全体像)で描くように注文するとなぜか顔も正確に描けなくなる傾向にあります。ですのでDALL-Eに人物画を描かせる場合、注文できるのは基本的にバストアップショットかクローズアップショットだけというのが現状です。

 

ただバストアップショットに限ればそれなりにきまった絵を出してきます。まだまだ確率的には高くないですが上手く注文するとこちらが驚くクオリティの絵を出してくるのでなかなか面白いですね。

 

DALL-Eは油絵と水彩画が得意

 

さて、そんなDALL-Eですが傾向としては油絵や水彩画などが得意なようです。

 

例えばこんな感じ。

 

 

 

 

水彩画だと結構良いものを出してきます。

 

 

パステル画もまあまあですね。

 

続いて一番得意な油絵です。

 

 

 

こんな感じでやはり一番油絵が得意みたいですね。ただ気になる点としては全体的に筆のタッチが荒めになるという点と、それにも関わらずなぜか顔面だけが写真のようになるという点ですね。ちょっとこの乖離が激しいのが気になります。

 

この乖離を防ぐ方法としては特定の画家の画風をまねるように指示するといいです。

 

例えばこんな感じです。

 

 

 

これはフェルメール風。

 

 

これはセザンヌ風。

 

 

これはレンブラント風。

 

 

これはルノワール風です。

 

どうでしょうか?特定の画家の画風をまねさせると結構良い結果が出ますね。

 

 

それとあともう一つ人物を描かせていてどうしても気になったがあります。それは全体的に首の描写が不安定だという点です。

 

例えばこの画像を見てください。

 

 

こんな風になぜか首がやたらと長かったり、細かったりするケースが結構頻発します。この点は何とかならないかなぁと思いますね。

 

CG風の画像を出力するプロンプトはオクターンレンダラー風

 

続いてCG風の画像を出力してみました。

 

CG風の画像を出力するためのプロンプトは噂通り「オクターンレンダラー」が有効ですね。つまりオクターンレンダラーのまねをしなさいと指示するわけです。オクターンレンダラーはゲーム用のレンダラーですから結果がゲームぽい絵になるわけですね。

 

ただDALL-Eの場合、オクターンレンダラー以外のレンダラーは余り良い結果が得られないみたいです。例えば「プレイステーション」とか「アンリアルエンジン」といったプロンプトはダメみたいですね。

 

というわけで、「オクターンレンダラー風に」というプロンプトで出力した画像です。

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな感じで結構きまった画像を出してきます。見た目は完全にCGですね。

 

ただこれも細部に目を向けるとアクセサリーの描写だったり洋服の描写が結構めちゃくちゃです。具体的にはファスナーというものの役割が理解できていないとか構造的におかしな点が散見されます。おそらく画像だけを参考にして描いているために構造がおろそかになっているんだと思いますが、こういった点を理屈で教えて理解できるようになると一気に使えるものになりそうな予感がしますね。

 

 

DALL-EはSF風やサイバーパンク風の絵が得意

 

最後にいろいろ描かせてみて気づいたのですが、DALL-EはどういうわけかSFやサイバーパンク風の絵が得意らしいということがわかりました。

 

例えばこんな感じです。

 

 

 

 

 

 

 

こんな感じで結構高い確率で良い絵を出してきます。

 

なぜなんでしょうね?