雪に覆われたガガゼト山に入ると突然ビランが目の前に降り立った。
周りを見ると多くのロンゾ族に囲まれていた。
ケルク 「召喚士ユウナとガード衆よ。早々に去れ。」
その奥から、ケルク=ロンゾが現れた。
ケルク 「ロンゾが守護するガガゼトはエボンの聖なる山。
教えに背いた反逆者には御山の土は踏ませない。」
ビラン 「エボンの敵はロンゾの敵。帰れ、反逆者!」
ユウナ 「わたしは寺院を捨てました。もう寺院の命令には従いません。」
ユウナは攻められる言葉に臆することなく言った。
ケルク 「その言葉、取り返しがつかぬぞ!」
ユウナ 「かまいません。
寺院は教えを歪め、スピラを裏切っています。」
ワッカ 「裏で小細工ばっかしやがってよ!」
ティーダ 「そうだそうだ!」
リュック 「そうだそうだ!」
ティーダもリュックも拳を振り上げた。
ユウナ 「未練はありません。」
エンケ 「言わせておけば!」
ケルク 「召喚士とガードともあろう者が・・・。」
ルールー 「お言葉ですが、ケルク=ロンゾ様。
あなたもベベルを離れたのではありませんか?」
アーロン 「それでも山を守るのは一族の誇りのため。
ユウナも同じだ。」
ケルク 「むっ・・・・・。」
ビラン 「ケルク大老!
こいつら、ビランが八つ裂きにしてくれよう!」
エンケ 「一人も逃がさん!」
ビランは前に出た。
それを見てキマリがエンケの前に立った。
下から見上げるキマリ。
ユウナ 「ええ。逃げません。戦って旅を続けます。」
ケルク 「反逆者の汚名を着せられてなお、『シン』に挑むと言うか。
寺院に背き、民に憎まれても旅を続けると言うか!
そこまでして戦うのは何ゆえか!」
ユウナは一息ついて、笑った。
ユウナ 「スピラが好きです。
ナギ節を待つ人たちにわたしができる贈り物。たった一つの贈り物。
それは、『シン』を倒すこと。・・・・・・・・・・それだけです。」
ケルクはあきれたように首を横に振った。
ケルク 「己を犠牲にしても、か・・・。」
ケルクはユウナに背を向けた。
ケルク 「者ども、道を開けい。
召喚士ユウナよ。汝の思いはハガネより硬い。
ロンゾの強者が束になろうと、汝の意思は曲がらぬであろう。
まこと、見事な覚悟である。
・・・・・・・行くがよい。霊峰ガガゼトは、汝らを受け入れようぞ。」
ケルクは両手をガガゼト山に向けて挙げた。
ユウナ 「ありがとうございます。」
ティーダたちは歩き出した。
ルールーがささやいた。
ルールー 「ユウナ、強くなったわね。」
ティーダ 「強い・・・のかな。
すごく必死になってる。そんな気しないか。」
ルールー 「だから強いのよ、あの子は。
ちゃんと前に進んでる。
弱い人が必死になっても自分を追い詰めて壊すだけ。ちゃんと前に進めるのは、強いからよ。
ユウナは・・・・強くなった。私は、泣き言を言わずにいるのが精一杯
」
ルールーは優しくユウナを見つめた。
アーロン 「決定的だな。」
ティーダ 「何がさ?」
アーロン 「エボンは揺れている。まだマイカが抑えているが、遠からず崩壊が始まるだろう。」
ティーダ 「そういうの、オレ、どうでもいいな。」
アーロン 「おまえはスピラの者ではないからな。
純粋に教えを信じていた者にとっては、苦しい時代が始まるかもしれん。」
ふうっとため息をつくアーロン。
アーロン 「10年前も、ここでガガゼトを見上げたものだ。」
ティーダ 「オヤジは・・・・どうしてた?」
アーロン 「覚えていない。・・・・どうやってブラスカを死なせないようにするか・・・、俺はそればかり考えていた。」
アーロンは遠い目をしていた。
ふと、リュックがティーダのそでを引っ張った。
リュック 「なんか、思いついた?」
ティーダは首を横に振った。
リュック 「あたし、焦っちゃって、なんかダメだよ・・・
」
そう言いながらも、リュックは頭を抱えて歩いていた。
ワッカ 「首、痛くなってくんな。」
高いガガゼト山のてっぺんを見てワッカが言った。
ティーダ 「この向こうがザナルカンドか・・・。」
ワッカ 「ああ。おまえの故郷だ。」
ティーダ 「信じてないくせに。」
ワッカ 「今は違うさ。
そりゃあ山の向こうにあるのは遺跡かもしれねえ。けど、それとは別におまえのザナルカンドがどっかにある。
きっと、な。なーに、そのうち帰れるって。」
ティーダ 「だと・・・いいな
」
ティーダは下を向いた。
そんなティーダの肩をたたくワッカ。
ワッカ 「おら、元気ねえなあ。ま、締まってくぞ。」
苦笑いをするティーダ。
ふと見ると、キマリが辺りを気にしながら歩いていた。
キマリ 「ビランとエンケが消えた。」
ティーダ 「なーんかたくらんでそうだよな。ま、だいじょぶだって!」
キマリ 「ビランはロンゾ一の勇士。エンケも侮れない強者だ。」
ティーダ 「あ・・・・。たしかに、ごっついよな。」
キマリ 「それでもキマリは勝たねばならない。」
キマリはまっすぐに前を向いていた。
しばらく行くと、ビランとエンケが現れた。
ビラン 「待て!」
ティーダ 「また邪魔するってのかよ!」
ビラン 「召喚士は通す。ガードも通す。キマリは通さない。
キマリはロンゾの面汚し。ロンゾの使命を捨てた者。」
エンケ 「一族を捨て、御山も捨てた!
小さいロンゾ。弱いロンゾ!」
ビラン 「御山は、弱く小さい者を嫌う。
登りたければ・・・・・。」
キマリ 「力を示せばいいのだな。」
キマリは力強く言い返した。
ビラン 「勝てると思うか?
誰がキマリのツノを折ったか、忘れてはいまい。」
エンケ 「キマリは一度もビラン大兄に勝てなかった。」
キマリ 「今度は勝つ。勝つと決めた。」
キマリは前に出た。
ティーダも前に出ようとしたが、キマリが止めた。
ティーダ 「ロンゾの問題だってのかよ!」
キマリ 「キマリの問題だ。」
そしてキマリは二人に向かっていった。
ティーダたちはその様子を見ているだけだった。
ビラン 「ビランが八つ裂きにしてくれよう!」
エンケ 「ツノなし!ツノなし!」
二人がかりでキマリに向かってきた。
キマリは一人で二人を倒した。
ビラン 「強くなったな、キマリ。ビランは嬉しいぞ。」
ビランは山の頂を見た。
ビラン 「霊峰ガガゼトよ!
ビランを負かした強者の栄えある名前を伝えよう!
しかと覚えよ、ガガゼトよ!その名はキマリ=ロンゾなり!」
そして、ユウナを見た。
ビラン 「御山はキマリの強さを知った。キマリを受け入れるだろう。
召喚士!
寺院からの追っ手は、我らロンゾが食い止める。」
ユウナ 「本当ですか!」
ビラン 「昔、キマリのツノを折った償いだ。」
エンケ 「召喚士の後ろから来る敵は、我らが倒す。」
キマリ 「ユウナの前に立つ敵は、キマリが倒す。」
ビラン 「おまえほど恵まれた召喚士はいない。」
ユウナ 「ありがとうございます。」
エンケ 「おまえの像ができたら、ロンゾが磨いてやる。」
ユウナ 「・・・・・はい。
でも、わたしは反逆者ですから、きっと像は作ってもらえません。」
ビラン 「ならばロンゾが作る。」
エンケ 「立派なツノをつけてやる。」
ユウナ 「はい。お願いします。」
ユウナは微笑んだ。
ティーダ 「オレも、ユウナの像を見上げたいと思った。
・・・・・・・・ユウナと一緒にさ。」
ビラン 「召喚士ユウナ!」
ティーダ 「しつこいっつうの!」
すると、ビランとエンケは祈りの歌を歌いだした。
気がつくと、他のロンゾ族も歌っていた。
ティーダたちはロンゾに見送られてガガゼト山を登った。
途中の道にいくつもの墓標があった。
ルールー 「ここで力尽きた召喚士や、ガードたちの墓標よ。この山で命を落とした召喚士は、異界送りされないのよ。」
ティーダ 「なんで・・・・。」
ルールー 「別の召喚士がいないと、誰も送れないでしょう?」
ティーダ 「ってことは・・・・。」
ルールー 「何人かは魔物になって、この辺りにいてもおかしくない。」
ティーダ 「ユウナは、大丈夫だけどな!」
ルールー 「そうね。
でも、ここまで来て倒れるのは、悔しかったでしょうね・・・。」
そして、よくユウナの写真を撮って去っていく少年と会った。
少年 「はじめまして。ユウナ様。ボク、ワンツっていいます。」
ユウナ 「今まで、何度か会ってますよね。」
ティーダ 「今日は逃げないのか?」
ワンツ 「うん。兄さんの代わりに、ちゃんと仕事しないとね。
旅の商人、23代目オオアカ屋。知ってる・・・・・よね?」
オオアカ屋はずっとユウナたちの旅についてきていた。
ベベルでの戦いの時にも味方してくれていた。
ティーダ 「おまえ、あいつの弟!?」
ワンツ 「うん。兄さん、ユウナ様を助けに来たがっていたけど、反逆者に協力した罪で寺院に捕まったんだ。」
ティーダ 「オレたちのせいか!?」
ワンツ 「でも、兄さんは後悔はしてない。だって、捕まる前に言ってたしね。
自分の代わりに、ユウナ様を助けてくれって。」
ユウナ 「どうしてそんなに良くしてくれるんですか?」
ワンツ 「それは・・・。
ほら!そんなこと気にしてる場合じゃないだろ?
ボクの仕事、やらせてよ。
オオアカ屋、よろしく!」
ワンツは誤魔化した。
ティーダたちはワンツからアイテムを購入した。
ユウナ 「お兄さんのご無事、祈ってます。」
ワンツ 「ユウナ様こそ、お気をつけて。」
ユウナ 「はい。」
峠にさしかかった時、リュックがティーダを止めた。
リュック 「山、越えたらザナルカンドだよ・・・。」
ティーダ 「わかってる。」
リュック 「ユウナ、究極召喚手に入れちゃうよ。」
ティーダ 「わかってるよ。」
リュック 「あたし・・・・、なんも思いつかない
」
ティーダ 「オレもだ。」
二人で俯いた。
リュック 「どうしよ~?」
リュックは半泣きだ。
ティーダ 「なんとかなる。
今のオレたちは何も知らない。
このままじゃ、ユウナを助けられないけど、・・・・・ザナルカンドへ行こう。
行けば何かわかるって。
きっと、そこから始まるんだ。」
ティーダは顔を上げて、自信ありげに言った。
リュック 「へ~・・・・。」
リュックはニヤリと笑った。
ティーダ 「ん?」
リュック 「今、頼れるエースってカンジしたよ。」
ティーダ 「ザナルカンド・エイブスのエース!最初から言ってんだろ。」
リュック 「はは~っ!」
リュックはお辞儀した。
リュックが顔を上げた。
リュック 「あ~っ!?」
すぐ後ろにシーモアがいた。
シーモア 「ほう・・・・・。ジェクトの息子か。」
ティーダ 「リュック。先に行ってアーロンに伝えろ。」
リュック 「一人で戦う気!?」
ティーダ 「いいから行けって!」
リュックは頷いて走った。
シーモア 「ふっ・・・。よかろう。死の安息に沈め。」
ティーダ 「スカしてんじゃねえよ!」
ティーダは構えた。
キマリ 「かっこうをつけるな。」
すぐ前にいたのか、みんなが戻ってきた。
シーモア 「ユウナ殿、お久しゅう。」
ルールー 「ユウナ!」
ユウナは祈りのポーズをとった。
シーモア 「ふっ・・・。異界送りか。
その前に、ロンゾの生き残りに伝えたいことがある。
ふふふ・・・・。実に、実に勇敢な一族だった。
私の行く手を阻もうと、捨て身で挑みかかり・・・、ひとり・・・、またひとり・・・・・。」
キマリ 「ばかな・・・。」
ユウナ 「キマリ・・・・・・。」
シーモア 「そのロンゾの悲しみ、癒してやりたくはないか?」
ユウナ 「何を言いたいのです。」
シーモア 「彼を死なせてやればいい。悲しみは露と消える。」
シーモアはユウナたちに背を向けた。
シーモア 「スピラ・・・・。死の螺旋に囚われた悲しみと苦しみの大地。
すべて滅ぼして癒すために、私は『シン』になる。
そう、あなたの力によって。」
シーモアはユウナを見た。
シーモア 「私と共に来るがいい。」
ティーダはユウナの前に立った。
シーモア 「私が新たな『シン』となれば、おまえの父も救われるのだ。」
ティーダ 「・・・・・・・おまえに何がわかるってんだ!!」
ティーダはシーモアに向かって走った。
シーモア 「あわれなものだな。
だが、その絶望もここで消える。すべての嘆きを断ち切ってやろう。」
シーモアは終異体と変化した。
キマリ 「キマリはおまえを許さない!ロンゾの怒りが宿った槍で、撃ち滅ぼす!!」
シーモア 「スピラの悲しみを癒したくはないのか。
滅びの力に身をゆだねれば、安らかに眠れるのだ。」
ユウナ 「あなたは逃げているだけです!」
ティーダたちはなんとかシーモアを倒すことができた。
シーモアは幻光虫をまとって消えた。
ティーダ 「もう邪魔すんなよ!」
ティーダたちは先へ進もうとした。
ユウナが立ち止まった。
ユウナ 「わたしの力で『シン』になる・・・・。」
アーロン 「たわごとだ。忘れろ。」
ユウナ 「彼が『シン』になれば、ジェクトさんが救われる・・・・?」
アーロン 「行くぞ。」
アーロンはユウナを無視しようとした。
ユウナ 「何か知ってるなら、教えてください!」
アーロンは黙ったままだった。
それを見てユウナはティーダの元へ行った。
ユウナ 「教えて。」
ティーダは隠せなかった。
下を向いたまま答えた。
ティーダ 「『シン』・・・・・・・オヤジなんだ。」
ワッカ 「なんだそりゃ?」
ティーダ 「『シン』はオレのオヤジだ。オヤジが『シン』になったんだ。
リクツとかそういうの、よくわからない。
でも、オレ、・・・・・感じた。『シン』の中にはオヤジがいる。
オヤジがスピラを苦しめてるんだ。
・・・・・・・・・ごめん。」
ユウナ 「・・・・・・・・・ごめん。」
ユウナは下を向いたが、すぐティーダを見た。
ユウナ 「たとえ、『シン』がジェクトさんでも、・・・・・『シン』が『シン』である限り、わたし・・・。」
ティーダ 「わかってる。倒そう。
オヤジもそれを望んでる。」
ルールー 「父親と、・・・・戦える?」
ティーダ 「大丈夫。やるよ、オレ。」
下を向いたまま、ティーダは答えた。
ワッカ 「なあ、その話よお・・・・。『シン』の毒気にやられて、夢を見た・・・・・・わけじゃねえよな。」
ティーダ 「・・・・・おう。」
ワッカ 「んじゃ、チャップは・・・・。
・・・・・・・・・・わりいけどよ、オレ、何も聞いてねえことにしとくわ。
アタマこんがらがってきたぞ?
なんでまたそんなことになっちまったんだ。」
アーロン 「行けばわかる。もうすぐだ。」
ティーダたちは登山道に入った。
ユウナ 「あっ!?」
そこは祈り子の断崖。
壁一面、祈り子で埋め尽くされていて、異様な気を放出していた。
その気の流れ出た先では渦となり、空高く竜巻のようになっていた。
ワッカ 「なんだこれ!?」
ユウナ 「祈り子様だよ。」
ユウナはそっと壁に近寄った。
ユウナ 「召喚されてる・・・。誰かが召喚してる。この祈り子様たちから力を引き出してる。」
リュック 「こんなにいっぱい?」
ルールー 「並外れた力ね。いったい誰が・・・・・何を?」
リュックはアーロンの元に駆け寄った。
リュック 「ねえ、何か知ってるんでしょ?教えてよ!」
アーロン 「他人の知識などあてにするな。何のための旅だ。」
リュック 「ユウナの命がかかってるんだよ!」
ティーダ 「いや・・・・・、アーロンの言うとおりだ。」
リュック 「へ?」
ティーダ 「これはオレたち・・・・、オレの物語なんだから。」
そう言うと、ティーダは祈り子に触れた。
ティーダ 「うわっ!?」
次の瞬間、ティーダは違う場所に倒れていた。
ティーダ 「あ?」
辺りを見回すティーダ。
そこはまぎれもなく、ザナルカンド、ティーダの故郷だった。
ティーダは自分の家に入った。
ふと、部屋の隅っこに、祈り子がいるのに気づいた。
祈り子 「おかえり。」
ティーダ 「おまえ・・・・。」
祈り子 「ベベルで会ったよ。覚えてる?」
ティーダ 「あ・・・ああ。」
祈り子 「けど、あれが最初じゃないよね。
キミのこと、前から知ってる。ずっと、ずうっと昔から。」
ティーダ 「オレも、・・・・・知ってるような気がする。
ここは?」
祈り子 「ヘンなこと言うなあ。キミの家だろ?」
そう言うと、祈り子はふっと消えた。
遠くでみんなの声がした。
ワッカ 「どうしちまったんだよ、おい!?」
リュック 「ねえ、起きてってば~!」
ティーダは考えた。
ティーダ 「もしかして、・・・・・全部夢だろ?」
そして祈り子が現れた。
祈り子 「あたり。」
ティーダ 「夢!?
ざけんなっての。
夢なんか見てるヒマないんだからさあ。」
祈り子 「違うよ。
キミは夢を見てるんじゃない。キミが夢なんだ。」
ティーダ 「あ?なんだよ、それ。」
祈り子 「・・・・・・・昔、大きな戦争があった。」
ティーダ 「ああ・・・機械の?」
祈り子 「うん。ザナルカンドと、ベベルが戦ったんだ。
始めから勝負はついてた。ベベルの軍隊はみんな機械で・・・、ザナルカンドの召喚士たちはバタバタやられちゃったよ。
ザナルカンドは、滅びるしかなかったんだ。
だから・・・・、姿だけでも残そうとしたんだよ。」
ティーダ 「なに・・・したんだよ?」
祈り子 「生き残った召喚士と、それに街の人たちもみんな、・・・祈り子になったんだ。召喚するためにさ。」
ティーダ 「召喚って・・・・・『シン』!?」
祈り子 「違うよ。ここだよ。
眠らない街、ザナルカンド。」
ティーダ 「んああ?」
祈り子 「祈り子たちの夢を束ねて、街の思い出を召喚したんだ。
一つ一つの建物だとか、街に住んでた人とかね。」
ティーダ 「人って・・・・それも夢かよ!
オレ・・・・・・・も?」
祈り子は頷いた。
祈り子 「キミは、祈り子たちの夢。
キミのお父さんもお母さんも、みんな、みんな・・・夢。
祈り子たちの夢が消えたら・・・・・・・・。」
周りの景色が歪み始めた。
そして、暗い世界に変わろうとしていた。
ティーダ 「やめろよ。
夢でもなんでもいいよ。
オレを・・・消すな。」
祈り子 「ずっと夢を見てて、なんだか疲れちゃった。
・・・・・・・・ね、キミとキミのお父さんなら、僕たちを眠らせてくれるかな。
キミとお父さんは、『シン』に触れた。
スピラを巡る死の螺旋、その中心にいる『シン』にね。」
ティーダ 「ワケわかんねえよ・・・。」
祈り子 「キミたちはもう、ただの夢じゃない。」
遠くでユウナの声がする。
ユウナ 「お願い、目を開けて!」
祈り子 「もう少し、走ってみせてよ。
キミは、夢を終わらせる夢になれるかもしれない・・・。」
ティーダは意識を取り戻した。
ユウナ 「大丈夫?」
立ち上がるティーダ。
ユウナ 「よかった・・・・。」
リュック 「もー・・・・、すんごく心配したんだから~!」
ルールー 「大丈夫?」
ティーダ 「・・・・・・うん。」
ユウナ 「どう・・・したの?」
心配そうに覗き込むユウナ。
ティーダ 「なんでもないよ。気ぃ失って、夢見てた。
みんなに呼ばれて・・・・目が覚めた。」
ティーダは伸びをした。
ティーダ 「よく寝たし、気力回復!
んじゃ、行くッス!」
ティーダたちは先へ進んだ。
登山洞窟を進んでいると、アーロンがユウナに言った。
アーロン 「そろそろ・・・来るはずだ。
召喚士の力を試すために、奴は魔物を放った。」
ユウナ 「誰が・・・・ですか?」
アーロン 「ユウナレスカだ。」
ユウナ 「ユウナレスカ様!?」
アーロン 「ザナルカンドで、強い召喚士を待っている。」
ユウナ 「生きて・・・・いらっしゃる?」
アーロン 「マイカやシーモアと同じだ。」
ユウナ 「・・・・・そうですか。」
アーロン 「怖気づいたか。」
ユウナ 「いいえ。もう、何も怖くないんです。」
アーロン 「・・・・・ブラスカの娘だな。」
ユウナ 「最後まで、そうありたいと思っています。」
ユウナはまっすぐ前を向いていた。
洞窟を抜けると、魔物、聖地のガーディアンが待ち伏せていた。
アーロン 「来る!」
ティーダたちは戦った。
勝利すると、リュックが言った。
リュック 「ねえ!ちょっと休憩しない?」
アーロン 「休む必要はない。あと一息で山頂だ。」
リュック 「あとちょっとだから休みたいんだってば!」
リュックは座り込んだ。
リュック 「考える時間、少ししかないんだもん。」
ユウナ 「リュック・・・・。」
リュック 「いいよ。歩きながら考えるから。」
すねたように言うと、リュックは歩き出した。
みんなもそれについて行った。
最後尾で下を向くティーダにワッカが気づいた。
ワッカ 「おう、どした。行こうぜ。」
ティーダ 「ほんとに・・・・、もうすぐなんだよな。」
ワッカ 「とうとうここまで来ちまったなあ・・・・。」
アーロン 「ふっ・・・・
」
ティーダ 「何がおかしいんだよ。」
アーロン 「昔の俺と同じだ。」
ティーダ 「え?」
アーロン 「あの時、・・・・・ザナルカンドに近づくほど、俺も揺れた。
辿り着いたら、ブラスカは究極召喚を得て、『シン』と戦い、死ぬ。
旅の始めから覚悟していたはずだったが、いざ、その時が迫ると怖くなってな。」
ワッカ 「なんつうか・・・・意外です。
伝説のガードでも、迷ったりするなんて・・・。」
アーロン 「何が伝説なものか。
あの頃の俺は、ただの若造だ。ちょうど、おまえくらいの歳だったな。
何かを変えたいと願ってはいたが・・・・、結局は、何もできなかった。
それが・・・・、俺の物語だ。」
アーロンはまっすぐ歩き出した。
ティーダも、いろいろ考えながら後をついていった。
山道からは夕日を受けたザナルカンドが見えた。
ティーダ 「1000年前に滅んだ都市。
この目で確かめたいと思っていた街。
ユウナの旅の目的地。
オレの物語の最終章なのかも・・・・・。
いろんな思いが・・・・浮かんでは消えていった。
言葉にはならずに、・・・・通り過ぎていった。」
リュック 「みんな、ホントにいいの!?」
リュックは泣きそうな顔で訴えた。
リュック 「あそこに着いたら、ユウナは・・・・。」
リュックは下を向いた。
ユウナはそんなリュックを見て微笑んだ。
ユウナ 「リュックの気持ちはとても嬉しいんだ。
でもね・・・、もう、引き返さない。」
リュック 「引き返せなんて言わないよ。
でも、考えようよ!
ユウナ助かる方法、考えようよ!」
ユウナ 「考えたら・・・・・、迷うかもしれないから。」
リュック 「ユウナ・・・。」
ユウナはそっとリュックを抱きしめた。
ユウナ 「ありがとう、リュック。大好きだよ。」
リュック 「いやだよ、ユウナ。
そんなこと言っちゃいやだよ・・・・・。」
ユウナ 「シドさんに、よろしく。」
リュック 「いやだよ、自分で言いなよ。」
ユウナはリュックを離し、笑った。
ユウナ 「・・・・・お願い。」
リュック 「そんなこと、言わないでよ・・・・。
もう会えなくなるみたいでいやだよ!」
ユウナ 「キマリ、行こう。」
半泣きのリュックを引っ張って、ユウナは先へ進んだ。
ふと、ユウナがスフィアを落とした。
ティーダはそれを拾って、再生した。
そこはミヘン街道の旅行公司だった。
夕焼けを見ながら、公司の前の丘にユウナはいた。
ユウナ 「アーロンさん。キマリから聞きました。
わたしを、ベベルから連れ出せという、父さんの言葉・・・。
キマリに伝えたのは、アーロンさんですよね。
いつかお会いしたいと思っていました。お会いできて、嬉しいです。
ガードまで勤めていただいて、どうお礼をしたらいいのか・・・。
いいえ・・・・、お礼は『シン』を倒すこと。そうですよね。
はい、わたしは『シン』を倒します。
みんながこれを見る頃には、『シン』はもういないでしょう。
それに・・・・わたしも。
だから今のうちに言っておきます。
アーロンさん、ありがとうございます。
キマリ・・・・。
初めて会った日のこと、覚えてる?わたしが七つの時だよ。
父さんが『シン』を倒して、ベベルは大騒ぎでね、みんなが父さんを褒め称えて・・・、自分のことみたいに、嬉しかった。
でも、夜になって思ったんだ。
『シン』を倒したけど、父さん、死んじゃったんだ。わたし、一人ぼっちなんだって。
眠れなくて、そのまま街に出て、お祭り騒ぎを抜けて・・・、ベベルの長い橋に立って、一人で眺めてた。
父さんを見送った橋から、父さんが戦った平原を。
そしたら、キマリが現れたんだ。
ブラスカの娘を探しているって言ったでしょ?
最初は・・・怖かった。
でも、すぐにわかったよ、優しい人なんだって。
子供と話すの、慣れてなかったんだよね。
わたしがブラスカの娘ですって答えたら、・・・ベベルから一番遠いところへわたしを連れて行くって・・・。これは、死にゆく者の願いだって。
わたし、泣いちゃったよね。
あれはね・・・・、父さんが死んだんだって、もう会えないんだってわかったから・・・。
キマリ、何も言わずに抱きしめてくれた・・・・・・。
ビサイドに着いてからも、わたし、泣いたっけ。
わたしを寺院に預けたら、キマリ、村を出ようとしたじゃない。
行かないでって、しがみついて泣いた。
あれから、ずっとそばにいてくれて・・・、・・・・キマリ、本当に、ありがとう。
折れたツノ、好きだよ。
ワッカさん、ルールー。
ビサイドで暮らした日々、ずうっと忘れない。チャップさんと、3人でよく遊んでくれた。
だから、わたし、いつも元気でいられたよ。
召喚士になるって言った時、あんなに反対してたのに、・・・・ごめんなさい。いつか謝ろうと思ってた。
でもね、反対された時、とても嬉しかったんだ。わたしのこと、心配してくれてるんだなあって。
本当に、兄さんと姉さんができたみたいだった。ううん、本当の、兄さんと姉さんだと思ってる。
・・・・・・・ヘンかなあ?
ブリッツをしているワッカさん、好き。
怒りんぼのルールー、どんなに叱られても、好き。
それから、新入りガード君。ザナルカンド・エイブスのエース。
キミは・・・。キミが・・・・。えっと・・・、キミと・・・会えて良かった。
まだ、会ってから、そんなに経ってないけど。・・・不思議・・・・。こういうものなのかって思った。
それは、想像してたより、とっても素敵な気持ちで、・・・・素敵だけど、・・・・・・・・つらいよ。
うーん・・・・・・、なんだろ。
うまく言えないや、とにかく、会えてよかった。
だからつらいのかな・・・・・。キミと別れる時のこと考えると、・・・・怖いよ。
・・・・・・なんかヘンだなぁ・・・・、ここ、取り直しっす。えっと・・・・・。」
ティーダ 「なーにしてるッスか?」
ここで、スフィアは終わっていた。
ティーダたちは峠を越え、ザナルカンドへ向かって下りて行った。