ユウナ 「家出娘うちに帰る----こんな気分なのかな。
ビサイドへは旅立ってから初めて帰るんだ。」
ユウナ 「緊張しちゃうな。」
リュック 「なーんにも言わないで飛び出しちゃったもんね。」
ワッカ 「まったくだ。」
リュック 「あ!」
迎えてくれたのはワッカだった。
ワッカ 「村中大騒ぎだったんだぞ。」
ユウナ 「・・・・・ごめん。」
ワッカ 「ま、元気そうでなによりだ。」
ワッカはやさしく微笑んだ。
そしてパインに気づいた。
ワッカ 「ツレか?」
ユウナ 「あ、パインっていうの。一緒にスフィアを探してるんだ。」
パインは軽く頭を下げた。
ワッカはユウナたちを村に迎え入れてくれた。
ワッカ 「スフィアハンターか・・・。
噂は聞いてる。だもんで実はあんまり心配してなかったんだ。
しっかしなんちゅうか・・・、だいぶ雰囲気変わったなあ。」
ユウナは照れたように笑った。
リュック 「ワッカは相変わらずだね~、ぷにぷに。」
リュックはワッカのおなかを突いて言った。
ワッカ 「やめれって。
俺だってもう父親になるんだし、カンロクあった方がいいんだよ。」
ユウナ 「産まれそうなの?」
ワッカ 「おう!」
嬉しそうに答えるワッカ。
リュック 「ワッカがお父さんかあ・・・・。」
ワッカ 「オレも全然実感わかねえけどな。
・・・・・なあ、父親ってのは、どんな顔して子供を迎えりゃいいんだろうな?」
リュック 「自分の親をお手本にするとか。」
ワッカは空を見上げて言った。
ワッカ 「なーんも覚えてない。俺が小さい頃、『シン』にな。」
リュックは下を向いた。
ユウナ 「スフィアも残ってないんだっけ。」
ワッカ 「ああ。なーんも・・・・・・・あ。」
ワッカは一人考え込んだ。
リュック 「どうしたの?」
ワッカ 「・・・・・なんでもねえよ。
それより、あれだ。おまえらルーにも顔見せて安心させてやってくれ。頼むぞ!」
そう言うとワッカは村を歩きながら何か考え事をしていた。
ユウナたちはワッカのうちに入った。
ルールー 「おかえりなさい。」
ユウナ 「ただいま、ルールー。」
リュック 「ねえねえ、赤ちゃんは?もうすぐ産まれるんでしょ?」
待ちきれないリュックはルールーにすり寄る。
ルールー 「まだよ。ワッカひとりで先走ってるだけ。」
リュック 「なーんだ・・・・。」
残念そうに唇を尖らすリュック。
ルールー 「それよりどう。少し歩かない?」
ユウナ 「大丈夫?」
ルールー 「少しは動いた方がいいの。行きましょう。」
ルールーはゆっくりと立ち上がった。
ユウナたちは高台まで歩いた。
ルールー 「さ、聞かせて。何も言わずに出て行った理由。」
ユウナ 「これなの。」
ユウナはスフィアを差し出した。
ルールー 「例のスフィアね、ワッカから聞いてる。」
ルールーはスフィアを再生した。
映っていたのは牢獄だった。
牢獄に入っている男の子がティーダに似ていて、必死に出してくれるように懇願していた。
ルールー 「確かに似ているわね。少し雰囲気は違うけど。」
リュック 「キマリがガガゼト山で見つけたんだって。」
ルールーはスフィアをユウナに返した。
ルールー 「何かわかったの?」
ユウナ 「なんにも・・・・・。
でも、まだ調べてないところ、たくさんあるんだ。」
ルールー 「楽しそうじゃない。自由にあちこち飛び回って。」
ユウナ 「うん、楽しい。こういう旅、初めてだし。」
嬉しそうに答えるユウナ。
ルールー 「私がいないから羽を伸ばせるってわけ?」
ユウナ 「かもよ。」
ルールー 「言ってくれるじゃない。
頑張ってね。」
ユウナは頷いた。
ルールー 「ただ、ユウナは自分の立場を忘れないで。」
不思議そうにルールーを見つめるユウナ。
ルールー 「『シン』を倒した大召喚士ユウナ。その名前、利用されないように。」
ユウナ 「大丈夫。もう誰にも利用されたりなんかしない。」
ユウナの真剣な表情にルールーは頷いた。
ルールー 「あ。」
ユウナ 「ん?」
ルールー 「・・・・・動いた。」
ユウナ 「ほんと!?」
リュック 「触らせて!」
駆け寄るリュック。
ユウナたちはしばらく話した後、村に帰った。
ルールー 「せっかくだから今日は泊まっていけば?」
ユウナたちはルールーの誘いにのることにした。
次の日、ユウナが目覚めるとワッカの姿がなかった。
ルールー 「おはよう。」
ユウナ 「あれ?ワッカさんは?」
ルールー 「夜明けに出かけたわ。洞窟がどうこう言ってたわね。」
リュック 「洞窟?何しに行ったんだろ?」
ユウナ 「様子、見てこようか?」
リュック 「魔物も出そうだもんね。」
ルールー 「悪いわね。あの人が魔物にやられるとは思えないけど、隠し事なんて珍しいからそっちが心配ね。」
ルールーは笑いながらユウナたちを見送った。
ユウナたちは村はずれの洞窟に入った。
入ってすぐにワッカを見つけた。
ワッカ 「どうした?」
ユウナ 「ワッカさんの様子見に。」
リュック 「この洞窟になんかあんの?」
ワッカ 「まあ、そんなところだ。
いや、ここだって決まっちゃいねえ。もしかしたらって思っただけでよ。
何にもねえかもしれねえし、やっぱりあるかもしれねえし・・・・。
なんせ、古い話だからよくわからねえ。」
一人で自問自答のようなワッカにパインが言った。
パイン 「ここに何かがあるかもしれない。それを確かめに来た・・・・・と。」
ワッカ 「ああ。でも確かめたいような、確かめたくないような・・・。」
リュック 「あ~もう、はっきりしないな~。
ね、なんなのさ?」
ワッカ 「まあ、その、なんだ。古いスフィアがあるかもって話だ。」
リュック 「スフィア!?どんなスフィア?」
ワッカ 「スフィアは・・・・・スフィアだよ。なんだっていいじゃねえか。」
ワッカは誤魔化した。
パインが先へ進もうとした。
ワッカ 「お、おい?」
パイン 「私たち、スフィアハンターだから。」
ユウナ 「あ。」
リュック 「いただいちゃおう!」
ユウナ 「スフィアハンター・カモメ団!」
リュック 「ミッション・スタート!」
ユウナとリュックは走ってパインの後を追った。
ワッカ 「カモメ団ねえ・・・。」
ワッカはただユウナたちの背中を見つめていた。
ユウナたちは洞窟を進んだ。
奥にオレンジ色に輝くスフィアがあった。
ユウナが手を伸ばそうとしたその時、後ろからうなり声が聞こえた。
パイン 「スフィアに魔物はつき物か。」
ため息をついてパインは構えた。
魔物を倒して、改めてスフィアを取る。
ユウナ 「カモメ団、いただきます!」
そして笑いながらワッカの元に向かった。
ワッカ 「どうだった!?」
リュック 「あったあった!」
ユウナ 「見てみようか。」
ユウナはスフィアを再生した。
映っていたのはビサイドの様子だった。
リュック 「これ?」
ワッカ 「・・・・いや、違うな。」
ワッカは苦笑いをした。
村への帰り道でワッカが話した。
リュック 「結局、何のスフィアを探してたわけ?」
ワッカ 「そりゃあ、俺たちの両親だ。チャップはそう言ってた。」
リュック 「チャップって・・・・あ!ワッカの弟だ!」
ワッカ 「討伐隊に入ってたけど、今は異界の住人だ。
チャップが生まれてすぐ、両親が『シン』にやられた。
オレも小さかったから二人とも親の顔は憶えてない。
でもよ、ガキの頃、兄弟ゲンカしてたらチャップが言ったんだ。
「父さんたちが映ったスフィアを見つけたけど、どこにあるか教えてやらない」ってな。」
ユウナ 「チャップさんに聞かなかったの?」
ワッカ 「弟に頭下げて聞くのが嫌でな。意地張って・・・・・・・それっきり忘れてた。
でも、昨日おまえらと話してたら思い出したんだ。
あいつはよくここらで遊んでいた。この洞窟で見つけたのかもしれない。
そんで来てみたんだけど・・・・、急にモヤモヤしちまってよ。」
リュック 「なんで?」
ワッカ 「俺、親の顔を勝手に想像してたんだ。強そうで、優しそうな顔をよ。
つらい時とか、よくその顔を思い浮かべたもんだ。
でも、本当の親は全然違う顔かもしれねえ。そう考えると、見るのが怖くてな。
どうすりゃいいかわからなくて、おまえらが来るまでずっと悩んでた。」
リュック 「ワッカらしいねえ。」
ユウナ 「そのスフィアって島のどこかにあるのかな。
私たちが探そうか?」
ワッカ 「いいっていいって!
そういうの気にするのはもうやめた。
昔のことにこだわってウダウダしてちゃいけねえよな。
俺だって、オヤジになるんだし、もっとしっかりしねえとな。」
リュック 「頑張ってね、おとーさん!」
ワッカ 「おう!」
力強く拳を上げるワッカ。
ワッカ 「けどよ・・・。しっかりするっつうのはどうやったらいいんだろうな?
しっかりした父親ってヤツのお手本が欲しいよなあ。」
リュックは肩をすくめて首を横に振った。
すると、飛空挺から通信が入った。
ダチ 「あのな、そろそろ戻れそうか?アニキがうるさくてかなわん。」
ユウナ 「うん、すぐに戻るよ。」
ユウナは空を見上げた。
アニキ 「待ってるよ~。」
ユウナたちはワッカとルールーに挨拶をして飛空挺に戻った。
もう一つのスフィアがあるザナルカンドに魔物警報が発令していたので、ユウナたちはドナたちに会いにキーリカに向かうことにした。