「みるなのくら」(おざわとしお)
「決して見てはいけない」と言われたら、あなたならどうしますか?
美しくも切ない、不思議な世界に引き込まれる一冊です。
あらすじ
昔々、あるところに貧しいけれども真面目な若者がいました。
毎日山で薪(まき)を拾って暮らしていましたが、ある日、見たこともない山の奥へと迷い込んでしまいます。
日が暮れて途方に暮れる若者の前に現れたのは、ぽつんと灯る明かりと、山奥には似つかわしくないほど立派な屋敷でした。
屋敷から出てきた美しい娘に迎えられ、若者は豪華な座敷で、見たこともないようなご馳走を振る舞われます。夢のような一晩を過ごした翌朝、娘は若者にこう告げて出かけていきました。
「この家には12個の蔵がありますが、12番目の蔵だけは、決して見ないでください。」
若者が誘惑に勝てず、1つ、また1つと蔵を開けていくと、そこには驚くべき景色が広がっていたのです――。
✨ ここがポイント!
1. 蔵の中に広がる「日本の四季」
1番目の蔵にはお正月、2番目にはひな祭り……。
蔵を開けるたびに、賑やかなお祭りの音や季節の香りが飛び出してくる描写は、読んでいてワクワクが止まりません。
2. 「見るな」という禁忌と喪失感
日本の昔話によくある「見るな」の約束。
12番目の蔵を開けてしまった瞬間に、すべてが消え去ってしまう切なさは、
大人になって読み返すとまた違った深さを感じます。
3. 幻想的なラストシーン
最後に鶯(うぐいす)が飛び去り、あとには静かな山奥に一人取り残される若者。
そのコントラストが、まるで夢を見ていたかのような余韻を残します。
感想
読み終わったあと、「美しさと儚(はかな)さは紙一重だな」と溜息が漏れました。
11個目までの豪華絢爛な世界のあとに来る、12番目の蔵の「鶯が巣の周りを飛んでいるだけ」という静かな描写。
そのあとにすべてが消えてしまう展開は、何度読んでも鳥肌が立ちます。
こんな人におすすめ!
- 「鶴の恩返し」のような不思議な昔話が好きな方
- 子供に「約束の大切さ」を教えたいけれど、怖すぎる話は苦手という方
作者さん情報「おざわ としお」さん
"1930年中国生まれ。グリム童話の研究から出発し、日本の昔話の分析的研究を行い、昔話全般の研究を進めている。著者に『昔話の語法』『日本の昔話全5巻』(福音館書店)、絵本に『子どもとよむ日本の昔ばなし全30巻』『三まいのおふだ』他、多数ある。"
(引用 : 絵本ナビ「小澤 俊夫」)


