ものものしいタイトルが書店で目に留まり、思わず唸ってしまう位の興味が沸いてしまった作品、原発ホワイトアウト。
作者である若杉氏は現役官僚であり、原子力行政をとりまく現実について小説という形で各所の権力に邪魔されること無く執筆したという志にただただ感心しきりである。
同様の問題提起や権力への懸念を持つならば、通常は短絡的な伝達方法を思いつくのではないだろうか。
ツイッターやブログ、どこぞの週刊誌への秘匿コラムなどが思いつくところで、決して労力を浪費する可能性が高い小説は選ばないのだと考えるが、それらを総括して鑑みるとやはり「世の中に訴えなければならない信念」が透けて見える。

作品としては福島原発事故後の対応や政治による対応力、さらには企業である電力会社と規制庁との表にできない関係。
そして守秘義務違反を教唆する美人ジャーナリストと結果的にハニートラップにかかる内通者。
それら全体を狡猾に覆う原発再稼動に向けた企みをよく描いている。

率直な感想としては、内容理解が多少困難である。
読み進める上で10回ほどgoogleで制度や法律について調べてしまった。
業界の慣わしや裏工作、政治に関わる権益や公権力を動かして反対派を貶める手法。
そして誰もが人間として脱原発であるべきだと分かっていながら、経済的な国益などを理由として原発推進力。
それらが実は国民は理解しているようで実はできていない事柄なのだと思う。
ただ、これらの事柄を日々適当に聞き流してはいけない、そしてより考えなくてはならない事を学んだ気がする。

特定秘密保護法が施行され、このような情報の精度が悪化し、いずれは世に出てこれない社会になる。
このような作品は作家としてのテクニックや読み手の感情操作などとは別に、大いに評価すべき志があるのだろうと考える。

原発ホワイトアウト (講談社文庫)/講談社

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