その理由を教えて(5-2) | ななちのブログ

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馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「……大丈夫。君の可愛い唇が、腫れてひどい状態になるまでするつもりはないから。」

「ぅむぅ……。」

 

 そっと少女の唇に触れる。

 そうすると、そこから奇妙な彼女の唸り声が発された。

 思わずクスクスと笑ってしまうと、ぷくりと頬が膨らむ。

 

 ……愛を伝えて4週間。

 とうとう、『俺のキョーコ』と自覚したのだろう少女に、口づけに夢中になる前に確認すべきことを尋ねる。

 

「ねぇ、俺のキョーコちゃん。」

「………はい。」

「俺が君を恐れる理由。その理由がもう、分かったんじゃないかな?」

 

 君を愛して。

 君が誰かに奪われないかと不安になり。

 君を誰よりも守りたいと躍起になり。

 君に頼られる男でありたいと願い続けた。

 

 それなのに、君はいつも俺に救いの手を差し伸べる。

 助けたいと躍起になっているのに、逆にいつだって守られるのは俺の方で。

 

 その笑顔が。

 俺を慕う、言葉や行動、その全てが。

 

 俺を魅了し、心を奪い続ける。

 

 それなのに、君は自由だから。

俺をこんなにも縛りつけているのに、君は俺の腕の中にはいてくれないから。

 

「君を恐れる理由。それを、教えて?」

 

 ただただ、怖いのだ。

 

 日に日に増す、彼女への愛おしさ。

 でも、その愛情を受け取ることとなる少女が、いつか俺のこんな想いを恐れて逃げてしまったらと思うと。

 俺以上に、心惹かれる男を見つけて、その手を取ってしまうのかと思うと。

 

「敦賀さん………。」

「うん?」

 

 愛しているから、恐ろしい。

 

 俺の意志で自由にはできない、君の心であるがゆえに。

 

「私も、怖いです………。」

「え?」

「だって、敦賀さんの心は……私のものとは、違うんですもの………。」

 

 きゅっと、彼女を抱きしめる俺の胸元の服を掴み、そっと囁かれる言葉。

 それはまさしく、俺が考えていたことと同じことで。

 

「いつか、私のことを嫌いになってしまう日が来るんじゃないかと思うと、怖いです。……私が、敦賀さんを嫌いになる日なんて、来ないから。」

 

 「愛しているから」と。そう囁くように告白され、俺は腕の中のその華奢な身体を力いっぱい抱きしめた。

 

「……同じ、想いを。私に、向けてくださっていると……。それが、答えだと思って、いいですか?」

「………あぁ、正解だよ。」

 

 本当は、60点くらいなんだろうけれど。

 彼女の想いが、俺が抱く想い以上のものであるはずがないけれど。

 

 ……彼女が俺を愛してくれるというから。

 ……俺の愛を、信じてくれるというから。

 

 それならば、それが正解でいいだろう。

 

「正解のご褒美は、キスでいい?」

「……ほとんど毎日されているんです。ご褒美にもなりませんよ。」

 

 コツリ、と額同士をくっつけて、ご褒美を提案してみる。

 すると最上さんはおかしそうにクスクスと笑い始めた。

 

「違うよ。いつもは触れ合うだけだろう?だから、今日はもっともっと、お互いが近くなるようなキスをしよう。」

「へ?」

「ん~~~…これは正直、君へのご褒美ではない…な。俺へのご褒美か。……でも、これだけ一生懸命、君を口説いたんだから、ちょっとぐらいご褒美をもらってもいいよね?」

「…………えっ。」

 

 にっこり、と優しく微笑んでみせたつもりなのだけれど…。

 最上さんの表情が一瞬のうちにして固まる。

 まるで蛇に睨まれた蛙のようだ……。

 

「俺のことは、アリクイにしないでね?」

「え、あ、あの……?」

「愛しているよ、俺のキョーコ。」

「えぇっ、あ、あの……ぅうっ!!??」

 

 そうして俺は。混乱してあわあわと口元を緩めている少女の頭と顎を固定すると、半開きになっていた唇に、獣のごとく襲いかかった。

 
 
 
 

 

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