腕に閉じ込めた真っ白な、無垢なる小さな存在を抱きしめる。
「つ……敦賀さ………?」
「俺以外、誰が君を抱きしめると言うの。」
ぎゅうぎゅうと身体に取り込む勢いで抱きしめていると、戸惑いの声が身体の中から聞こえてくる。
俺以外の誰が、この可愛らしい存在に触れるというのだ。
俺以外の誰が、この娘を連れて行くというのだ。
「ご、ごめんなさ……。」
腕の中の少女は、いつも通りに俺のほの暗い感情を察知したかのように、弱々しい声で謝罪の言葉を口にする。
「何を謝る必要がある?」
「だって、私………。」
「ん?」
真っ黒な俺に包み込まれた真っ白な少女は、俺の身体の中で小さく震えている。スンッと鼻をすする音が聞こえて、モゾリと少しだけ俺の腕の中で動いた。
「こんなにも……醜い………。」
「そうか………。」
清らかな身の少女が、俺の腕の中で自分は醜いと嘆く。
「それなら、神様の元には行けないね。」
それならば。もっと醜い俺の腕の中に、堕ちてくればいいのだ。
俺は、出来うる限りの優しい声で、少女に囁きかける。
……それはさながら、悪魔の囁きのように……
「君は、ここにいればいいよ。」
「…………え……?」
神に背いてでも手に入れると誓った少女。
この乙女を欲しいと、俺は彼女を遣わせた神にも、彼女の運命を司る神にも祈ることはできない。
ならば俺は……
「神様の傍にはいかないで。」
俺を置いて、どこかに行かせない。
「他の誰のことも見ないで。」
俺以外を、その美しい瞳に映させない。
「他の誰にも触れさせないで。」
この、華奢で柔らかく、暖かな感触を知っているのは、俺だけでいい。
「君が、欲しい。……君だけが、欲しいんだ。」
『愛』と呼ぶには果てない渇きを持ち、激しい熱を孕む強烈な感情を告白して。
「だから………」
―――今日は12月25日。俺の愛しい少女が生まれた聖なる日。その日に…―――
「君を、俺にちょうだい?」
俺は、神にではなく、腕に閉じ込めた少女に願った。