聖なる日の願い~side蓮(3)~ | ななちのブログ

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馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

 腕に閉じ込めた真っ白な、無垢なる小さな存在を抱きしめる。



「つ……敦賀さ………?」

「俺以外、誰が君を抱きしめると言うの。」



 ぎゅうぎゅうと身体に取り込む勢いで抱きしめていると、戸惑いの声が身体の中から聞こえてくる。



 俺以外の誰が、この可愛らしい存在に触れるというのだ。

 俺以外の誰が、この娘を連れて行くというのだ。



「ご、ごめんなさ……。」



 腕の中の少女は、いつも通りに俺のほの暗い感情を察知したかのように、弱々しい声で謝罪の言葉を口にする。



「何を謝る必要がある?」

「だって、私………。」

「ん?」



 真っ黒な俺に包み込まれた真っ白な少女は、俺の身体の中で小さく震えている。スンッと鼻をすする音が聞こえて、モゾリと少しだけ俺の腕の中で動いた。



「こんなにも……醜い………。」

「そうか………。」



 清らかな身の少女が、俺の腕の中で自分は醜いと嘆く。



「それなら、神様の元には行けないね。」



 それならば。もっと醜い俺の腕の中に、堕ちてくればいいのだ。

 俺は、出来うる限りの優しい声で、少女に囁きかける。



 ……それはさながら、悪魔の囁きのように……



「君は、ここにいればいいよ。」

「…………え……?」



 神に背いてでも手に入れると誓った少女。

 この乙女を欲しいと、俺は彼女を遣わせた神にも、彼女の運命を司る神にも祈ることはできない。



 ならば俺は……



「神様の傍にはいかないで。」



 俺を置いて、どこかに行かせない。



「他の誰のことも見ないで。」



 俺以外を、その美しい瞳に映させない。



「他の誰にも触れさせないで。」



 この、華奢で柔らかく、暖かな感触を知っているのは、俺だけでいい。



「君が、欲しい。……君だけが、欲しいんだ。」



 『愛』と呼ぶには果てない渇きを持ち、激しい熱を孕む強烈な感情を告白して。



「だから………」



―――今日は1225日。俺の愛しい少女が生まれた聖なる日。その日に…―――



「君を、俺にちょうだい?」



 俺は、神にではなく、腕に閉じ込めた少女に願った。







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