坂口芳貞さん


坂口さんとの出会いは

本科『俳優についての逆説』
研修科入ってすぐの発表会『三人姉妹』イリーナ

「何をやったっていいんだよ」
と言われても
何もできない自分に愕然とし動けない

そんな自分を恥ずかしく思い
その後ずっと嫌われてると思ってました


それから20年くらい経って
本公演『定年ゴジラ』では
坂口さんの娘役を頂き

坂口さんは
ダメな私を大きく受け止めてくれる
優しいお父さんでした

私の家族のことも
色々心配してくれました


そして
念願のチェーホフ再挑戦

坂口さんの演出
奥様の玲子さんの翻訳で
本公演『三人姉妹』ではオーリガ

相変わらずダメダメな私を
呆れながらも
あきらめずにご指導下さいました


ご葬儀の時の
鵜沢さんのメッセージにもありましたが

いつも「時」を意識した演出でした

「過去」があって
「未来」があって
その真ん中の「今」

「それを切り取った芝居じゃなくちゃ
やる意味がないんだよ」

って、よくおっしゃっていた坂口さん

『三人姉妹』の冒頭のシーンは
印象的でした



夏の子供フェスでも

思いっきり本気で楽しんで
弾けている坂口さんに
私たちみんなが触発され

同時に
ツマンナイ芝居してるんじゃないかと
坂口さんの優しく厳しい目に
いつもドキドキしてました



昨日、劇団葬のあと
残った座員で坂口さんの話をしながら
飲みました

泣きながら大笑いしながら
みんなでワイワイ
坂口さんとの思い出を語りました


本当にたくさんの人に
色々なモノを残してくれたのですね


「芝居ができない私は
坂口さんに嫌われてるってずっと思ってたんだ」
とある人に話したら

「そう思ってる座員、多いよ」
と言われて

「あー、これが坂口さんの厳しさであり
優しさなんだ」

と痛感しました



偉大な方でした
多くのヒトを育ててくれました

昨日、私は
御記帳の係をさせていただきましたが

800枚用意したカードが
ほぼ無くなるくらい
多くの方にご会葬頂き

坂口さんの希望であった
文学座アトリエからお見送りしました


感謝という言葉では足りません


恩返ししたいけど
このちっぽけな私に何ができるのだろう


劇団のこと
芝居のこと

「心配なことはあるけどさ、
でも、明るい側面だってあるじゃない」と


柔らかく力強い声で
いつも語っていた坂口さん


坂口さんが見ていた未来

そこへ
私たちが繋げていかなくては



坂口さんに恥ずかしくないように
生きていかなくては



今はまだ
そんなことしか思えませんが

坂口さん
ずっと私達のことを見守っていてください

本当にありがとうございました



石井麗子