ユリ・シュルヴィッツさんの
『おとうさんのちず』
という絵本と出会いました
ポーランド・ワルシャワで生まれた「ぼく」は
4歳の時に
第二次世界大戦で爆撃を受け
家族で
トルキスタン(今のカザフスタン)へ移住
寒さとひもじさのなか
わずかなお金を持って
市場へ行ったお父さんは
パンの代わりに地図を買ってくる
お腹の空いた「ぼく」は
そんなお父さんを恨む
ツライ
ひどいお父さん、許せない!
でも翌日
お父さんが壁に地図を貼ると
くらい部屋に色があふれた
「ぼく」は、うっとりして
何時間でも飽きずに眺めたり
細かいところに見入ったり
運良く紙が手に入れば 書き写したりした
地図にある不思議な名前
地名で詩を作って
魔法の呪文みたいに唱えた
すると、狭い部屋にいても
心は遠くへ飛んでいけるのだった
灼熱の砂漠
白砂の浜辺
頬を切るほど冷たい風の雪山
鮮やかな鳥のいる美しいお宮
果樹園ではパパイヤ、マンゴー食べ放題
美味しい水を飲んで
ヤシの木陰でひとやすみ
高いビルが立ち並ぶ都会
地図のおかげで
ひもじさも貧しさも忘れ
はるか遠くで
魔法の時間を過ごすことができた
「ぼく」は
パンを買わなかったお父さんを許した
やっぱりお父さんは正しかったのだ

「ぼく」はその後
パリ、イスラエルに移り
今はニューヨークで暮らし
数々の素晴らしい作品を産み出している
今も
この地球上で起こっている多くの悲劇
爆弾の下にある
ひとりひとりに名前があり
家族があり
人生があり
夢があり
心があるということを
この世界の人みんなが忘れなければ
必ず平和になると思う
もうこれ以上
悲劇はいらない
麗子