大手ハウスメーカーの内装の下請け仕事を
辞めてから早やまる9ヶ月が過ぎていた。
いや、正式には向こうから切られた言う方が
正しいのかもしれない。
資金も調子が良かったころ、少しづつ貯め
ていた口座の預金ももうすでに底をついていた。
「自分で自力で仕事を取らなければ・・・」
と焦って追いかければ追うほど得意先が逃げ
てゆくような・・
潮が引くように案件が何にもない・・。
電話もならない、FAXすらない・・・。
よくニッパチと言って2月8月は商売では
あまり商売が芳しくない時期のことを言うが
その8月を過ぎて早や9月にはいったという
のにほんとうに何もない・・・。
森鴎外の書いた「阿部一族」の家臣が主人の
後を追い割腹する前に昼寝をするくだりがある。
そのくだりの時間の流れをせき止めた様な
静かさ・・である。
ちょっとの金なら何とかなるがこれだけの
金額となるとさすがに銀行もリスケだけでは
どうにも黙ってはいないという感じがする・・・。
本当に尻に火がついてはいるが飛び出して
いくところすらない。
心底もう追いつめられてしまっていたのである。
と、そんなときに、電話が鳴った。
心臓が飛び出したかと思うほど驚いた・・・。
電話の音をもう何十年も聞いていなかった
かのように思えた。
恐る恐る受話器に耳をあてる。
「もしもし・・・」
Part3へつづく