NHKラジオの「カルチャーラジオ 文学の世界」

金子みすゞの宇宙 第5回「大漁 こだまでしょうか」

 

内容が素晴らしいので、文字起こししています。

 

3回目に分けて書きました。

こちらの続きで、今回が最後です。

 

2回目はこちら↓

 

 

 

 

講師は、児童文学作家、童謡詩人で、金子みすゞ記念館館長の

矢崎 節夫(やざき せつお)さん。

 

 

(文字起こし始まり)

 

被災した人と聞いた瞬間に、

自分は被災しなくてよかったと

思っちゃうんです。人間って。

 

 

その1週間くらいは、大変だなーと

思うけど、1週間くらいすると、

私、被災しなくてよかったね。

あの人たちは大変だけど、私たちはよかったね。

と自分のことじゃなくなっちゃうんです。

 

でもこの代受苦者(だいじゅくしゃ)っていう言葉は

実は私が受けたかもしれない苦しみを

代わりに受けてくださった人。ということ。

 

だから自分じゃないけど、

その方達は被災者じゃなくて、

本当は、私だったかもしれないけれど

たまたま私じゃなくてそういう苦しみに

あってしまった人なんだ。

と思ったら、自分のこととして思って

何かできるでしょって思える。

 

私たち金子みすゞ記念館は、何にもすることが

できないので大きな被害を受けた3県の小中高校に

みすゞさんの詩をずっと送り続けた。

 

そこには、全国のみすゞ会の人に一筆書いていただいた手紙を

必ず入れている。

なぜかというと、そうしないとものを送ったことになるから。

それが嫌だから一筆箋を全部に入れている。

後日、その学校に話をしに行くと

全部の図書館で飾ってくれていて本が置いてある。

 

6年生の子が僕に聞いてきた。

どうして日本中の人が、こうして支援をしてくれたり

募金を集めてくれたりしれるのでしょうか?

 

代受苦者という言葉を伝えた。

たまたま自分じゃなかっただけ。

自分のこととして日本中の人が考えているんだと思います。と。

 

そしたら6年生の子が、きちっとした手紙をくれた。

「僕はいつか日本のどこかで

また同じようなことがあったら

僕は、その人たちの代受苦者になって

自分のできることをします」

 

子供はすごいんですよ。

大人が大切なことをきちっと教えてあげたら

子供たちは、そこから自分ができることは何か?

って考える。

難しいから教えないじゃなくて

難しいことでも教えた方が

いつかその子の心の糧になるから。

 

つまり、自分だけじゃないんだって思います。

 

それが思えるのがこだま何だと思う。

 

その人たちの辛さや悲しさを

自分のこととして、全く同じことは思えないけれども、

忘れないようにしようと思って

できることはしたいなって思うだけで

絶対世の中は違ってくる。

 

それを、金子みすゞさんの詩を読みながら

感じることです。

 

一番人間にとって大事なことは

こだましてあげることなんですよね。

 

辛いって言ったら、辛いね。って。

その後に、がんばろうよ。だったら聞ける。

 

でも最初から、がんばろうよ。とかそんなの平気よ。

って言われたら、否定されちゃったということだから

まず、辛いねって頷いてあげる行為っていうのは

人間にとって最も大切な行為なんだろうな。

 

東日本大震災の時に、こだまでしょうかがC Mで流れた。

本当は、違うところで流そうとしていた。

関東だけで、普通の社会の中で流そうとしていたが、

地震が起きたので、日本中で流れることになった。

 

ある時小学校3年の子供から電話があった。

みすゞさんのこだまでしょうかの詩が欲しいということだった。

 

その子は、対岸が火事で

お母さんと一緒に屋根裏部屋に避難したことがあって

ラジオが1つあって、真っ暗で

向こうはボーボー燃えていて、

怖くてすごく寂しい時に

ふとラジオをつけたら「こだまでしょうか」が流れた。

その時、その子は友達と遊びたいなと思った。

それで元気が出た。

つまり一人じゃないっていうのが

こだまの原点。

 

たった1遍の詩でも人間を元気にできる。

みすゞさんのおかげ。

 

言葉はすごいなと思います。

 

言葉がどれだけすごいかを意識して下さると

世の中絶対に変わります。

 

                  (文字起こし 終わり)

 

 

先週、デパートの催事で京都展をやってて、

あめ玉を買って、家で開けてみたら

お手紙が入っていました。

 

お気持ちが、嬉しかったですね。

 

 

ただの飴じゃない。

 

 

 

そう思って家の中を見渡してみると、

たくさんの人の手が入ったものに囲まれている。

自分で0から作ったものは何一つない。

 

 

これがどれだけすごいことか。

本当にありがたいことだと心から思えました。

 

 

代受苦者という言葉も初めて知りました。

 

他人事とは思わない。

たまたま自分じゃなかっただけ。

 

 

苦しんでいる人に対して思いを寄せる。

苦しいね。ってこだます。

 

思いを寄せるってすごいこと。

 

思いを寄せるって、ちゃんと気(エネルギー)

が入ってないとできないから。

簡単なようで難しいことと思う。

 

 

 

 

 

私の亡くなった父が、私が

勤めていた大企業を辞める時に

言っていたという言葉。

 

「女の子は優しければいい」

 

今、その言葉が身に染みています。

 

いつも優しい心でいられたらいいなと思う。

 

戦争で苦しんでいる人々に対して

何にもできないけど

心を寄せることを忘れずにいたい。