スモールカンパニーにとって、新規客開拓へ傾倒するよりも、既存客を守るほうが大切である、という話は私が創業期に営業代行で走り回っていた頃から、今日まで変わらず言い続けていることです。
その理由は、何よりも事業継続に必要なのはリピート受注であり、その源である既存客は受注コストも難易度も低い。
その反面、新規客は営業効率が悪く、受注コストも難易度も高い。
だから、営業リソースの少ないスモールカンパニーは既存客ファーストでなければならないのだ、というわけです。
とはいえ、既存客といっても“良い客”ばかりではなく、“悪い客”もいるでしょう。
私のもとに、特に多く寄せられる声は「このまま既存客に依存していても先が見えている・・」とか、「既存客からの受注が減って困っている。だから、新規客を・・(獲ってきて!)」というものです。
まあ、この考えに至るのもわからなくもないのですが、この先、新規開拓を頑張るにしても、まずはきちんと既存客を理解することが大事です。
既存客をよく理解して、関係性を分析し、見直しておかないと、せっかく新規取引してくれる顧客もすぐに離脱したり、頭打ちになって売上が伸び悩んだら元も子もありません。
そもそも、“良い客”と“悪い客”の違いは何か?
それはどこで決まるのか??
いろんな見方もあるでしょうが、よく目にする顧客の在り様で比較してみましょう。
【顧客の良し悪しレベル表】
一般的に、売り手に都合の良い客が“良い客”であり、その逆が“悪い客”です。
この表でお伝えしたいことは、表の内容は全て、自社(商品)に対する顧客の態度であり、顧客そのものの良し悪しではない、ということです。
もっと言えば、自社の商品(サービス)や取引に対する顧客態度の良し悪しです。
では、この表のような顧客態度は何によって、決まるのでしょうか?!
勿論、顧客特性もありますが、根本的に言えば、顧客の良い面・悪い面を引き出すトリガーは、売り手の姿勢や態度、品質、マネタイズ、つまり、取引の在り方全般です。
わざわざ最初から“悪い客”呼ばわりされたい顧客はいません。
ボタンの掛け違い、期待外れなどが原因で、客筋・客質を悪化させるのです。
つまり、最初から顧客に良いも悪いもない。
売り手次第で、顧客は良くも悪くなるということです。
態度のデカい客、無理な値引きやサービスを要求してくる客、変な言いがかりをつけてくる客、あれこれ難癖つけてお金を払おうとしない客・・・いろんな困ったお客というのはどこの業界にもいます。
しかし、これらの困ったお客を単に“悪い客”だとレッテルを貼って、避けて逃げてばかりいては、ビジネスは先細りし、優良客からしか売上を作れない経営虚弱体質になってしまいます。
私たち、スモールカンパニーは、こういった困った客をも売上に替えるハングリーさが必要です。
ですので、こういうふうに理解してあげてください。
『顧客はみんな、甘えん坊。』
特に困ったお客ほど、自分の利益を大切にしすぎて、取引相手のことまで気が回らないし、自分のわがままだけを聞いて欲しい赤ちゃんのような存在です。
ビジネスの相場も自分が要求している内容の妥当性も合理性も、なーんにもわからない無垢な欲しがり屋さん。
それが、困ったお客、つまり“悪い客”の正体なのです。
「もっと納期を短縮しろ!」=「ばぶっ!」
「もっと値引きしろ!」=「ばぁぶっ!」
「突然だが取引をキャンセルしたい」=「ばぁぁーぶぅっ!」
甘えん坊ほど、ばぶっばぶっ!と元気によく鳴くものです。
困ったお客に対して「大人になれよ。」ではなく、売り手である私たちが立ち居振る舞いを変えて、上手に顧客を導いてあげられるはずです。
売り手は、その道のプロ。
製品に対する知識も、ノウハウも、買い手よりも上なのだから。
難しいお客ですらも、そのように理解したうえで、もう一度【顧客の良し悪しレベル表】を見ていただくと、このレベル分けは、“悪い客”を“良い客”へと昇華させていくステップ一覧表としても見ることができます。
そう、これは顧客の反応を優良化させるためのステップでもあります。
売り手は、その道のプロであり、
プロは、顧客に従うのではなく、
私たちスモールカンパニーは、その道のプロとして強い自覚をもち、あらゆる顧客を導いて優良化することで、「継続と繁栄」の果実をいただきましょう。