赤字続きの旅館 | 1丁目住人のブログ

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岐阜の下呂にある、ある旅館に泊まらせて頂いた。一世紀近くも続いた旅館は、過去天皇が泊まられたり、司馬遼太郎が愛したと言われる旅館である。

至る所に、一品一様の調度品がしつらえてあり、どれもが贅を尽くされたものである。下呂の温泉の源泉であり、この湯を町内に配り、日本でも有数の温泉街にしたのだという。

旅館を経営しているのは名古屋の有名な財閥一家であるが、なんと約80年連続赤字続きなのだそうだ。

それもそのはず、「より多くの人に日本の至宝を開放したい」というオーナーの計らいにより、その文化財としての価値やサービスレベルに見合わない割安な価格設定であるし、創立からずっと改修を続け、補修費が莫大なのである。

赤字でも続けられるのは、さすが財閥であり、年間億単位での赤字を財閥の資産で埋め合わせているのだという。

何とも天晴れな話とも受けとれるし、もったいない・惜しいというようにも解釈できる。

僕はその財閥のオーナーと仲良くさせてもらい、なんと無料でスイートに一人宿泊させてもらった。なんて贅沢な奴なのだろう。

今から過去をさかのぼって俯瞰するならば、守るべきものは古きことではなく、モノに宿った魂や精神性だとすれば、後世に伝えてゆく形やシステムというものを再考しなくてはならない。

変な話、財閥一家の資産もいつかは枯れるかもしれない。資産家とその周囲の理解によって成り立ってきたが、形あるものは有限であるし、関係性も変化する。

とても良くしてもらったかわりに、何か価値のあるアイデアを提供できないか、考えているところだ。そこには、売上や利益成長の固定観念からは思いも寄らない、日本的であって世界に発信すべき、新しい経済のモデルが眠っているように思えてならない。