さて、東京上野の東京都美術館では、《 龍神 》 さまの絵も展示されているという《 ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション 》 展が、まだまだ大絶賛のもと開催中であります ( 開催期間は 2017 年 7 月 20 日 ~ 10 月 9 日 ) が、今からはもう 30 年以上も昔に、当時の阿含宗管長であった桐山靖雄ゲーカのパブリシティによってちょっとした龍神ブームのような状況が世間に出来するというような事もあったらしく、そのような状況下において出版されたらしい本に、 『 竜神よ、我に来たれ! 』 というものがあります。


竜神よ我に来たれ-表紙
吉田大洋 著 『 竜神よ、我に来たれ!幸福を呼ぶ守護神の祭り方 』 ( 徳間書店/1981 年 )

 この本の著者は吉田大洋さんとおっしゃられるのですが、この方は 《 埋没させられた出雲神族の顕彰とその復活 》 とでもいったものをある種ライフ・ワーク的なものとして活動されておられた方のようでもあって、真の竜神信仰というものは埋没させられてしまった出雲神族に出自を持つものでなければならない、という趣旨の主張を持たれていたようであります。


 その意味において吉田さんは、同書の冒頭においてまずは真の竜神信仰による絶大なるご利生といったものを簡単に紹介してから、そのようなご利生をもたらす真の竜神信仰の根幹となるものとしての、埋没させられてしまった “ 出雲神族直系の富家 ” を紹介する事によって、真の竜神信仰のあるべき方向性とでも言ったものを示されていました。


" ここで、竜神さまの宗家である出雲神族直系の富家についてふれておきましょう。現当主は富まさ雄さん。もとサンケイ新聞の編集局次長でした。正式な名称は、むかいのじょうがん出雲臣たからの富當雄といいます。 ( 中略 ) さて、出雲神族の富家が出雲大社の上官家であったことは、歴史学者の方々もほとんどご存知ないようです。 ( 中略 ) こうして、出雲神族と出雲大社との縁が切れ、それとともに出雲大社も竜神さまとは無関係になるのです "
『 竜神よ、我に来たれ! 』( p.38 - 40. )

 巷間、縁結びの神様として篤く信仰されている出雲大社について、一部の識者からはこれもそのご利益のほどには疑問符をつけるべき事が指摘されていたりするのですが、それも、このような事情といったものを知ってみると、真剣に耳を傾けてみるべきものと言う事も出来るのかもしれません。


 『 竜神よ、我に来たれ! 』 という著作自体は、必ずしも読みやすいとは思えないし、面白いとも言いきれないものの、そこで披露されている様々な情報は貴重なものであり、それらを面白いと感じきれないのは、ひとえに私の知識が不足し過ぎているからなのではあろうかと思われます。つまり、同書の本来の魅力を十分に堪能するには、古代史についての充分な基礎知識が必要になるのかもしれません。


 いずれにせよ同書においては、その当時の世間に流布されていた様々な竜神信仰を一つ一つ検証していく一方で、古代出雲王朝の正嫡を名乗る富さんという方をさりげなくプロモーションしつつ、古代出雲神族の竜神信仰こそが真実の竜神信仰であるとして推奨しているのですが、その伝でいくと、 『 法華経 』 などに説かれる八大竜王の説などは、真の竜神信仰に繋がるものではないとされてしまいますし、阿含宗における龍神などは、論外の扱いになってしまうようでもありました。


 その出雲神族がお祀りしていた真正にして由緒正しい古来の竜神さまの 《 ご神影 》 は、従来は一般に入手する事は困難であったものの、真摯に信仰される気持ちのある方には、抑圧され埋没させられた古代出雲神族の末裔にしてその正当継承者である富氏を顕彰した 『 竜神よ、我に来たれ! 』 の著者であった吉田大洋さんを通じて頒布する事が可能になったという事で、その真正な竜神さまの 《 ご神影 》 の正しいお祀りの仕方についてもその概略が同書では語られていました。同書を入手するのは現在ではかなり困難になってしまっているのではないかとも思われます ( ちなみに、2017 年 7 月 27 日現在の amazon では ¥ 48,088 の古書価格がついているようです ⇒ こちらをご参照ください ) ので、参考までに今ここにそれをご紹介しておく事にしましょう。


  まずは、 " お社は市販のもので十分 " ではあるものの、そもそも論として、真正な竜神さまはきちんとお社にお祀りせねばならない、という事であります。そのお社の材質については、“ まさの日本ひのき製が正式ですが、西洋檜でもかま " わず、但し、 " お社の屋根の上についている千木ちぎだけは、上図の男千木おちぎでなければなりません。関東地方はほとんどが皇太神宮形式の女千木めちぎですから、この部分だけを作り直してもらってください " とかなりマニアックな注意がなされ、さらには、竜神さまをお祀りするお社は " 白木造りに限られますので、欄干らんかんなどが朱塗りのものは絶対に避け " るようにと釘を刺されてもいます。


 次に、 " 竜神さまは東面した二畳の部屋にお祭りするのが正式 " だということで、" 東面する部屋がなければ南面、次いで西面 " の部屋ならばお祀りしても構わないが、 " 北面は不可とされてい " るという事で、二畳の部屋がない場合には " 三畳の部屋を白布で二畳に区切 " ればよいと言う事で、あくまでも “ 二畳の部屋 ” という点にはこだわるようでありました。その理由は述べられてはいなかったものの、その様な場所に真正な竜神さまの 《 ご神影 》 を安置したお社をお祀りするのだという事であります。


 また、 " 部屋がない場合は、の上に神棚をつくってもよい " が、 " このご神影は、 ( 中略 ) 、壁に貼ったり、に差したりするものではありません " として、祭祀するための専用の部屋を用意できない場合には、最低でも次善の策として神棚を造作してそこにお社をお祀りするかはする必要があるとされています。さらに、 " 祭壇や神棚の上には、二階がない ( 神さまの上を人が歩かない ) ことが望ましく、やむを得ないときは、祭壇や神棚の上の天井に半紙か奉書に 「 天 」 と書いて貼ってお " く、という事で、このあたりは一般的な祭祀などでもよく語られているところではあり、場合によっては 「 天 」 ではなく 「 雲 」 と書く場合もあるようです。


 なお、祭祀専用の二畳の部屋を用意する事ができずにかもいの上などに神棚を造作するような場合でも、その " 神棚も、人が出入りするようなところは避け "るようにとのことです。


 まぁ、これだけで、龍神 ( 竜神 ) さまをお祀りする事のできる人はかなり限定されてしまうような気がしなくもないのですが、詮無いことではありましょう。


 ご神饌やお供え物などについては、お水だけは毎日取り換えて、お下がりは竜神さまからのプレゼントとして飲食に用いるようにとのことでした。神酒みきとお榊、洗米と塩は、一週間に一度くらいの割合で新しいものと取り替え " るようにし、 " お供え物については特に定めがありませんんが、お菓子などの製品類は避けることになっている " との事です。さらに、市販の神具には燈明台がついているものの、 " 燈明は絶対にあげないでください。火は特別な祭祀のとき以外は決して用いないことになっている " ともおっしゃられています。


 このように、自宅に竜神 ( 龍神 ) さまをお招きしてお祀りするには、それに適った様々な仕来りや作法といったものがあるわけですが、いずれにしても、天部・神様ごとは、何事につけ神経を使うものでもあって、軽々しくお祀りする事に対しては、若干の違和感を感じざるを得ないのが正直なところです。少なくとも竜神 ( 龍神 ) さまに関しては、あまり軽々しく接すると火傷をしかねない心配もあるのではないでしょうか。もちろん、私自身も、特にこのブログ内では、かなりフランクなところに自身の立ち位置を置いているわけではありますが、その意味において、少なくとも私自身は竜神 ( 龍神 ) さまをお祀りしていませんし、お祀りする予定もなく、普段は竜神 ( 龍神 ) さまにはあまり関わらないようにする事によって、敬意を表しているつもりではあります。


 ……、あっ。でも、美術館に展示されている龍神画を鑑賞するくらいは許して、ね 叫び


 ところで、『 竜神よ、我に来たれ! 』 を読んでいて、ふと、気になる事がありましたのでその部分を少し引用してみたいと思うのですが、それは少し長くなってしまいますので、それについては 《 to be continued 》 という事にいたします。