さて、それに対して、このブログも久しぶりの更新になる今日この頃ですが、皆さんは「ルーン文字」というものをご存じでしょうか?


 「ルーン文字」というのはブリテン島を含めたヨーロッパ大陸の、中央地域からイメージとしては(ヴァイキングなどが活躍した?)北欧地域にかけて発達した古代表音文字の一種で、現代ではちょっとスピっぽい系統の方々の間で占いのアイテムとして重宝されたりもしているものになります。


 この文字はその昔、北欧神話世界の主神オーディンが世界樹ユグドラシルに吊るされ、九昼夜にわたって自身を自らにささげ続ける事によって天啓を受け獲得した文字だとされてもいます。


 つまり、ルーンというのは北欧神話的な世界観を背景として発達したもので、キリスト教的な世界観を正統とするヨーロッパ世界においては、どちらかというと異教的な香りのする文化圏を背景としているアイテム、という事になったりもするようです。


 ただ、ルーン文字と一言でいってもそれは、現代英語の【アルファベット】や現代日本語の【あいうえお】のように一義的なものではなく、いくつかの種類がある事が知られています。


 ネットで普通に検索すると、おそらくは【エルダー・フサルク】というルーン文字のセットが出てくるのではないかと思うのですが、これは 8 × 3 = 24 文字でセットになっているルーン文字で、日本では古フサルクなどと呼ばれることもあります。


 ヨーロッパでも 8 と 3 は縁起の良い数字だと考えられていたらしく、 24 文字を 8 文字づつの 3 つのグループに分けたうえで、そのそれぞれに対してフレイ、ハガル、テュールという北欧神話に登場する神様の名前を付けて分類したりするのだそうであります。

    エルダー・フサルク

  1. Freyr's Eight ( フレイ神の 8 文字)

  2. Hagal's Eight ( ハガル神の 8 文字)

  3. Tyr's Eight  ( テュール神の 8 文字)

 ちなみに、「フサルク」というのは、順番に並べたルーン文字の頭から六文字目までが、現代のローマ字に転写すると順に「F)」「U)」「Th)」「A)」「R)」「K)」 となっているところから、ルーン文字の全体を呼ぶ際に使われる言葉になります ( つまりルーン文字のアルファベット、という事ですね)。


 この 24 文字のエルダー・フサルクは、後に時代や土地柄などによって、文字の形が変化したり文字の数が増えたり減ったりという様々な変化を遂げて、 16 文字からなるヤンガー・フサルクや30 字以上にまで増えたアングロ・サクソン・ルーンなどという多くのヴァリエーションを生んでいます。


 ちょっとスピった占い師さんなどの中には、例えば「(ルーン文字の)ウルズがローマ字のUの元ネタになったと言われている」などというトンデモな発言をされている方もいたりするのですが、学術的にはローマ字(ラテン文字)をはじめとしたいくつか想定される既存の文字からルーン文字が考案されたものと考えられていて、主に次の四つの文字がルーン文字の元ネタとして議論されているところであったりもします ( 決してルーン文字が元ネタになったわけではありません ) 。

    ルーン文字はこの文字から作られた・・・説

  1. ラテン文字説

  2. ギリシャ文字説

  3. 北イタリア文字説

  4. フェニキア文字説

 1 ~ 3 の説がそれぞれに言い分があって拮抗していて、それに頭一つくらい遅れる感じで 4 の説が主張されているのが現状のようです。


 ところで、なぜ急にルーン文字の話なぞをこんなところで振りだしたのかというと、それは、ハロウィーンもつつがなく終わり、来月にクリスマスを控えた今日この頃になって、ルーン文字とそれに関連する諸々に関して極めて有益な書籍が発売されたのを知ったから、であります、


 それが、こちら・・・。



エドレッド・トーソン 著/吉田深保子 訳
『ルーンの教え』
(フォーテュナ発行/2021年)

 ルーンというと、その異教的なイメージと相まって、ちょっとスピった方々によってスピった流れで語られる事も多いような印象が無きにしもあらずなのではありますが、この本は常識的な世界の知識をもきちんと踏まえた上で、ルーン文字に関する様々な知識を我々に提供してくれています。


 しかも日本語への翻訳を担当された方も、ただ単に「おれ英語なら読めちゃうんだよね」みたいな方ではなく、ご自身でルーン文字を研究されている方であるらしく、原典で言及されてはいるものの特に提示されていない資料の数々を、かなりにわたって訳者所蔵資料という形で併載してくれているので、この書はルーン文字に興味を持つ者にとっては大変に有益なものと言えます。


 ルーン文字に関しては、占いであるとか、ヨーガ的なエクササイズ(ルーニック・ヨーガ)であるとか、タリズマン的な使用法であるとか、現代においてはさまざまな応用法が開発されているのではありますが、それらの探求に入る前に、まずは本書でルーン文字全般についての基礎的な知識を確認しておく事が賢明と言えるでしょう。


 なにしろ、私なぞはこれまで、ルーンというとこんなものしかネタとして確認していなかったほどであります。



ラルフ・ブラム 著/関野直行 訳
『ルーンの書』
(株式会社ヴォイス/1991年)

 この本は、素焼きのルーン・ストーンがセットとしてパッケージされていて、ルーンの入門書としては手頃かなと言えなくもないものの、その書かれている中身が、著者であるラルフ・ブラムさんという方が、ルーン文字について瞑想する事によって得た知識・・・、だという事ですので、ルーン文字の並び順もまったくのデタラメだったりして、この本から入門すると読者は混乱する事この上ないのではないかと思われます。


 もちろん、ルーン文字の並び順などについては、各種のルーン文字の間で異動があるうえ、例えば同じエルダー・フサルクの中においても、若干の前後はあります。但し、それは全くのデタラメ、というわけではありませんし、上に紹介した『ルーンの教え』においてはそれらについても説明がされていて、読者は安心して入門する事が出来るのではないかと思えるところでもあります。


 もちろん、現在さまざまに普及しているルーンのマジカルな知識というものは、太古からの伝統を伝承したものなわけではなく、近代以降に発達したものではありますので、『ルーンの教え』によって常識を確認した後でならば、『ルーンの書』であえてスピってみる、という選択肢はあり、とは言えるでしょう。


 そして、『ルーンの教え』によって常識を確認した後でならば、こんなルーン・エクササイズ(ルーニック・ヨーガ)に挑戦してみたり・・・。



 あるいは、フサルクでチャンティングしてみたり・・・。



 ・・・、と、その応用は自由自在となるのであります。


 こんなルーン・マニアな生活を送る方々の事を「オーディアン」と呼んだりする事もあるのだそうですが、皆様も『ルーンの教え』を読んで、ぜひルーン・マスターを目指すべくオーディアンな日々を過ごしてみては如何でしょうか?


 ・・・。


 但し、最後に一つ注意しておかなければならない点があります。


 それは、前世紀末に活動していたあるオカルトのグループにおいても、このルーン・エクササイズが採用されていて、そのグループの残党が出自を隠しながら、ルーン・エクササイズなどと言って信者の勧誘を行っている場合がある、という事です。


 そのあるグループはかつて、 “ アジアにほにゃららの光を拡げるのよ~ ” などと言って信者にエンロールメントを強制していた・・・、などという疑惑が指摘されながらも、現在では自然消滅してしまってはいるのですが、そのグループの活動期にインストラクターとして奉仕していた方々の残党が、その身分を隠して若い信者を勧誘する道具の一つとして、ルーン・エクササイズを利用したりするかのごとき例もみられるようであります。


 ルーン・エクササイズなどとは言っても、はっきり言って彼らはオーディアンでもなんでもなく、中南米の邪神の走狗となったただのオカルト狂でしかありません。


 皆様は、そのような輩にひっかかったりはしないように、くれぐれもご注意ください。