毒まで描いた『呪術廻戦』

　今さらな話ですが、キメツの後を確実に追い続ける一作『呪術廻戦』。現在コミック（単行本）でゼロ巻＋15巻まで発行されています。
　その中でも最も来てるのが、『０』巻。

芥見下々『呪術廻戦 ０』集英社
　作者ご本人は、第１巻以降を本編として位置づけたうえで０巻を“前日譚”とおっしゃられてはおられるのですが、一読者からするとそれはまったく逆で、第１巻以降の本編がこの０巻の“後日譚”と言うべきなのではないか、と思ってしまうほどのパワーに満ちています。
　この『０』巻の見どころは、ほぼ全て、本翻マスター・レイジによって指摘されつくしてはいるのですが、それでも指摘されずに取り残された点が一つありました。
　それは、日本の漫画・アニメ文化史上最高のヒットを記録した『鬼滅』においてさえも描き得なかった《毒》であります。
　特にこの毒は、ある意味で非常に日本的な文化の閉鎖性に根差したものでもあるようで、もしかしたら作者の芥見先生も、そのような日本に特徴的な文化的閉鎖性に苦しまされてきたのではないか、などという事もふと思ってしまいました。
　ストーリー的には、もしも乙骨が、五条悟たちと出会うよりも早く、夏油傑と先に出会っていたら、世界の様相は全く変わっていたのだろうな、との夢想を捨てきれない所でもあります。

　もっとも、どこからどう考えても非術師（サルども）のど真ん中でのほほんとしている私なぞは、まったくもって、非常に困ったことにはなってしまうのですけど、ね。