あるラジオ・パーソナリティ氏が、このバンドとこの曲が好きだったという事で、この曲のトリビュート・アルバムのようなものが発売された時に、その中からいくつかのヴァージョンをその方の番組で流していたのを聞いて初めて知った曲なのですが、フラワーカンパニーさんというバンドの曲に 『 深夜高速 』 というものがあります。



深夜高速 / フラワーカンパニーズ

 音楽としては非常に惹かれるものがあり好きになってもおかしくない曲なのですが、私にはこの曲を聞いた当初から、大きな違和感のようなものが否定しがたく感じられてなりませんでした。

 フラワーカンパニーさんは、どちらかというとロック・バンドのようなので、 『 深夜高速 』 そのものもロックなフレーバーのサウンド・アレンジがされていて、それを聞いている分には分かりにくいかもしれないものの、少しアレンジを変えたものを聞いてみると、その違和感はますます増大するようにも思われます。



はせがわかおり 深夜高速

 こちらの方は、若い女の子によるフォーク・ギター一本での弾き語りであるだけに、ロックなサウンド・テイストに誤魔化される事なく、その本質的な部分がより強調されて来るのではないかと思うのですが、 " 生きていて良かった " などと連呼しているくせに、どう聞いても、まったく全然ほんの少しも " 生きていて良かった " という感じが伝わってこないんですよね。

  " 生きていて良かった " と連呼するその裏には、どうしても " 死にたい " という " 生きていて良かった " という言葉とは裏腹な衝動を感じてしまうわけであります。

 私はどちらかというとネガティヴな傾向のある人間ではあるもの、生来、 " 死にたい " などという衝動とは縁がないタイプの人間であったため、どうしても " 死にたい " という衝動の裏返しとして " 生きていて良かった " と連呼しているこの曲に馴染めなかったわけであります。


 で、この記事を書くために改めてこの曲を聞き直していて驚愕の事実を発見した、というか、不覚にも、初めて気が付いたのですが、この曲では " 生きていて良かった生きていてよかった " などと連呼しているわりには、それに続けて " そんな夜を探している " だの " そんな夜はどこだ " だのと、なんかとんでもない事を言っていたんですね 叫び


 実は、この曲って、実は全然、そもそもからして、まったく " 生きていて良かった " ことなんてなかったわけであります。

 この曲の歌い手は、口では " 生きていて良かった " などと言いながら、その実、常に心の中では " 死にたい " と叫んでいたわけなんですね。


 ある筋の話によれば、日本では自殺する方が大変多くいるそうなのですが、不治の病や緩和しがたい痛苦、重篤な身体欠損などといった特殊な事情にある場合を除いて、私には自殺する方の心境が理解の外にあります。

 なぜ彼らは闘わないのでしょうか?



筋肉少女帯 - 戦え!何を!?人生を!

 オーケンが歌うこの 『 戦え!何を!?人生を! 』 という曲には、死にたいと思うような環境の中にあっても " 死んでたまるか " とでも言うような気概が満ち溢れているような気がしますし、これこそが本当のロックと言うものであるように思えます。


 そして、今まで私は、そのようなロック ( かそのルーツとなったブルース ) しか正しい道はないものと思っていて、ポップスなどは単なる娯楽くらいにしか思っていなかったのですが、どうもそうとばかりも限らないようだという事に最近になって気が付きました。



Human Cube $$$millionアコースティックバージョン

 Human Cube というのは " ちょっとフシギでちょっぴり切ないキラキラポップ " というキャッチフレーズのポップス系の音楽ユニット ( ヴォーカルとギターのコア・ユニットにサポート・メンバーが状況によって合流するようです ) なのですが、上の動画の曲は 『 Smiles ( 購入は ⇒ こちら ) 』 というアルバムの冒頭に収録されているものになります。


 上の動画はアコースティック・ライブの模様を収録されて公開されているもののようで、アルバムに収録されているアレンジに比較して、バラード風といってもいいくらいにウェッティなアレンジに纏められているにも関わらず、まったくネガティブな波動が感じられません。


 この曲を聞いていると、 " あぁ、闘わなくても、そのままでも、幸せになれるんだな " とでもいったような多幸感に包まれてくるように思われます ( その感覚が正しいかどうかは検証していませんが…… 叫び ) 。


 " 退屈な毎日にさよなら 宇宙船に飛び乗って " だの " 昨日から口きいてないアイツにも 朝から笑顔になれるかも " だのといった歌詞を聞いていると、思わずピーク・エクスペリアンスな感じで目頭に青春の汗があふれてくるんですよね。


 『 深夜高速 』 も純粋に音楽的には悪くはないので、つい誘惑にかられて聞いてしまいがちなのではありますが、それよりは、 Human Cube の 『 $$$million 』 を聞いた方が、幸せになれそうな気もする今日この頃なわけであります。