さて、マダム mi-co 嬢こと Human Cube のヴォーカルを務める mi-co さんが発見し、オカルト女子会の第十八夜にて公開された 《 マダム mi-co のメビウス・ダンス 》 について引き続き考えてみることにしたいと思います。

 オカルト女子会では、オカルトではない現実派の政清さんのみならず、オカルトにガチ嵌りな渋沢嬢にまでドン引きされてしまった 《 マダム mi-co のメビウス・ダンス 》 なのですが、これが実は存外と理にかなった発想ではあって、その原理に基づく身体訓練法が、早稲田で心理学を学んだという坪井繁幸さんという方によってすでに前世期に提唱されていた、ということには前記事にて触れたところであります。

 その際には、オカルト女子会の第十八夜を久々にライブで堪能したばかりで、発掘の手が間に合わなかったのですが、前記事で紹介した 『 黄金の瞑想 』 における思索と試行をさらに深める形で発表された作品がこちらの 『 メビウス身体気流法 』 という本になります。

メビウス身体気流法
坪井繁幸 著 『 メビウス身体気流法 』 ( 平河出版社 / 1985 年 )

 この本の副題はなんでも 「 生命の混沌と生成 」 と言うものらしく、なんとも早稲田出身のインテリさんは難しい事を考えるものであります ( 同書の著者略歴によれば、1939 年生まれの坪井さんは、心理学を専修して早稲田大学の第一文学部を卒業されている、とのことです ) 。

 同書の中身をパラパラとめくってみると、 「 華厳経からルーベンスへ 」 だの 「 聖フランシスとヒトラーのあげた手 」 だのと、なにやら訳のわからない小難しそうな小見出しがたてられていたりして、あぁ、二十世紀のオカルトの人たちって、こうやって眉間に皺を寄せながらお洒落なワードをちりばめつつ世界を語る事で悦に入っていたのだなぁ、と感心させられる一方で、当時のオカルトらしく 《 ピラミッド・パワー 》 に対する言及もあったりと、なんとも微笑ましく感じたりもします。

 なんでも著者たちはピラミッド・パワーの実験として、 " 人体でピラミッドを作ることを行ってい " た ( 上掲書 p.214. ) ということで、ピラミッドのポーズと称する姿勢をとると、 " ピラミッド・パワーの探究者たちがいうように、たしかに高さの三分の一のところにあたる腹中に、熱いエネルギーが体感され " ( p.214. ) 、その実験に参加した方の " なかには昼間五分、そのピラミッドのポーズをとったその夜興奮して眠れなくなる人もい " ( p.214. ) た、というほどにエネルギー効果が確認された、とのことであります。

 それはともかく、そんなバリバリなオカルトを、時にニーチェだのリルケだのというお洒落なカタカナ・ネームをアクセサリーとしてちりばめつつ、世界だの " 生命の混沌と生成 " だのといったインテリなトークとして纏め上げられたメビウス論が、まったく同じメビウスから着想されたものであり、その帰結としてもまったく同じ動作を語っていながらも、現代ではオカルトなノリでケラケラ笑われながら語られているわけであります。

 これは、ある意味で、なんらかの呪縛からの解放でもあり、やはり、眉間に皺を寄せるようにして語るよりは、ケラケラと笑いながら語った方が、なんか自然な感じを受けるというのは一人私だけではないのではないでしょうか。

 また、同書では 「 <メビウスの環>は物質を変換させるか 」 ( 上掲書 pp.205 - 212. ) と称して以下のような実験が提示されていました。

    気流法ボディテスト12
  1. 水道の水を、手ごろなビン(水を容れて振りまわせる重さのものがよい)に容れ、きっちり栓をする。
  2. メビウスの環状に<やわらげ>で何回も回わママす。一秒に一往復、つまり状に一巡するくらいの速度で数分、あるいはもう少し、なれてきたらもっと速度をましてもよい。(218頁の片手の舞。以下同様)
  3. 水道の水と、この水を味わい比べる。
 これまでの数年、のべ千人近くの人に公開実験したところによれば、八〇~九〇%の人がともかく味の変化を感じている。
( 上掲書 pp.207 -208. )

 ……。

 もちろん、著者自身もこの " 気流法ボディテストは実験としては厳密さに欠ける " ( p.207. ) と逃げを打ってはいるものの、逃げを打っときゃ免罪される、というものでもありません。この著者の " ボディテスト12 " なるものが、まったく科学的な実験の態をなしていない事はあきらかで、本当に " <メビウスの環>が物質を変換させる " 力を持っているという可能性を示すためには、もっと科学的な実験計画というものを考える努力というものが不可欠と言うべきでしょう。

 この著者は、その努力を明らかに放棄されていて、それは私にとっては、いかにも悪い意味でイカサマなオカルト師たちと同列の指弾を受けるべき言動をとっている、と言われても仕方ないように思われます。

 本当に<メビウスの環>の物質に対する影響力を確認しようとするのならば、まずはそもそもとして、容器に水を容れて栓をした際の容器内における水と空気の比率を、目測値程度としてでも複数のものを用意し、なおかつ、動きとして状だけではなく、垂直方向の直線や水平方向の直線、円環状などという複数のものを比較対象として用意しなければ、それはアマチュア・レベルとしてさえ、科学的な実験としての態をなすものとは成りえません。

 さらに、専門家レベルでは、もっと複雑な条件設定が考えられるかもしれませんが、それについては私は科学の素人なので想像もつきません。ただ、それでも、迷信から脱して文明開化された近代社会に生きる社会人として、上に述べた程度の実験計画は常識として普通に思いつくわけであって、その程度のことさえも思いつかなくなってしまっているインテリ崩れの姿を見るにつけ、 ( 早稲田大学に入れるほどの高 ) 偏差値のオカルトに対してなんと無力な事かと嘆息することしきりといった感じでもあります。

 それを、なんかお洒落なカタカナ言葉で飾り立てて、世界のパラダイムを捉えなおすかの如きをシャレて見せるインテリのなんと胡散臭い事か……。

 この書が発売された当時の本の帯には " 21 世紀の身体の可能性を拓くメビウスの環 " と銘打たれていたのですが、当時からすでに 30 年以上が経過した 21 世紀のリアルな現在、このメビウスの環は、私たちの身体の可能性を拓いてくれたのでありましょうか……?

 ……、って、あれ はてなマーク

 などということをつらつらと書き連ねてみたものの、なんか、まるで、オカルト批判派の文章を読んででもいるかのような錯覚が ( 叫び ) 、書いている本人である私自身でさえもしてきてしまいました。

 が、私はもちろん、当然にバリバリのオカルト肯定派です。

 世界の裏に秘匿され、闇の底に隠された真実に光を当てるオカルトこそが、世界を救うのであり、 『 月刊ムー 』 こそが、真実を報道する世界で唯一のメディアなのですから。

 今度の休みには、久々に発掘した坪井さんのこの書を持ってスタバにでも出かけ、マキアートをサカナにしながら、ちょっとアンニュイな気分でこの本を読み直してみようかと思います。

 スタバのマキアートも、メビウスの環状にブンブンとぶん廻したりしたら、さらに味わいがグレード・アップしたりするものなのでしょうか…… ( 叫び ) 。

 って、もちろん、私は、スタバでマキアートを 「 メビウス・パワ~~~ !! 」 などと叫びながらブンブン振りまわしたりするほどに自由な人間ではありませんし、 「 メビウス、メビウス…… 」 などと小声でブツブツつぶやきながら、マキアートにかざした掌を八の字状に動かしてみたりするほどに怪しい人間でもありません。なぜなら、精神世界は正しい常識の上にこそはじめて成立し得るものなのですから。

 さぁ、みなさんも気流法ボディテストをやって、メビウスの環の力と作用とを、その自らの身でもって実感してみてください !!

 そして、それが実感できたならば、マダム mi-co とともにメビウス・ダンスで世界を解放しましょう。
☆☆☆ [2017年5月20日 19:26 追記] ☆☆☆


 なんか、今この記事を見たところ、『メビウス身体気流法』の表紙の写真が削除されてしまっていたようです。この写真は私が所蔵している本の表紙をスキャンしてその画像データをアメブロにアップロードしたものなのですが、なにか装丁家さんの権利侵害とかにでもなるのでありましょうか?

 出版社や著作の著作権者から権利侵害の訴えがあったとも考えずらく、可能性としては装丁家さんあたりかなとも思うのですが、いずれにしろ何か問題があったものか、私に対する警告や連絡は何もなかったものの、アメブロの運営さんの方で強制的に排除なされたもののようであります。