さて、先月には越法ネタのせいか、はたまた洩天機な内容の動画紹介記事のせいかは定かではないものの、アメーバ運営のなんらかの陰謀(誤操作)という暴挙によって当ブログへのログインをブロックされてしまっていたのですが、それもようよう、知人に依頼してアメーバ運営の脆弱なブロックをハッキングすることに成功して、再び記事をエントリーする事が可能となりました。


 ただ、そんな災難に見舞われてしまったというのも、洩天機な記事や越法なエントリーをアップしようとしたが故と反省したうえで、ちょっとひよって今回は久々に 『 HONKOWA 』 ネタをいくつかエントリーしてみようと思います。


  今号の 『 HONKOWA 』 2015 年 11 月号は、二枚看板とも言うべき玲子さんや視っちゃんさんの漫画は掲載されていないにも関わらずいつにもまして充実しているのですが、そんな中、 『 ほん怖 』 が発行主体を移行させてお洒落に 『 HONKOWA 』 としてリニューアルしてから、看板漫画の一角としての存在感を発揮してきたホラー漫画の帝王とも呼ばれる永久保さんが実在の霊能僧侶に取材した実録漫画 『 霊験修法曼荼羅 』 ( 霊能僧侶・慈童物語 ) がとうとう今号掲載分で最終回を迎えてしまいました。


 慈童物語こと 『 霊験修法曼荼羅 』 に対して当ブログでは、若干の距離をとった上で斜め横から眺める立ち位置をとってきたのですが、さすがに最終回のこの話は 『 HONKOWA 』 連載陣のトップバターを務めるにもふさわしく、大変に興味深く読ませていただきました。


 とくに、諸尊の擬人的な感情表現の仕方が永久保さんならではというか、大変に面白くもあり、まぁ、そこは永久保さん曰く " 本当はもっと怖い話なのですがなるべくなごやかに描きました シャレにならんので " ( 『 HONKOWA 』 2015 年 11 月号 p.50. ) ということなのですが、その “ シャレにならん ” 話は実際にただいま絶賛発売中の 『 HONKOWA 』 本誌を購入したうえで熟読していただく事として、ここでは少し話をさかのぼらせて、単行本の第四巻に掲載されていた話について触れてみたいと思います。


 それは、通算で第二十一話となるもので、 『 HONKOWA 』 本誌では 2014 年11 月号に掲載された話でのものになります。


 この話において永久保さんは、慈童物語修行編とでも呼ぶべきストーリーにいったん区切りをつけた上で慈童さんに対して、 " 密教僧が護摩を修するときに観想している世界をマンガにさせてください " ( 第四巻 p.181. ルビは省略 ) とお願いした、ということで、そこからおよそ 26 ページにわたって、慈童さんが不動息災護摩を修する様子が永久保さんによって描かれているわけでありますが、この件について慈童さんご本人は永久保さんの単行本第四巻に寄稿された巻末の 「 愛縁奇縁 」 において次のように語られています。


" その話の後に続く護摩の観念。最初、永久保先生に「やってみたい」と、お話し頂いた時に「やっていいのだろうか」と、少し躊躇ちゅうちょすると共に「きっと我々僧職のためにもやった方が良いだろう」と、先生にかなり苦労して頂き出来たお話しです "


" 我が友人の密教僧 「 K師 」 はこの漫画を 「 密教僧啓蒙けいもう;の書 」 と言って下さる都合上こういう話を載せるのも良いのかなあ…と、思っています。それは我々僧職の問題になるのですが、密教に関しまして「 面授口決めんじゅくけつ [ママ] 」でいろいろと教えてもらいます。 ( 中略 )
実際江戸期のもので 「 観想図 」 はある程度残っているのですが眼にする機会が割となく…。こういう漫画ならきっと観念に役立てて下さるだろうと…。僧職の読者も多いようなので。"

『 霊験修法曼荼羅 』 第4巻 巻末 ( 頁表示なし )

 ……、あの、ツッコミどころはいろいろあるのですが、永久保さんのオカルト漫画を " 「 密教僧啓蒙の書 」 " とのたまっているという " 密教僧 「 K師 」 " って、いったいぜんたい、どこのどなたなのでありましょうかはてなマーク


 このK師なる謎の人物が、 『 HONKOWA 』 に掲載されていた永久保さんのオカルト漫画を、啓蒙の書だと、しかもそれは私たち一般の在家に対する啓蒙ではなくて、密教僧に対する啓蒙の書である、とおっしゃっている、と少なくとも慈童ご本人さんはおっしゃられているわけであります。


 こんな、漫画としては面白くはあったとしても、それは所詮はオカルト視点での描写であるものにすぎないにも関わらず、それを密教の専門家であるはずの密教僧に対する啓蒙である、と断言しているわけであります 叫び


 そんな、オカルト漫画に啓蒙されてる密教の専門家って、……、とほほじゃないですか ドクロ


 ただ、まぁ、それはそれとして、慈童さんがそんな永久保さんのこのオカルト漫画に対して " 密教僧啓蒙の書 " としての機能を期待して協力したという一つの理由が、どうやら密教修法の際における観想のあり方を示した観想図のご紹介という点にあったらしく、そんな慈童さんが " 江戸期の 「 観想図 」 " とおっしゃられているものの一つなのかと思われるものの一例としてこんなものがありました。



地結
《 地結 》 観想図


大三昧耶図
《 大三昧耶 》 観想図


 密教修法に際しては、一般に ≪ 結界 ≫ と呼ばれる作法が実践されることになるのでありますが、上の図はそんな結界として行われる所作・観想の内から 《 地結 》 と 《 大三昧耶 》 と呼ばれている段の観想を図案化したものになります ( もっとも、江戸期のものかどうかは定かではありませんが w ) 。


 密教の修法においては、そのそれぞれの段において、身密として手にはそれぞれの印を結び、語密として口にはそれぞれの真言をお唱えした上で、意密として心において上の図のような内容を観想・イメージするわけであります。


 ちなみに、上の 《 地結 》 は永久保さんの漫画において 《 地固め 》 と呼ばれているものになり、 《 地結 》 のことを天台では、というよりも慈童さんの流派では 《 地固め 》 と呼んでいるのかもしれませんが、そのような呼び方をしている事例は永久保さんの漫画ではじめて耳にしました ( 意味としては確かに地堅めでしょうが…… ) 。


 いずれにしろ、上にご紹介したような古来から伝わってきた観想の図案が、永久保さんの筆を経ると下の図のような感じに表現されることになります ( 正確には、下図は四方合結途上の図なので上の二つの図が合っした状態で、まったく同じ状況・段階ではありませんが… ) 。



大三昧耶図-漫画
『霊験修法曼荼羅』第四巻 p.187.


 あるいは、ご本尊様に迎車をお送りする観想に関してはまた、こんな図が伝承されています。


送車図


 そして、これが再び永久保さんの手を経ると下の図のようになるわけですね。


送車-漫画版
『霊験修法曼荼羅』第四巻 p.187.


 確かに、こういった絵というか図があった方が観想もしやすい ( …、とは言ってもそんな即物的に観想すれば良いというものではないのではないかとは思いますが、それはそれとして、その ) 上に、古来からそのような図案が伝承されてきた事も事実としてはあるものの、密教の専門家だというならば、こんな一般在家のホラー漫画の読者に向けて書かれた漫画なんかに啓蒙なんかされずに、自分で専門書の一つでも探して勉強しろよ、と言いたくなってしまうのは、一人私だけではないのではないでしょうか?


 そんな、自分で文献を調べることもできず、本当の意味において正しい伝授を受けることもなく、名前ばかりの阿闍梨となった密教僧なるものが、口を開けば “ 在家の分際で… ” だの " 在家のくせに… " などとふんぞり返っているわけでありますね。在家向けのオカルト漫画に啓蒙されてる程度の専門家でしかないくせに……。


 まったくもって情けない限りではありましょうが、それもそれとして、おそらく永久保さんは、それこそ漫画の専門家として密教を描くに際して様々な文献を調べてゆき、その中で、ここでもご紹介したような古来から伝承されてきた様々な観相図などを見つけて、それをマンガとして表現したい、と考えるようになって、それが作品として結実したものが 『 霊験修法曼荼羅 』 の第二十一話におけるこの一連の護摩修法の描写、という事なのでありましょう。


 確かに永久保さんの漫画は ( 永久保さんが初歩的な勘違いをしてしまった上で描かれているような描写もあるものの ) わかりやすく描かれていて、素人でもそれを読めば密教の坊さんが護摩の修法の際にどんな事をしているのかがよくわかるかとは思うのですが、いずれにしろ、密教僧がそんなものに啓蒙されてんじゃねぇ~よ ドクロ


 と、いうことで、まだまだ、 『 HONKOWA 』 2015 年 11 月号には 《 影御前 》 や 《 かやちゃん 》 が登場している上に 「 スピ☆散歩 」 は屋久島編の後編に突入し、さらには、 「 オカ万 」 が最終回を迎えるという怒涛のラインナップが続いていますので、それらについてはまた日をあらためてエントリーしてみたいと思います。