さて、前回はマユリーナこと山本まゆりさんの作品を一気に三本も同時掲載するという破格の待遇を見せた 『 あな怖 』 の最新号についての感想を述べさせていただいたところなのですが、今回は 『 あな怖 』 の発売元から出版されているマユリーナの単行本の方をご紹介させていただきます。
それがこちら……。
- 誤診はここからはじまった……
- ( 第1話 ) 予兆
- ( 第2話 ) 発覚
- ( 第3話 ) 手術
- ( 第4話 ) 回復
- ( 第5話 ) ダイエット格闘記
- 教えて石井先生!
ドタバタ闘病対談 PART・1 - 教えて石井先生!
ドタバタ闘病対談 PART・2 - あとがき
『 せんせい誤診です! 』
( 山本まゆり / ぶんか社 / 2013 年 )
マユリーナが一時、脳腫瘍という深刻な病気による闘病を余儀なくされながらも無事にその闘病生活から復帰され今に至るというのは、多くのホラー・コミック・ファンの知るところかとは思いますが、その闘病記を一冊にまとめたものがこちらになります。
私もホラー・コミックをよく読む方ではあるものの、それほど熱狂的なファンというわけでもなく、生来それほどアクティブな方でもない関係から、熱心なファンの方々によるネット上への書き込みによって、噂としては知っていたものの、この闘病記が雑誌に掲載された際にはついにその実物を立ち読みする事さえできていませんでした。
それが一冊の単行本としてまとめて出版されたという事で、ようやく私もマユリーナの闘病の記を目にする機会に恵まれたというわけであります。
まずは恐るべき誤診の連鎖のはじまりについて巻頭カラーのサービスページにおいて語られるのですが、それは、生理が半年もない状態が続いたマユリーナが訪れた産婦人科の受付で、処方されてもいない謎の薬を渡される事からはじまったとの事であります。
マユリーナを診察した医師からは薬はない旨の説明を受けていたものの、受付で薬を渡され、その際の説明に従ってその謎の薬を膣内に塗布したマユリーナは悶絶せんばかりの激痛に襲われたという事であり、そんな恐るべき医療過誤とでもいうべき事態の出来をプロローグとして、医者の誤診をかさねながらも、ようやく判明した謎の体調不良の正体が脳下垂体腫瘍であったわけでありました。
そんな深刻な病とその深刻な病が判明するまでの謎の体調不良とあわせて闘病するマユリーナを襲う母親の病気と死、並みの人間ならどれだけ心が折れるかわからないような困難な状況にも関わらず、その困難を乗り越え、そんな体験さえも作品として昇華させてしまうあたりには、やはり大御所の貫録を感じてしまうところでありましょうか。
ホラー・コミック・ファンに限らず、ごく普通の方々にもふつうにお勧めする事のできる一品となっていて、ぜひのご一読をお勧めいたします。