さて、国難の時代の幕が切って落とされたかの如き昨今の国際情勢に鑑み、四大の調和を図るとともに霊的国防体制の強化を所願としたリトリートにかまけている間に時は経ち、夏の奇数月もはや過ぎて、さらに街はすでにお盆はおろか八月さえも終えてしまったようであります。


 いつもならばここで 『 HONKOWA 』 のレビューで記事を一本エントリーするところなのではありますが、どうも 『 HONKOWA 』 を採り上げると[][]でコソコソと蠢いているアンチ三巳華のちんぴら一派が粘着してきてしまうようですので、ちんぴら一派が調伏されるまでは 『 HONKOWA 』 ネタはお留め記事扱い ( 完全非公開 ) 、という事にいたしました。


 という事で今回は、我らのマユリーナこと山本まゆりさんが “ ついに描き下ろしで 初登場!! ” するという 『 あなたが体験した怖い話[あなこわ] 』 の方をご紹介する事にしてみます。

    『 あな怖 』 2013 年 9 月号 お勧めリスト
    ( 原文のルビは省略 )

  1. 山本まゆり 「 心霊旅行 ポルトガル編 」
  2. 山本まゆり 「 マユリーナの心霊日記 ~その1~ 」
  3. 山本まゆり 「 マユリーナの心霊日記 ~その2~ 」
  4. まんが・小林薫/監修・斎 「 石の記憶 」
  5. まんが・日辻彩/監修・島津成晃 「 霊界案内ABC 」
  6. 貴芝昌子 「 厄災の夏 」 ( 読者投稿 )

 まず、今回の 『 あな怖 』 で何が凄いかというと、巻頭を飾る “ 初登場!! ” な描き下ろしを含めて山本まゆりさんの作品が一気に三本も同時掲載されているというところでありましょう。


 これの何が凄いのかというと、このマユリーナ三部作のためだけに私は今号の 『 あな怖 』 を買ってしまったほどで、全国各地に同様の事態を巻き起こしているのではないかと推測するところなわけでありまして、このマユリーナ効果によっておそらくは 『 あな怖 』 の今号の売上は大きく押し上げられた事は確実と思われます。


 そんなマユリーナの 『 あな怖 』 デビューな最新巻頭作は、拾い物が大の得意として知られるマユリーナが女一人でツアーに参加してはるばるポルトガルから拾ってきたお土産の顛末について描いた「心霊旅行 ポルトガル編」。


 マユリーナといえばイタリアと相場が決まっているのに “ 何故にポルトガル? ” と訝しむ読者の存在はすでにマユリーナにとっても想定内で、物語はなぜマユリーナこと山本まゆりさんがポルトガルなどへ行かねばならなかったのかという謎を解き明かすところから描き始められています。


 実は今をさること数年前にマユリーナは、とあるヒーラーの先生からポルトガルとの因縁を指摘されていて、それをきっかけに過去の自分の体験を思い返してみたところ、なんとすべてポルトガルに帰着するという驚愕の事実を発見した、というのでありました。


 そんな経緯を経て、マユリーナはポルトガルへのツアー一人旅を決断したということなのでありますが、そんな一人ツアーの旅先でマユリーナを待ち受けていたものは、なんとも曰くありげな 《 テンプル騎士団のフィギュア 》 であります。


 《 テンプル騎士団 》 といえば、黒い鳥の秘宝を伝えたことで知られる聖ヨハネ騎士団と並び称される騎士修道会の一派で、その莫大な財産の蓄積が災いして 14 世紀の初頭、時のフランス王フィリップ 4 世の策謀によって入会の儀式において男色[ソドミー]行為に耽っているだの、[アンチ]キリストの誓いをしているだの、はたまた悪魔崇拝主義者だのなんだのという容疑をでっち上げられた上に異端審問にかけられ、最終的には異端者の汚名を着せられてその資産をすべて奪い去られるという末路をたどった悲劇の結社として知られている、であります。


 異端審問という以上は例のごとくに、異端信仰を 《 告白 》 するまでは拷問の限りを尽くしていたぶられた事は言うまでもないわけであり、そんなこんなないきさつまでが込みコミで、拷問の限りを尽くした上での異端告白の自白調書に基づいた財産没収に火あぶりの刑という悲惨な末路をたどった彼らの、無実の人間による強姦告白の自白調書をみごとにでっちあげて現代日本における刑事司法の場において、実際はまったく無実の人間に対する有罪判決とその無実の人間に対して下された有罪判決に基づく刑の完全執行という暴挙を見事なまでに勝ち取って見せた富山県警のごとくに、その罪状の数々をでっち上げた当時のフランス国王の傀儡どもに対する怨念がいかばかりかは、推測するにあまりあるものがあるだろう事は言うまてもないところでありましょう。


 そんないかにもな怨念話を持つのが何あろうテンプル騎士団なわけであり、そんなむちゃくちゃヤバそうな曰くを持つテンプル騎士団のフィギュアに目をとめたマユリーナは、憑き物覚悟でそれを購入した上で日本へと帰国したというのですから、マユリーナのお転婆ぶりはハンパないとでも言うべきところなのでありましょうか。


 憑き物覚悟でそんな曰くつきなものをテーマにしたフィギアをお持ち帰りした以上は、当然それなりの現象がマユリーナを襲うというのは必定で、そんなお転婆ホラー・コミック作家マユリーナが体験したあれこれと、今回は実在の霊能者である玲子さんではなく天使の助けを借りてその危機を脱した顛末が絶妙なタッチで描かれています。


 しかも、そのイワク憑きなフィギィアは、今も ( 下北沢にあるクロニクルというマユリーナの知り合いのショップに ) 実在して、私たちがそれを目にする事も可能らしいということであります。


 一方、そんないかにもマユリーナといった 「 心霊旅行 ポルトガル編 」 に対して 「 マユリーナの心霊日記 」 は、無類の猫好きとしても知られるマユリーナの愛猫にまつわる諸々のお話を描いた短編になります。


 ここでは古くからのマユリーナ・ファン、というか私には非常に深い印象を残した 「黒衣の聖母マドンナ 」 というエピソードにおいて、ホラー・コミック業界においては日本最強とも言われる実在の霊能者・寺尾玲子さんの活躍を世に知らしめる伝道者としてのマユリーナに対して、無謀にも心霊戦争[サイキック・ウォー]を仕掛けてきた某新興宗教教団の女教祖の呪詛から、かつての飼い主マユリーナを守る為に、この世での務めを終えてアストラル界でオカルト・ポリスと化したマユリーナの愛猫が舞台裏で活躍していた、というこぼれ話や、猫のみならず犬も飼っていたマユリーナの実家において、犬を飼っておきながら犬を冷遇して猫ばかり可愛がっていたマユリーナの元に、死んでから猫に生まれ変わる事によってマユリーナの寵愛をほしいままにする事によって、猫としての生涯を終えた際には満足してとっとと成仏してしまったという元犬の愛猫エピソードなどが披露されています。


 実は 『 HONKOWA 』 においても、今号からなにやらペットがらみの心霊漫画が掲載されているらしきもののそちらにはどうもなじめない私なのですが、そんな私でさえ、やはり大御所ならではの安定感というものでありましょうか、マユリーナの心霊日記は何故か素直に読めてしまうという今日この頃なのでありました。


 さて、そんな大御所マユリーナの肩の力を抜いた小品を堪能した後は、中堅どころの新キャラとして最近ホラー・コミック・マニアの間で話題になっている 《 実在のドS霊能師 》 さんの活躍を斎さんという方 ( この方が 《 実在のドS霊能師 》 ということらしいです ) の監修で小林薫さんが描いた 「 石の記憶 」 を堪能させていただきました。


 小林薫さんといえば、 『 HONKOWA 』 では 《 影御前 》 シリーズで安定した作品を発表されている中堅どころの作家さんなわけでありますが、その本道シリーズとはまったく別なシリーズとして 『 あな怖 』 が得意とする 《 落下傘コミック 》 (※)のシリーズとしてかなり好評のうちに連載されているものがこの 《 ドS霊能師 》 シリーズということになります。

(※) マユリーナの寺尾玲子シリーズや小林さんの影御前シリーズのような、作家さんの個人的な友人・知人を主人公霊能者として描かれた実話系ホラー・コミックに対して、稲葉朋子さんを描いた 『 神々の密談 』 や 『 前世ヒーラー 』 などのように、作家さんのもともとの友人・知人でなく、雑誌編集部から紹介された霊能者などを主人公として描かれた実話系ホラー・コミックのことを私は 《 落下傘コミック 》 と呼んでいます。

 本編の内容自体はさして目新しいものというわけでもなく概してありがちなストーリーではあったものの、主人公のキャラを立てる事によって読み応えのある一篇となっていて、しかも、主人公のキャラを 《 ドS 》 からいわゆる 《 ツンデレ 》 路線へとシフト・チェンジしようとしている片鱗も見られ、今後の展開が見逃せないところなのではないかと思います ( しかもこのキャラは稲葉さんの場合にならってか来号においては、流水りんこさんを起用しての複数作家による競作が試行されるようでその点も要チェックですね ) 。


 ほかにも、 『 あな怖 』 のエンタメ担当漫画とも言うような 「 霊界案内ABC 」 や、読者投稿を原作として作画された 「 厄災の夏 」 なども今号ではおすすめでありました。


 そんなこんなな 『 あな怖 』 なわけではありますが、来号においてはあの稲葉朋子さんが、七色虹子さんという新たな作家さんによって久々の登場となるようで、それもまた今から楽しみな限りなのでありました。

 

 さて、最後に、こんな内容のエントリーをアップする以上は、やはり一言くらいは触れておかなければならない事件が、消費者庁によって秋田書店に対して行われた 《 景品表示法違反(有利誤認)に基づく措置命令 》 でありますが ( → ここ とかこちら など参照 ) 、なんと言いましょうか、もとから私はああいった読者プレゼントや商品キャンペーンに伴うプレゼントのたぐいはまったく信じていなかった方なので、その私の読みが事実によって裏付けられてしまったという意味で残念でもありながら、むべなるかな、といった感じの事件でありました。


 なんらの利害関係もない立場ではそれ以上でも以下でもなく、また、いまだ確定していない事実関係 ( 内部告発者への対応 ― 参照 ― など ) の争いがあるようではあるものの、それについては、こんなところで言及しても栓ないことではあり、ただただ裏切る事なき因果の理法が現前せん事を祈願するのみであります。


 が、それにしても、今回の事件で名前の挙がった 『 ミステリー・ボニータ 』 と言えば、われらが巨匠・永久保さんの 「 カルラ舞う 」 が連載されている雑誌であり、マニアとしてはなんとも微妙にどんよりとした空気を感じざるを得ないところではありましょうか。


 H師匠支持派の私としては、アンチ永久保―H師匠勢力のように、これをもって永久保さんやその周辺の能力者を誹謗しディスったりしようなどとは微塵も思わないものの、永久保さんの 「 カルラ舞う 」 シリーズほど掲載誌の安定しない長期シリーズというものも珍しいのではないかとは思われ、なんとも 「 カルラ舞う 」 シリーズの持つネガティヴパワーの凄まじさには驚嘆するばかりであります。