さて、前回 ( の記事はこちら ) は日本において魔女術[ウイッチ・クラフト]を学ばんとする門外漢が、まずは目を通しておくべき入門書として、現代日本におけるポップ・オカルト界の重鎮たる鏡リュウジさんの若き日の秀作 『 魔女術[ウイッチクラフト ― 都市魔術の誕生 ― 』 をご紹介させていただいたのですが、今回は同じジャンルではありながらも、ややマニアックでもう少しレアなネタをご紹介させていただくことにします。


 若き日に魔術の世界の深奥を覗かんとして精神の均衡を失い、ついには果てしなく続く生存競争[サバイバル・レース]にも走り疲れ、家庭や仕事はおろか神秘行さえも投げ出し自ら隔離病棟へと[]ってしまったさる痴人、ではなくて知人アイツから譲り受けたコレクションの中から発掘した逸品がこちら……、になります。


ドワンのブログ@アメーバ-GCJ創刊号
『 グリーン・サーキュラー・ジャパン 』
Vol.1 ( 1993 年 冬至号 )

 これは、今でも一部の事情通の間においてのみ極めて密かに語られる、かつて日本に実在したと噂される伝説の魔女宗系秘密結社[サークル]グリーン・サークル・ジャパン 》 なる組織 ( ちなみに、当人たちはこの組織を “ 団ではない ” と口をすっぱくして主張しています ) が極秘に発行していたと伝えられる秘密文書[会報誌]のレプリカであります。


 《 グリーン・サークル・ジャパン 》 とは 《 GREEN CIRCLE 》 なる魔女宗系秘密結社[サークル]の日本支部としてレシュアインなる二人の魔女 ( 各敬称略 ) が結集して、本邦において魔女宗の普及を図るために結成された秘密組織 ( 叫び ) であります。


 同会のこの機関紙創刊号秘密文書に掲載された「 GCJ のこれまで 」 および同誌巻頭の 「 GCJ [ママ]動開始 」 によるならば、 《 GREEN CIRCLE 》 とはイギリスにおいて、 “ 多数の著作を著して精力的に活動しているオカルティスト ” である “ マリアン・グリーン女史の手によって創設 ” された “ 西洋密儀伝統を研究する人々のための連絡・交流機関 ” であって、 “ 魔術師や魔女あるいはカバリストといった違いは関係ありません ” ということだそうであります。


 創刊号であるこの号では、このサークルの性格や運営サイドの運営ポリシーについて述べる記事を主としながらも、ご祝儀記事として[]の大魔導師・秋端勉氏による 「 祈りの形而上学 」 なる難解な寄稿なども掲載されるという大変に充実した内容となっているようです。


 ちなみに、この創刊号に続く Vol.2 にいたっては未製本ながらも二分冊で発行され、そこにはかつてレシュ、アイン両氏とともに活動しながらも 『 グリーン・サーキュラー・ジャパン 』 発行以前に方向性の違いから袂をわかったというオーライガ氏 ( AURIGA 、後の楠瀬啓氏 ) の寄稿記事や、日本国内で結成された TZ 系魔術結社とも言える H∴G ∴S∴ の儀式次第を公開する “ 爆弾 ” 記事、さらにはそれに関連して、かなり言葉を濁した上での大魔導師・秋端勉氏による魔術界の裏話の暴露記事などが投稿されたりと、かなり意欲的な情報公開活動がなされていた様子を窺う事が出来ます。


 さらには、グリーン・サークル・ジャパンの面々が秋端勉氏の I∴O∴S∴ や O.T.O. などと合同して季節の儀式を行うなどかなり活発な活動をおこなっていた様子をうかがう事もでき、実践面においても当時のグリーン・サークル・ジャパンが活発に活動していたらしいことを知る事ができるでしょう。


 ところが、スター・ルビーの儀式を写真付きで公開する旨の予告をしたまま同会は長い冬眠状態に入ったらしく、件の知人が収集した噂やネット上の書き込みなどを総合すると、レシュとアインという二人の魔女が共同で始めたグリーン・サークル・ジャパンという秘密結社は、後にエーディンという新たな参加者を得たものの、わずか三人での方向性の調整をする事さえもできずにサークルの構成員間で複雑な確執が発生してサイキック・ウォー状態に陥ったらしく ( その詳細は現在も不明のままではありますが ) 、第三号の会報を発行する前にグリーン・サークル・ジャパンは空中分解した上に、関係者の一人は全身を奇病に侵されての闘病生活を余儀なくされて人間失格な廃人としての末路を辿った、と噂されているという事であります ( 但し、噂の真偽のほどについては保証できかねます ) 。


 おりしも時はオウム真理教による日本史上に空前絶後のテロ事件が勃発するという時期にさしかかってもいたらしく、どうやら魔女宗の日本進出を本邦土着の諸神が快く思われなかったものか、彼女らの活動は本格化する以前に雲散霧消してしまう結果となってしまったわけなのではありました。


 そんなある意味で仇花的なところが感じられなくもないグリーン・サークル・ジャパンではあり、その会報秘密文書ではありますが、その中身は今読み返してみても充分に学ぶべきところのものがあるのではないかとも思います。


 もっとも、誌上魔術師ペーパー・マジシャン高野氏の振る舞いについての暴露話やなにやらは、当時 Boo だのムー、あるいは TZ などというオカルト雑誌に目を通していたという爺や婆でないとまったくの意味不明なものとなってはしまうのではないかとも思われ、今時の若者の心の琴線に触れるかは定かではありませんが、まぁ、それもまた楽しからずやという事ではありましょう ( …、というか、さすがにこの秘密文書類は今から入手する事は不可能でしょうから、そもそも爺や婆以外の今時の若者にはまったく関係ない話ではありますが ) 。


 ちなみに、このグリーン・サークル・ジャパン崩壊に伴うサイキック・ウォーの生き残りのある魔女は、その後なんとも麗しき美魔女として再生した上で様々な著作活動を展開するとともに、 『 ムー 』 で連載を持ったりするという復活を遂げた、らしいというのも、いったいどんなコリアン・マジックを使ったものかと一部のオカルト・マニアの間では話題になっていたという事であります ( あるいはにちゃん用語でいう単なるパネ・マジなのかもしれませんけど、ね ) 。