さて、前回は 《 Majyocco Sabbath 》 なるなんとも怪しげ ( 叫び ) にして魅惑的なイベントが来たる四月某日の夜に都内某所において開催されるらしいという極秘情報を、我が身の危険をも顧みずにお知らせしたところなのではありますが、今回は 《 魔女[Majyocco] 》 のなんたるかについてあまりなじみのない方々が、来たるべきその日にそなえて予習するのに最適な一書をご紹介したいと思います。


 それが、こちら……。


ドワンのブログ@アメーバ-都市魔術の誕生
魔女術[ウイッチクラフト ― 都市魔術の誕生 ― 』
( 鏡リュウジ / 柏書房 / 1992 年 )

 この書は、[]の 『 HONKOWA 』 にて連載中のオカ万こと 「 オカルト万華鏡 」 においても紹介されていた現代日本におけるポップ・オカルト界の重鎮たる鏡リュウジさんが、かつて若かりし頃に本場の魔女術[ウイッチ・クラフト]を体験すべくイギリスへと渡り、とある魔女の主催するウイーク・エンド・ミーティングに参加した際の記録と、魔女術[ウイッチ・クラフト]の歴史的な展開の過程やそれらの実践に関する初歩的な知識とをコンパクトにまとめた一冊であります。


 業界人ではない私たち一般の門外漢は、とかく魔女などというと “ 魔法使いのおばあさん ” ていどの認識しか持たないものなのですが、事はそれほど単純ではないようでもありまして、そもそも魔女には魔と言いながらも女の魔女と男の魔女がいるなどというところから私たちは学ばなければならないようでもあります。


 生命の樹と呼ばれる神秘的な象徴体系を中心としたカバラ的な知識の伝統を基盤とした上で、そこにエジプト神話などをも取り込む事によって近代以降に再構築された教義に基づいて、比較的に集団による神楽的な神秘儀礼の執行を中心として構成される儀式魔術を実践する魔術師に対して、キリスト教以前の地母神崇拝的な古代宗教の伝統の流れを汲む者として魔女術[ウイッチ・クラフト]を実践する者を定義する事によって近代的な魔女[ウイッチ]という概念が発明され、さらにそこからキリスト教以前の地母神崇拝的な古代宗教の伝統を異教主義[ペイガニズム]として再定義することによって、より広範な新異教徒[ネオメペイガニスト]としての魔女[ウイッカン]が生み出されるとともに、やがて、男の魔女と女の魔女とから構成される牧歌的な世界観に支えられた古典的魔女宗を否定し、女性メンバーによってのみ構成され男性を排斥する先鋭で極めて攻撃的な政治性を基盤とするフェミニスティックな魔女 ( 日本のカルチャー・スクールにおける講座などに巣食っている自称魔女はこの類の方々のようです ) の登場によって再び魔女の世界は昔ながらの “ 魔法使いのおばあさん ” というイメージへと止揚される事になっているというのが現代のようではあります。


 いずれにしろ、そんなこんなな魔女の誕生から現在にいたるまでの変遷と、その実践における基礎のさわりの部分を予備知識を必要とせずにかつキャッチーに知る事ができる逸品がこの 『 魔女術[ウイッチクラフト ― 都市魔術の誕生 ― 』 というわけで、この方面に興味をお持ちになられた方はぜひ一度手にとってご覧になってみてはいかがでしょうか。