Changes in My Life
古い話にはなりますがその昔、大藪春彦さんというハードボイルド作家さんがいまして、その方の代表作の一つとして知られたものに 『 蘇る金狼 』 というものがありました。
これは松田優作さんの主演で映画化もされ、その後にはジャニーズ・タレントさんによってテレビ・ドラマ化されたりもしているので、今の時代の人でもかろうじて知っている方もいるかと思います。
私はジャニーズ・ドラマの方はよく知らないのですが、松田さんによって映画化された際の主題歌となったのがこちらのものになります。
今になって、この前野曜子さんの 『 蘇える金狼のテーマ 』 という楽曲を聞いてみると、演歌やニュー・ミュージックと紙一重のところがなきにしもあらず・・・、かな、かなという感がしなくもないのではありますが、しかしながら、その紙一重の差が千里の差でもあって、その紙一重で分かたれた両者はあたかも直線とその漸近線のごとくに決して交わる事はない事になるわけなのですね ( こちらの歌詞を見ながら聴いていただくと感慨もひとしおかと思います )。
今の時代に改めて聞きなおしてみると、ヴォーカルも決してシャウトしているわけではないし、アレンジもかなり抑えておとなし目に纏めてあるように思え、今の時代に新たにもっとハードなアレンジでシャウトして欲しい・・・、ような気がしなくもないのではありますが、おそらくは、シャウトしていないところが良いところなのかとも思います ( それでもギターくらいは電気的にディストーションさせて暴れさせても良いような気はしますけど、ね ) 。
そもそも原作 ( 大藪春彦さんの 『 蘇る金狼 』 ・・・の方、ね ) の立場から言っても、それは決して演歌に堕するようなものとは致命的な違いがあるわけなのですが、その違いは安易な言語化を峻拒する孤高の境地とも言うべきもので、さすがの松田優作さんもそのあたりの微妙な消息を理解する事ができなかったらしく、映画版の 『 蘇る金狼 』 のラストは極めて陳腐なものとなってしまってはいました。
まぁ、あれはあれで一つの見解だと言うこともできなくはないのかもしれませんが、あの辺りがアメリカン・ニュー・シネマ的な思想に傾倒しすぎていた松田さんの表現の限界だったのかな、かな、と残念に思った事があったりなかったりもする複雑怪奇な思い出であります。