世界を股にかけて活躍するダルマ・ビジネスマンにして、世界最大級のダルマ・コレクターとしてもよく知られている方にソギャル・リンポチェさんとおっしゃられるチベット人ラマがいらっしゃいます。


 この方はゾクチェンパとして日本でも知られていて、講談社からはその著書が 『 チベットの生と死の書 』 として翻訳出版されてもいます。


 仏教の世界で説かれていることでもよく知られているカルマというものは恐ろしいもので、このリンポチェ様は過去世で一体どれほどの功徳を積んできたのか、と思わず呻ってしまうほどに恵まれた家に生まれ、恵まれた環境で育ったいわゆる筋金入りのボンボンであるようでして、ガキの頃から名だたる大ラマの寵愛を一身に受けて我がまま放題に育ったまさにゾクチェンパの見本のような方としても知られている方であったりもしています。


 さる来日講演の折りには、当時日本国内で出版されたばかりの自著の売り上げが芳しくない事がいたくご不満であったようで、日本語もさして分からないくせに翻訳が悪いと訳者の ( 内の一人がいる ) 目の前でさんざん日本語翻訳の悪口を言いつのり、あげくには本の装丁も気に喰わないとまで言い出して、版権を買い戻して別な出版社から出版しなおすことも今後検討するとまで言い出す始末ではありました( その後その話がどうなったかは、一オーディエンスでしかなかった私の与り知らぬところではありますが・・・ ) 。


 「 ここは引用だから英語版ではわざわざイタリック体にしてあるのに、日本語版ではイタリック体になってない 」 のがけしからんなどと、日本語を理解する者からすればわざわざイタリック体などつかわなくとも明白に引用である事が理解可能なレイアウトにまで検討はずれのイチャモンをつけはじめるほどで、そのあまりの口汚い非難に対して日本人の一般オーディエンスの中からは 「 そんなことはありません。私はとっても素晴らしい翻訳だと思います・・・ 」 などという、まぁ、心の拗ねた私などからすれば発泡スチロールをこする音を聞かされるような擁護発言をする方が出てくるほどまでの罵りようで、ソギャル・リンポチェという方はそれほどまでに誰の目も一切気にする事なく自由奔放にして我がまま放題かつ傍若無人にふるまうことがごく当然なほどのゾクチェンパなのであって、それは、ごくごく幼いガキの頃から、名だたる大ラマたちからゾクチェンの最極秘法の数々を含めたありとあらゆるダルマ・コレクションの伝授を欲するままに受けてきたが故、という事なのでありましょう。


 ・・・、で、そんな恵まれた環境に育った世界有数のダルマ・コレクターであり、それ故にダルマに対しては厳しい目利きでもあるソギャル・リンポチェさんも密かに参考にしていると言われている禅の本がこちら・・・ ( ここまでの話は前振りです・・・ 叫び ) 。


ドワンのブログ@アメーバ-禅の心
鈴木俊隆 著
『 禅マインド ビギナーズ・マインド 』
( 2010 年 / 株式会社サンガ )

 ちなみに、帯の写真はこの本を推薦されている佐野元春さんで、著者の鈴木さんという方とはまったく関係ありません・・・。


 ・・・、てか、佐野元春ファンで注意力散漫だったりする奴だったら勝手に勘違いして買ってっちゃうだろうし、そうでなくとも、事情を知らずに書店の店頭でこの本が平積みされていたりするのをチラ見したら、おそらくは 「 佐野元春が禅の本を書いたのか はてなマーク 」 とおもわず思ってしまうのではないか・・・、というような宣伝帯が何かを訴えかけてくるようであります。


 まぁ、私は別に佐野元春さんのファンでもなんでもないので別に構わないというかあまり関係ないのですが、こんな帯の宣伝効果で売り上げも多少は違ってくるものなのでしょうね。


 ・・・。


 anyway ・・・、というかそれはさて置き一部では、というか、一時は 「 チベットの禅 」 などという紹介のされ方がしたりしていたこともあるチベット仏教ニンマ派 ( とボン教 ? ) の秘奥義ヅォクチェンではありますが、そんな経緯からか生粋のゾクチェンパたるソギャル・リンポチェさんも日本の禅には多少興味があったらしく、講演の際にこの本に言及されることなどもあったりしたようであります。


 ソギャル・リンポチェさんの人間性についての議論はひとまず置くとしても、ごく幼いガキの頃から名だたる大ラマの寵愛を受けて数々の秘法の伝授を欲しいままに受けてきた世界有数のダルマ・コレクターであればこそ、その研ぎ澄まされた目利きには信を置くべきところがあるのかとも思い、書店の店頭でこの本を目にするや思わず手にとってレジ・カウンターへと向かってしまいました。


 この本の著者の鈴木俊隆さんという方は西洋の仏教マニアの間では結構知られている方らしいのですが、それにしても、佐野元春さんをして 「 僕は待っていた 」 と言わしめるほどの本ではあるようであります。


 てか、ソギャル・リンポチェさんなどという怪しげなチベット人ラマの言葉よりも日本人には佐野元春さんのこの一言の方がよっぽど宣伝効果はありそうですね。


 買ってきたばかりで正直なところ中身はまだ読み終わっていないのですが、パラパラとめくってみた印象では意外と良さげな感じがしています。


 鈴木老師がアメリカ人の弟子たちを前にして行なった法話の録音素材から文字起こしをしたもので、鈴木老師が直接筆を取って書いているわけではない、という点で、その内容は多分にアメリカ人の弟子たちの思考フィルターを通したものになってしまってはいるのだろうな、とは思われるものの、所詮は私たちも現代っ子でしかありませんので、そのくらいの温度がちょうど良いのかな、などと思わなくも無かったりもしています。


 基本的にこの本は、一応は 《 お推め本 》 として紹介していますので、書店で見かける機会があったら手にとって御覧になった上でぜひご購入を・・・、とお勧めいたします。


 文字数もそんなに多くない上に、アメリカ人相手に行なわれた法話を引用の出典とかも一切調べないままにただ和訳しているだけみたいなので、逆に今時の日本人には読みやすい仕上がりになっているのかな、とも思います ( なんか如何にもニューエージにやっつけた感じの翻訳のようにも思わなくもありませんが、まぁ、いちいち出典なんか調べていたら割りには合わないでしょうからやむを得ないとは言うべきなのでしょうか・・・ ) 。