ついに 7 月も終わって 8 月に入ってしまった今日この頃ですが、それでも大丈夫、 『 ほんとにあった怖い話 』 2010 年 9 月号はとりあえず発売中であります。


ドワンのブログ@アメーバ-ほん
『 ほんとにあった怖い話 』 2010 年 9 月号
( 朝日新聞社 / 420 円 )

 今月号では 『 ほん怖 』 の金看板とも言うべき 『 まゆりの恐怖報告ショックレポート 』 はお休みのようで、その代わりという感じでもないのでしょうが永久保貴一さんによる玲子さんもの 『 永久保異聞 闇の考証 』 が掲載されています。


 この 『 闇の考証 』 シリーズは、 『 カルラ舞う 』 というシリーズで一般にもよく知られるとともに、かつて現代の怪談界の帝王とも言うべきあの稲川淳二さんの最強の恐怖ネタである < 生き人形 > を漫画化した事によっても知られ、さらにはほん怖編集部によって < ホラーの帝王 > とも呼称される程の超有名ホラー漫画家である永久保貴一さんが寺尾玲子さんとタッグを組んでの < 検証系実話ホラー漫画 > で、 『 闇・検 』 打ち切り後の朝日新聞社版 『 ほん怖 』 で過去に 2 本ほどの作品が発表されていて、第三弾となる今作では邪馬台国の卑弥呼をテーマとして様々な霊的考証に取り組んでいるみたいです。

  1. 永久保異聞 闇の考証
    平安の政争・薬子の変 ~ 」
    ( 『 ほんとにあった怖い話 』 2008 年 11 月号 )
  2. 永久保異聞 闇の考証
    古都・奈良 血統と権力の争い ~ 」
    ( 『 ほんとにあった怖い話 』 2009 年 9 月号 )
  3. 永久保異聞 闇の考証
     謎と伝説の女王 ~ 卑弥呼を追え!!
    ( 『 ほんとにあった怖い話 』 2010 年 9 月号 )

 第一作目では桓武天皇の息子である安殿親王あでしんのうの絡んだ < 薬子の変 > をテーマとして考証を行い、第二作目では玲子さんに加えて現在は玲子さんの弟子的な立場でもある雨宮あまみや視子みこさんが合流して < 永久保 - 寺尾 - 雨宮 > トリオによって、桓武天皇や早良親王の母親でもあり寺尾玲子さんの検証によって < サイキッカー > であったとされた高野新笠をメインテーマとした ( 霊的 ) 考証がなされていました。


 過去の例に倣うと、どうやらこの 『 闇の考証 ( 闇・考 ) 』 シリーズは年一ペースという長期スパン連載の予定なのかもしれませんね。


 ちなみに、寺尾玲子さんとか雨宮視子さんというのは < 実話系恐怖ホラー漫画 > 雑誌の老舗である 『 ほんとにあった怖い話 』 という隔月刊コミック誌に不定期連載されている漫画に実在の霊能者として登場する < 実話系恐怖ホラー漫画 > 業界においては全国区な知名度を得ている < 実在する > 霊能者さん、らしいです。


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 さて、今回の考証では “ 伝説の邪馬台国やまたいこくはどこにあったのか ” と銘打ち、邪馬台国九州説と邪馬台国畿内説とで百家争鳴する中から特に邪馬台国畿内説を想定して奈良県は桜井市の纒向まきむく遺跡 ( 纏向との表記もあり )の考証へと赴かれたようであります。


ドワンのブログ@アメーバ-考証No3-5
永久保異聞 闇の考証
 謎と伝説の女王 ~ 卑弥呼を追え!!
( 『 ほんとにあった怖い話 』 2010 年 9 月号所収 )

 この纒向まきむく遺跡という遺跡群に含まれている ( というかそのすぐ近くにある ) 箸墓はしはか古墳という巨大な前方後円墳が、 ( 3 世紀半ば以降という ) 推定建造年代やその規模の巨大さなどから近年になって卑弥呼の墓ではないかとして話題を集めているところに 『 ほん怖 』 編集部が目をつけたらしく、 『 ほん怖 』 の女性編集長 ( 2ch ではダミー説もあるようです ) がやたらと邪馬台国論争に決着をつける、という事を強調しているところがちょっと怖かったりもします。


ドワンのブログ@アメーバ-考証No3-1
同上 p.24.


 上の絵柄になんか永久保先生のそこはかとない悪意を感じなくも無いような気がしますが、それはたぶん私の気のせいでしょう はてなマーク


ドワンのブログ@アメーバ-まきむく遺跡
Google Earth より


 グーグル・アースの表示では、箸墓はしはか古墳とは別にその近くに纒向まきむく遺跡があるようにも見えますが、箸墓はしはか古墳を含めたこの辺りの全体が纒向まきむく遺跡としても扱われているみたいです。あまり詳細な事情は知りませんが。


 作品冒頭では邪馬台国とそれに纏わる論争について予備知識のない一般読者のために、ボケ役の担当編集者マッチャンさんを使ってその概要を要領よく纏めて示した上で、玲子さんの希望で箸墓はしはか古墳からスタートして箸墓はしはか古墳に戻ってゴールする、というプランが示されます ( 後でこれが大きな瑕疵となってしまうなどとはこの時点では読者を含めた一行の誰一人として想像さえもしていませんでしたが ) 。


 この箸墓はしはか古墳は、公式には宮内庁によって第 7 代孝霊天皇の皇女である倭迹迹日百襲姫命 ( やまと・ととひ・ももそ・ひめの・みこと ; 『 古事記 』 では夜麻登登母母曾毘賣命、 『 日本書紀 』 では倭迹迹日百襲姫命または倭迹迹姫命 ) の墓として管理されているのが現状なのですが、それにも関わらずこの古墳を卑弥呼の墓ではないか、とする説も有力なものとして世間で喧伝されていたりもしているわけですね。


 この皇女の名前の中に出てくる < 迹迹日 ( ととひ ) > というのは < トトビ ( 鳥飛び ) > という意味で、そこから倭迹迹日百襲姫命という方は、鳥が飛んでいくように霊魂が身体から遊離する事によって力を発揮する脱魂型のシャーマンだったのではないか、とする説もあるそうです ( → ウィッキ参照 / 上田正昭 『 神婚伝承の展開 ―三輪の神をめぐって― 』 昭和 51 年 ) 。


 玲子さんの今回の検証によれば、この箸墓に眠る方は刺青のある女性のシャーマンで権力者でもあったという事で、さらに特筆すべき事としてこの箸墓のシャーマンさんは 「 セクシャルな呪術を使う人 」 なのであって、 「 行為の最中トランス状態になって神託をおこなうタイプ 」 なのだそうであります 叫び


ドワンのブログ@アメーバ-考証No3-2
同上 p.42.


 まぁ、 「 行為 」 というのは言うまでもなく < 行為 > 即ち < 性行為 ドキドキ > の事らしく、彼女は殿方 ( とは限らないのかもしれませんが、いずれにしろ行為の相手方 ) と行為を行なう事によって ( 脱魂し ) トランス状態に入る事によってなんらかの霊的な能力を発揮していたという事のようで、そのために、即ちその霊的な威力を封じるために性行為を象徴する下腹部を二本の槍で刺されて殺された・・・、という事のようであります。


ドワンのブログ@アメーバ-考証N03-3
同上 p.42.


 唖然・・・、というかドン引き ( はてなマーク ) する取材陣一同・・・。


 玲子さんも大胆な事を言うようになってきましたね。


 こちら のエントリーでご紹介している単行本の表紙に描かれた若かりし頃の少女のような姿の玲子さんが懐かすぃのであります ( あの少女がこんなはしたない事も平気で口にするオバさんになってしまうなんて・・・ ドクロ ) 。


 いずれにしろ、今回の考証の対象を一覧にすると下のようになっています。

箸墓
古墳
刺青の女性
シャーマンで権力者
二本の槍で下腹部を刺され殺される 収穫の
占い
ホケノ
古墳
若くて綺麗な女性
( 刺青なし )
サイキッカー
呪術的封印の為に肩をはずされ納棺 雨を操れる
石塚
古墳
男性 この地の大王 ×
勝山
古墳
女性 高貴ながらも普通の人 ×
檜原
神社
豊鍬とよすき入姫が
初代巫女
( 崇神天皇の娘 )
ホケノ系の巫術を踏襲 ×
桜井
茶臼山古墳
男性 大王 ×
西殿塚
古墳
女性
最強の霊能者
箸墓に敵意を持つ ×
行燈山
古墳
馬に乗った
カリスマ的な王者
× ×


 初日は箸墓古墳 → 纒向ホケノ古墳 → 纒向石塚古墳 → 纒向勝山古墳と回った後で最後に檜原神社を訊ねて宿にチェック・インしての反省会。


 ちなみに、檜原神社というのは、宮中に祀られていた天照大神を崇神天皇が移して祀った神社で、崇神天皇の娘である豊鍬入姫がその初代巫女を務めたという事であります。


 二日目は桜井茶臼山古墳 → 西殿塚古墳 → 行燈山古墳という順番で計三つの古墳を回ったのですが、この内の西殿塚古墳では、玲子さんがこれまでにたことのある過去の霊能者の中でも最強なのではないか思われるという謎の存在とコンタクトする事になったようです。


 ところが、この謎の存在が、今回の一連の霊的考証の為に玲子さんが纏った箸墓古墳の気の主に対してあまり快い感情を持っていなかったという事で、それ以上の深いアクセスは出来ずに終わってしまったらしいです ( この辺がなんか後日に話を引っ張りますね ) 。


 今回の考証内容の詳細は直接 『 ほん怖 』 を読んでいただくこととして、今回の考証の結論としては、上の方でも触れたように世間では箸墓古墳が卑弥呼の墓ではないかとの説もあるのですが、 「 箸墓古墳は卑弥呼ひみこの墓ではありません! 」 という事のようであります。


ドワンのブログ@アメーバ-考証N03-4
同上 p.59.

 のみならずに、玲子さんによって < セクシャルな呪術の使い手 > にして ( 穀物の ) 収穫占いをするシャーマンでもあったと霊視された箸墓の人は崇神天皇によって殺されていた ( 叫び ) という霊的事実が判明したらしいです。


 さらにいろいろな考証の結果として 「 つまり纒向は卑弥呼の女王国と狗奴国くなこくの戦いが終わった後の国 」 、 「 大和朝廷誕生の地です 」 という結論が得られたみたいなのでありました。

ドワンのブログ@アメーバ-闇考3-6
同上 p.61.

 という事で、邪馬台国畿内説は 《 闇の考証特別チーム 》 の厳密な < 霊的 > 考証によって完全に否定されることとあいなったわけなのではありますが、この合計 48 ページほどの ( 霊的 ) 考証漫画のストーリーを参考にして図書館あたりで様々な参考文献などを漁ってみたりもしつつ、ちょっとした古代のロマンに思いを馳せてみる・・・、などという自主的な夏休みの自由研究をしてみるというのも、変わった趣向の夏のすごし方として楽しいような気もする今日この頃なのでもあります。