以前の記事 ( → こちら ) で久しぶりに本棚の奥から森川久美さんの 『 蘇州夜曲 』 ( 1981 年 / 白泉社 ) を引っ張り出して読み返した話をしましたが、その際に一緒に発掘された本がこちら・・・、麻城 ( まき ) ゆうさんの 『 反風水師 誕生 』 になります。


ドワンのブログ@アメーバ-反風水師誕生
麻城ゆう 『 反風水師 誕生
( 1993 年 / 中央公論社 )


  『 反風水師 誕生 』 が発表された 1993 年の当時にライト・ノベルというジャンルや名称があったかどうかは知りませんが、現在ならばおそらくはほぼ確実にライト・ノベルに分類されるだろうなという感じのファンタジー・ノベルで、 < ブルー・ペガサス・マンション > という都会の高級マンションに暮らす自然とそりの合わない自然嫌いな風水宗家正嫡である土岐忍 ( とき・しのぶ / レッド・ペガサス ) と、その隣室に越してきたファンタジー系の漫画家・朱雀きらら ( ピンク・フェニックス ) の二人を中心に展開される物語で、その内容は東洋的な風水伝奇物語に止まらず、特撮戦隊ヒーローあり、怪獣アクションありとまさに奇想天外なストーリーに仕上がっています。


 風水宗家継承者として稀有な天賦の才を持ちながらも、自然を愛することができない ( 虫が大嫌い、泥も細菌だらけだから大嫌いである ) が故に自然に愛され自然を味方につけなければならない風水における限界を反風水というメチャクチャな理屈で乗り越えるレッド・ペガサスこと土岐忍。


 このレッド・ペガサスのデビュー作となる本作では、土岐忍とは対照的に自然に愛され自然を味方とする事のできる幼い少女・山井さやかと、そのさやかを騙して ( 自身の経営する自然食品チェーンの多店舗展開というかなりせこい ) 自己の欲望を達成するための道具として長谷川倫子が引き起こした様々な天変地異事件をレッド・ペガサスとピンク・フェニックスが解決して、山井さやかをレッド・ペガサスの実家である風水宗家に引き取るところまでが描かれています。


 エコロジーなイメージを悪用して多店舗展開する事によって利益を上げている長谷川倫子が経営する自然食品チェーンの実態は、二酸化炭素による地球温暖化のデータを捏造した実在の白人研究者をもある意味で彷彿とさせ、エコロジーなどというものを主張する勢力のいかがわしさや怪しさを作者が意図してか意図せずにか感じていたのではないかとも思えるのですが、当時からすでに十年以上が経過してしまったレッド・ペガサスやピンク・フェニックスのいない現実の世界においては、悪の結社=自然食品チェーン < なちゅらる > がすでに世界を裏から牛耳ってしまっているようにも思われる今日この頃ではあります。


 『 とある科学 』 と違って ( 少なくとも私は ) キャラ萌えしたりはしませんでしたが、別に涙や感動やキャラ萌えがなくても基本設定やストーリーは面白いので、それだけで充分に楽しめるのではないかと思います ( 細かいところではちょっと 「 ・・・はてなマーク 」 なところもあったりはしますが ) 。


 現在は絶版になってしまっていて復刊リクエストが出ているようですので、もし興味をもたれた方は投票されて復刊された本書を手にされてみては如何でしょうか。


 復刊リクエストの投票はこちら → 復刊ドットコム