チッタゴンでのスター気分のミーティングも終り、日も傾いてきた頃、アラム氏から

「ダッカに帰る前に、晩ご飯食べておこう」

ということで、チッタゴンエリアの責任者(彼の従兄弟)と共に車に乗せられ、着いてみるとどうやら「中華料理店」

「ふ~ん…バングラの人は中華好きなの?」
「そうね、よく食べる。」(お金持ち階層だけだろうなぁ)

で、薄暗い店内(演出ではなく、電力事情で)に入ると、「効かせようという努力」だけは認めてあげたいエアコンと、芳ばしい(=ごま油を使っている)揚げ物の香りがする。

席についてメニューを見ると、全部ベンガル語(ま、仕方ないよ、田舎だもの…)

「俺、読めないからお任せしますよ」

「ミスタ24時は何が食べたい??」

この問いかけに、普段は滅多に思いつかない(=日本では高くて無意識に抑制されている)『酢豚』がアタマに浮かび、

「ス…」まで言ってハタと気付いた。

…いっけねぇ。このヒト達、豚はご法度だっけ。

慌てて「…ブタ」を飲み込んで、
「ス…スープの麺類と、料理を2つくらい、シェアしない?」
とお誘いしてみると、

「良いね。いつもそのようにして食べているよ。」

との事で、15分後には

ワンタン
チャーハン
酢鳥(ご想像通り)
野菜炒め

の4品が、テーブルに並んだ。

まずワンタンね、
ビーフコンソメスープに、鳥のひき肉で作ったワンタンが浮いている。香味野菜とネギ(タマネギスライス)も少々。
妙な組み合わせだが、味は中々マッチする。

でもね、ワンタンの皮がいただけない。

お昼に食べた「ナン」の粉の配合をそのまま薄くして、餡を包んだでしょ?って感じ。
これは24時、自ら厨房に行って教えてやろうかと思ったくらい。

…ここのシェフ、恐らくタイかマレーシア辺りに出稼ぎに行き、中途半端にモディファイされた中華料理を覚えて帰り、だんだんバングラに合せて再モディファイしてるんだろう…と想像する。

面白い事に「化学調味料(≒味の素)」の味がしないことに気付く。

…あ。そか。無理もない『あんなに高い調味料は使えない』んだ。
個人的に、24時は味の素を「絶対に」料理には使いませんので、あの味がしないことに、かえって安心しました。
そう!あなた達はあんなモノ使わないでも、新鮮な食材を豊富に持っている!!

チャーハン。
コイツは料理人の「ウデ」と言うより、外米の特性で「パラッパラ」。ここにも味の素は使われておらず、シンプルで美味い。
食べ進むうち、
「細かく角切りにされたチャーシュウ発見か?!」
と思いきや、ちゃんと「ビーフ」でした。
いわば「極小サイコロステーキチャーハン」と言った趣き。
でもホントに美味かったよ。

酢鳥。
ご想像通り、酢豚の鶏バージョン。
本場の中華料理にもあったっけ?!
但し、から揚げにする鶏肉は「モモ」にして欲しかったナァ。
手羽元を揚げて甘酢で絡めてあって、それなりに美味いんだけど、どうしても本家の酢豚と比べてしまう。
肉を噛んだ時のあの「ジュワ」っていう食感が欲しいな。

…でも、コチラのヒトはホンモノの酢豚って、宗教上の理由で、産まれてこのかた食べた事ないだろうから、しょうが無いといえば、しょうがねぇか。


野菜炒め
これがオッカシイんだ。
チャーハンをあれだけパラッパラにできるのに、なんで野菜炒めがベチョベチョになっちゃうのかな?
「最大火力で最短時間」は野菜炒めの鉄則でしょ?
これも、味は(味の素入ってないから)まあまあなんだけど、この味付けするなら、野菜はサッと油通しして、中華スープをベースにとろみをつけて仕上げた方が、美味しいよ…


なんぞといろいろ考えながら、完食。

「食後のスイーツは如何かね?」と誘われたが、結構腹一杯。

しかも、6時間の帰りの道中、「イッヒ・フンバルト…」のリスクを増大させるだけだし、出てきた料理から推測するに、「杏仁豆腐」は99.99%の確率で「ココナッツミルクをゼライスで固めてある」と読んでいたので、丁重にお断りした。

でもね、土地柄「杏仁」は採れると思うんだ。
真面目に新鮮な杏仁からキチンと作ったら、日本でもそんじょそこらじゃお目にかかれないような、美味しい杏仁豆腐が出来上がるに違いない。
うん。間違いない。


24時は旧職在籍時、仕事でイギリス(エジンバラ)を訪問した際、どの国に行こうが頑なに日本食か中華しか食べない上司に付き合って、
『金輪際、2度とお目にかかりたくない中華』
を食べた。(エジンバラ城に隣接するホテルで紹介された店だった。ホテルに戻ってから独りでバーガーキングに走ったのは、言うまでもない。)

その店より、遥かにず~~っと美味かったよ。

ご馳走様でした!y(^ー^)y
デコボコハイウェイ(広域農道だってば!)と格闘する事6時間、ようやくチッタゴンという港町に到着。

バングラディッシュのメインポートで、輸入も輸出も、大部分がこの港から出入りします。

24時の今回の訪問目的は、魚に関連するある素材を購入する事。

従って、所謂「港町」に向かって、車はズンズン入って行く…

大きい通りから、チョットでも細い所に入れば、そこはもう、舗装なんてどこ吹く風、グッチョグチョの泥道の連続。
しかも雨期。

そこを、車もリキシャも人も牛も渾然となって歩くもんだから、かなり丁寧に耕されてしまいます。
(アラムさんが日本車の、それも4WDにした訳がやっと解った)

「清潔感のある服装で…」なんて、色気出したわけじゃないけど、白いジーパンとカッターシャツといういでたちの24時、

「しまったよなぁ。どー考えても、ここは作業服若しくはツナギ+安全靴が大正解…(×_×;)」

道が細くなればなるほど、車内から道行く人たちと、目が合います。
初めは「お。外人だ」って興味で見られ、だんだん人数が増えて、低速でしか走れない車にゾロゾロ付いて来られる。
(^^)-(^^)-(^^)-(^^)-(^^)-(^^)-(^^))…こんな感じ。

到着した漁港で車を降りると、そうですね、チョットしたハリウッド・スター気分が味わえちゃいます。(^-^;)

車をグルッと取り囲む、人の輪。老いも若きも皆黒い。目だけ白い。

見回して、目が合った辺りに向かって微笑むと…

みんな、ニカッと笑って手を振ってくる!

それを四方に向かって繰り返していると、だんだん人の輪が小さく絞り込まれてくる訳です。ね?スターみたい。

これ、バングラ・ショックの2発目といって良いでしょう。
「人間がスレテいない」というか、「純朴」というか。

「敵意」「悪意」「排斥的」等と云う空気は一切感じられず、

「お、外人だ… チョット黒くて太ったアジア人だ。」
「お!お!手を振ったぞ!」
「お!お!お!笑ってるぞ!!コッチも手を振ってやろう」

そんなノリなんです。

チッタゴンの外国船が出入りする港なら、外人も珍しくないでしょうが、少々離れた漁村に外人がくるなんて、滅多にない事らしく、幼稚園児~小学生位の「怖いもの知らず」のチビどもは24時の足元までやって来て、珍しそうにヒトの顔を見上げている。

こちとら、現地のベンガル語も解りませんから、ニッコリすると、チビどもは嬉しそうにニカ~っと歯をむき出して笑います。
ヤツラはなんかゴチャゴチャ言ってるんだけど、コチラは解らないから、ただニコニコ。

ニカ~ (ナンだコイツ、どっから来た??)
ニコニコ(チビども、楽しそうじゃんか)
ニカ~ (なんか喋るかな?突っついてみようか!?)
ニコニコ(おいおい、その泥だらけの手で触らないでくれよぉ)
ニカ~ (デカイカバン持ってるな。ナニが出てくるのかな?)
ニコニコ(悪ぃな。チビどもが喜びそうな物、入ってないよ)

そんな「ニカ~vsニコニコ」の攻防中、アラム氏は地元の元締めとなにやら商談。
その間も、遠巻きになっていた輪がジワリジワリとすぼまってくる。

気が付いたんですが、子供達の笑顔に全く「貧困」という言葉が当てはまらない。
確かに、栄養状態はそんなに良くはなさそうだけれど、小さい子どもが数人、棒切れや漁で使う網の切れっ端を持ってキャーキャー笑いながら走り回っている。
この子達が「困っているように」は見えないんです。
小学校の低学年から、メガネ掛けてパソコンやゲーム機に夢中になっているアジアの端っこの国の子供達より、よっぽど健康的に見えてしまうんですが…

そんな事をぼんやり思っていたら、

「じゃ、ミスタ24時、コチラに…」

とアラム氏が歩く後ろについて行くと、人垣がササ~っと左右に分かれ、道が出来ていく。(う~ん。モーゼの出エジプト?(^-^;))

目的物(ごめん。具体的な名前は伏せる)が置かれた倉庫エリアにつくと、老若男女13~4人ほどでコンタミ(異物)除去の作業中だった。
24時のタスクは、このコンタミ除去と水分管理の指導、品質管理の手法を教え、今後の船積の予定、価格交渉などなど。

仕事の話は置いとくとして、倉庫エリアの2階にある事務所へ。

ここでも、後ろからゾロゾロついて来る。
「え?え?外人?どんな?どれどれ??」みたいな…

こじんまりとした事務所に入ると、早速お茶のサービス。
(このお茶が、「ミルクで淹れた紅茶」でとても美味しい。)

カップを手に取って一口つけると、別の人が入って来て、愛想良くミネラルウォーターとグラスを置いていく。「サンキュ」

「…じゃぁさっき見せてもらった現在の…」と話し始めると、
また別の人がクッキーを盛ったトレイを持って来て、これまた非常に愛想良く勧める。

「あ、サンキュ。 でね、コンタミの状況を見ると…」
と、また別の人がお茶のおかわりをニコニコしながら持って来る。

「あ、ドモドモ…」
入れ代わり立ち代わり。

ハッと気が着くと、開け放たれた入口のドアにびっしりと顔顔顔。
目だけ白い。

恐らく、いろんなものを盛ったトレイを持った人が順番に部屋の外に並んでいるんだろうナァ。
勿論、もてなしの心遣いでしょうが、「外国人を見てみたい」という好奇心の方が強いでしょ?あなた達…
可笑しいやら微笑ましいやら。
でもナカナカ商談が進まない。

でも、さっきのチビどもも、髭面の一見恐そうなオッサンも、サリーで半分以上顔が見えない女性達も、細いけれど筋肉質な若者も、みんな「好意的オーラ」を出している。

「こいつがオラッちのモノを買ってくれる」から?

違います。

もっと根源的な「好意オーラ」
みんな、素朴で良い人たちなんだ。

小一時間ほど、次々に出されるものを、失礼にならない程度に口にしながら商談してたので、6時間もシェイクされたお腹は既にいっぱい。
この状態でまた6時間も走ったら、途中で絶対「野性の呼び声」だよなぁ。
でもバングラも「紙で拭く」習慣がないため、田舎は当然のように「手で洗う」。これ、かなり抵抗がありますヨォ。
従って、小用は足せるものの、「イッヒ・フンバルト・ダス…」はホテルに帰るまで我慢する事を決意した24時なのでした。

(続く)
6時30分に出発し、「ハイウェイ(広域農道)」にシェイクされる事3時間30分、

「朝ご飯、食べよう」
(って、一応、ルームサービスで食べたんですけど…)

ということで、「ハイウェイ(広域農道)」沿いに建っているドライブイン 兼 ホテルに入る。

車から降りると尻がジーンとしている。

薄暗いが思ったより広いレストランに入ると、当然ながらエアコンなどなく、デカイ扇風機が天井で4つに1つの割合で回っている。


アテンドしてくれたアラム氏が
「伝統的バングラディッシュ料理を食べよう」と、色々注文してくれた。

「伝統的」という響きに、眠っていた食神様が起きだした。

ベタベタ・ネトネトしたテーブルになるべく手や肘を着かないようにして待っていると、来た来た。


…あの、これは「カレー」ですよね。
うん。カレーだ。野菜カレー、チキンカレー…数種類のナン。
全くの、カレー。…なぁんだ、カレー??


でもね、8割がイスラム教のこの国では、「牛を食べる」からかも知れないが…


はっきり言って、美味しい!!!


24時は仕事でインドも訪問し、現地のオリジナルカレーも食しましたが、インドのカレーよりはるかに美味い!
旨みとコクがあるんです。
ベジタリアンの多いインドと違い、バングラでは鶏、魚、牛を常に食べているので、スープベースの組成が違うんですね、きっと。

食べ方もインドと同じように、右手だけでナンと共に口に運びますが、もう1回言います。

これは、すごくおいしい!!!!

これが野菜もチキンも魚も、それぞれのマサラ(食材に合せたスパイス調合)で味付けされ、素材そのものの風味を残して、スパイシー。
今までかつて、「バングラのカレーって、旨いよ」と公言・宣伝した人がいただろうか!?
このレストランは街道沿いとはいえ、観光客目当てで営業しているような店ではないので、まさしく「現地そのものの味」と見て良いでしょう。

あ~美味しい。

この時点で、車内にカメラを置いてきてしまったことを後悔。
でも、見た目はフツーのカレーだし、以前写真を載せた国内のインド料理屋の方がきれいに盛り付けられているから、画像は参考にならないと思います。
むしろ、神経質な方は画像でお腹壊れるかも…

「このお皿、ホントにチャンと洗ってるかなぁ…」なんて感じさせるロケーションとシチュエーションではありますが、カレーが旨いんだから、一切お咎めなし!いいでしょう!って感じ。

前日に、クアラルンプールでバーガーキングを貪った自分の浅はかさを深く恥じました。

しかし、おいしい。

頬張ったナンにベロを取られ、カレーの付いた指を舐めながら、辛うじて
「インドよりはるかに美味いと思います。」
とコメントしたところ、アラム氏も同席した部長氏も気を良くした様子。

「じゃ、ミスタ24時、スイーツも試して下さい」

いい加減に腹一杯になったあと、薄いベージュ色に白玉のようなものが浮いたスープが出てきた。
トロリとしたスープに浮かぶのは、米で作ったニョッキのようなモチモチのオブジェクト。

恐る恐る口に運ぶと、ほんのりとした甘味が口内に広がる。

「!これは上品な甘さですね。」
「バングラのポピュラーな○○○○」です。(ごめん、名前忘れた)
「この甘味は、シロップかな?」
「いえ、材料そのものの甘さと、果汁が少し入っています。」
「素晴らしい!和菓子に共通する風味があります!」
「バングラは貧しい国なので、化学調味料や合成甘味料は、値段が高くて使えないんです…」と、恥じ入るような表情。
「いやいや、どんなにお国が裕福になっても、このレシピだけは変えない方が良いと思います。」

絶対、そう思う。
この一皿に、アスパルテームや赤1号なんて混ぜるのは、神への冒涜に等しいです。

白玉様のオブジェクトは、モチモチの食感の中にザラリと舌に残る繊維感。これは好きずきがありそうだな…。


ショックでした。
大変失礼ながら、「アジア最貧国」では料理も「大した事無い」って、勝手に思い込んでました。

天然素材のみで、しかも電力事情が良くないから、「作り置き」しない(…というか、冷蔵庫が不安定だから、保存できない)から、素材もその日に採れて仕入れたものしか使わない=使えない。
そのような調理環境で作られる味は、『すっごく贅沢』な訳です。

無論、このようなドライブイン~ホテルには、電気も来てるし、冷蔵庫もあります。
でも、「料理はその日に採れたものを使う」

…これって、基本中の基本ですよね。


確かに、貧富の差も激しい国なので、こんな料理を食べられない人達(国民)も、たくさん居るんでしょう。
その「ダークな部分」を差し引いたとしても、こんなに『贅沢な食事』を摂れるって、「貧しい」とは決して言えない。


敢えて、訊きたい。
薬品まみれで育成された素材を使って、冷凍保管され、電子機器と化学調味料で調理されたプラスチック箱入りのランチと、状況はバッチイけれど、このバングラのランチ、どちらが「リッチ」でしょう?


これが、バングラを見直してしまった、最初のショックでした。

あ~美味しかった!!
ハイウェイというには、あまりにもお粗末な路面状況だったので、舌を噛まないように、訊ねてみた。
(文中、「…」の部分は、車が跳ねる為にキチンと発音できない)


「このっ…デコボコ……な…直しゃ…っないの?」
「毎年少しずつ直してるよ。」
「少し…って?」
「例えば、毎年10km分の補修予算が出る。」
「…」
「予算が出た途端に、役人が上から順番に袖の下を取る。」
「!!」
「で、実際に工事できるのは1km分位しか残ってない」

「チョッ…ト待て…っよ?
この…ダッ…カからチッタゴンまで…道…路の距離にして300km近くあうっ…るのに、1年に…1kmずつ…っじゃ、300年もかかるん…しゃない!?〈-_-;〉」

確かに、所々、きれいな舗装になっている所がある。
でも、「路面メンテナンス」という概念は無いだろうから、3~4年経ったら、またデコボコハイウェイだ。

発展途上国にありがちな、役人の汚職は、悲しいかな、このバングラディッシュでも同じみたい。

「それが今のバングラディッシュの一番の問題なんだ」

と言うアラム氏の瞳が、遠くを見つめていた。

(つづく)
明けて7月26日、昨日の約束どおり、0610時に朝飯が運ばれてきた。
オムレツ・トースト・オレンジジュース・コーヒーのシンプルなウェスタンスタイル。

0600時に目覚めていたので、早速頂く。
オムレツ…ちゃんと美味いよ、うん。
トースト…普通に美味い。
コーヒー…ま、うん。いいか。
オレンジジュース…デルモンテかな?

で「宿泊費に含まれる朝飯をルームサービス」としては、上出来。

10分で朝飯を終え、ロビーに降りると既にアラムさんが待っている。

「よく眠れた?」
「お蔭様で、夢も見ないで…」
「君にはドリームはないのか?」
「いやいや、『すごく良く寝た』っていう表現だよ」
(あれ?寝起きで英語間違えたかな?)
「そうか。じゃ、行こう」

ホテルの前に出ると、彼の自家用車
「TOYOTA ラブ4(メタリックレッド)」
と運転手氏が待っている。
因みにこの国で「日本車を個人で所有している」って、とてもとても、とってもお金持ちの部類に属する。

うやうやしくドアを開けられ、後部座席に乗り込むと、これまた「もてなし」か、キンキンに冷えている状態。
うっかりすると頭が痛くなるほどの低温で、運転手氏が気を悪くしない程度に窓を開けて温度調節。
ハッと気がつくと、フロントガラスに大きなヒビ。
(実はこのひび割れが『バングラ・ドライブ』の真骨頂!)

「ひび割れてて、直さないでいいの?」
「うん。そろそろ買い換えようと思っているから」
「ふーん…『車検』なんて無いよね?」
「なにそれ??」
「いや、いいんだ。忘れて。」
ごめん。寝ぼけアタマで「車検」を英語で説明するのが面倒だっただけなんだ。

朝方、バングラの気温は30~32℃と日本とさほど変わらないが、湿度が高い為に、空気がネットリとまとわりついて来るように感じる。

0630時の早朝にも関わらず、道路は既に「通勤ラッシュ」状態で、人(車道に!)・自転車・リキシャ・オートリキシャ・普通車・バス・トラックがひしめき合っている。

昨夜は夜間で解らなかったが、ここの交通ルールは「早いモン勝ち」。
チョットでも頭を入れた方が先に行くんだが、皆「ミリ単位」で見切っており、「ぶつからない」。
日本人の感覚では背中がヒヤリとするような隙間に、クラクションを鳴らしながら入って行く。
尾篭な表現で恐縮だが、24時はダッカ市内を出るまでに4回くらい「尻の穴がキュ~ッと」した。

「すごいですね。皆運転上手なんだね」
「そう?」
「だって、ゼンゼンぶつからない」
「?? ぶつかったら大変じゃない!?」
「…ま、そりゃそうだけど、事故とか無いの?」
「滅多に無いよ」
「ふ~ん。ところで、チッタゴンまではどのくらい?」
「(ニヤリと笑い)だいたい6時間くらいかな…」
「そ…そう。」
この時点では信じていなかったが、アタマが目覚めてきて、うろ覚えのバングラディッシュの地図を思い出すと…
う~ん、確かにかかりそう…(^-^;)

10分も走ると、ダッカ市内を抜けてしまう。

「ここからは、ハイウェイだから」

と説明を受けた道は、どうやってひいき目に見ても「広域農道」。
一応、舗装はされてはいるが、デッコボコの悪路。
舗装道路というよりは、「ダート」に近い。
走る音は「ロードノイズ」なんて可愛いもんじゃないの!!
ン~ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!
ヘタに喋ると舌を噛む。(英語の「th」なんて絶対発音できない!)
油断すると、鼻水落ちる。
腹の周りの脂肪が、だんだん下に落ちるんじゃないかと…
(申し訳ないが『痔主』の方には、無理!!)
これが「日本車じゃなかったら…」なんて、想像もしたくない。

その状態の道を、やはり自転車・リキシャ・オートリキシャ・普通車・バス・トラックが「かっ飛ぶカッ跳ぶ」!
ゆっくりなのはヒトと牛だけ。…時々山羊も。
我々を乗せた「ラブ4」も平均130km/h位ですっ飛んでいく。

ダートを130km/hで、しかも絶えず追い越す、あおる。
車を追い越す時も、人を追い越す時も、牛を避ける時も、スピードメーターが100km/hを下回る事が無い。
2重3重追い越しはアッタリマエ。センターラインが無いから、対向車線にはみ出る事も、アッタリマエ。
それも、ダッカ市内と同じように、ミリ単位で避ける。

これが6時間も続くって、背中に流れた汗と、すぼまった尻の穴の状態を通り越して、真面目に「命の危険」を感じる。
(…ヤバイ。今回は渡航保険かけるの忘れてるんだよなぁ)

クラクションは鳴りっ放し。まるで車同士が喋っているようだ。

前方を見ていると、車がスッポリ入りそうな大穴!!
コイツを、ブレーキもそこそこに、反対側の路肩スレスレに避ける。
「胃がせりあがって来る恐怖感」は、日本中のジェットコースターが束になってもかなわないよ。

初めは「目が点」だったが、ここまで来ちゃったら、
「もうどうにでもなれ!!」
とばかり、寝る。
万が一の場合、「起きたら死んでた」の方が、痛くなさそうな気がしたんだ。ホントに。マジで!!

寝ている間に、急ハンドルのシチュエーションが数回あったらしく、車内で頭をぶつけてタンコブができた。

…日本車の後部座席で、「ハイウェイ」を走っていて、「タンコブ」できるって、想像できますか?

アタマが窓ガラスに『ガン!!』って当たって、目が覚める。
起きると、何事も無かったように、カッ跳んでいる。

その繰り返し。


何キロ走っても、左右には広大な「水田+牛」しかない。
…バングラは、平べったい農業国なんだ。国中、水田だ。

(続く)